エピソード1(脚本)
〇駅のホーム
退社後、社会人一年目の真壁理央は
渋谷駅のホームで電車を待っていた。
真壁理央(22:03か・・・)
少し待ち時間があるため、
理央はスマホでSNSを見ていた。
ふと周りが静かなことに気付き
顔を上げてみると・・・
真壁理央「えっ!」
ホームから理央以外の人の姿が
消えていたのだ。
理央がスマホの画面上を見ると、
”22:05”と表示されていた。
真壁理央(え さっきまで結構人おったよな・・・)
向かいのホームにも
どこにも人の姿がない。
不気味に思った理央は
改札に戻ろうとしたが、
電車が見えたので足を止めた。
真壁理央「よかった・・・電車来た・・・」
理央は違和感を察知した。
真壁理央(ん?『まもなく○番線に電車が──』って 流れるよな普通・・・)
理央は怪訝な顔で来た電車を見るも、
乗客の姿が見えたので安心して乗った。
〇電車の中
真壁理央(音声トラブルやったんかな・・・)
眠たくなってきた理央は目を閉じた。
真壁理央(あー・・・ほんまに寝そう。 寝過ごしたら面倒や・・・ 目開けとこ・・・)
気合いを入れて目を開けると、
理央以外の乗客の姿がどこにもなかった。
真壁理央「えっ? ・・・えーーー!! き、消えたっ!?!?!?」
真壁理央「いやいやいや!何すかこれ!」
真壁理央「え・・・夢? 夢なん?」
理央は両隣の車両を交互に見て、
そこにも乗客の姿がないことに気付き
より恐怖を感じた。
真壁理央「えぇ・・・こっわ・・・ どないしょ・・・えっ・・・」
理央は頭を抱えた。
──ふと、唯の顔が頭に浮かんだ。
唯は大阪にいる理央の彼女だ。
真壁理央「・・・唯・・・」
〇学食
<一ヶ月前>
理央は社内食堂で同期の二人と
昼食をとっていた。
西「えっ 四月から一度も会えず? まじか・・・大丈夫か?」
真壁理央「大丈夫かって・・・何が?」
佐々木「彼女さん、当たり前だけど 職場で色んな男性と会うでしょ? 心配じゃないの?」
真壁理央「あ~そういうことか。 それは大丈夫やで」
真壁理央「まめに連絡してるし、月に一回は電話でも話すし、正直めっちゃ仲良いと思う!」
佐々木「じゃあ尚更よねぇ・・・」
真壁理央「ん?」
西「前に、少ししか会えないなら まとまって会えるまで我慢する方が いいって言ってたけど、 向こうは違うんじゃないか?」
真壁理央「いや・・・向こうも同じ気持ちって・・・」
佐々木「甘い! 彼女さんは真壁に遠慮してんの! ・・・あるいは、 真壁が遠慮させているのかもね!」
真壁理央「え"っ・・・」
西「俺は彼女よりも理央が心配だけどな~ GWに続いて盆休みの予定まで×になった時のへこみ様・・・相当えぐかったし!」
佐々木が大きく頷いている。
真壁理央「そんなに!?」
「そんなに!!」
三人は思わず笑った。
佐々木「我慢のしすぎはよくないよ。 私たちでよければ話聞くし、 仕事のストレスや会えないストレス 上手く発散しなよ?」
西「そうだぞ!」
真壁理央「・・・うん。 ありがとう!!」
西「無理にとは言わないけどさ、 気が向いたら新幹線飛び乗って 会ってこいよ!」
〇電車の中
真壁理央(・・・結局行かんかったな・・・ 唯のことで頭いっぱいのくせに・・・)
真壁理央「唯・・・呆れてるかな・・・」
突然、周りが明るくなった。
〇電車の座席
理央の前の座席に、唯が座っていた。
真壁理央「・・・唯!?」
理央は驚き、立ち上がった。
理央はすぐに、目の前の光景が
”今”ではないことに気付いた。
真壁理央(これは・・・映像か?)
唯「会える時間がどれだけ短くっても 一瞬やったとしても・・・会いたいなぁ。 ・・・めっちゃ会いたい・・・」
果耶「うん・・・ 半年以上会えてないんやもんね・・・ そりゃ長いわぁ」
唯「迷惑かけたくなくて つい向こうに合わせちゃったんやけど、 ほんまの気持ち伝えようか迷ってて・・・」
果耶「あたしは伝えた方がいいと思う。 言いにくいのもわかるけどね。 この際、サプライズで 会いに行っちゃえばいいんよ!」
果耶「それでもし、彼が微妙な態度を取るような ことがあれば・・・ あたしがバチコン言うさかい! 殴り込みや殴り込みぃ!」
唯「ぷっ! 殴り込みって・・・」
果耶「あはっ♡」
唯「果耶ちゃんありがとう! 次電話した時・・・言ってみようかな!」
〇電車の中
真壁理央「・・・・・・・・・」
真壁理央(俺・・・ほんまアホやな。 自分の気持ちばっか押しつけて・・・)
真壁理央「唯・・・ごめんな・・・」
理央は目を閉じ、唯に思いを馳せた。
〇駅のホーム
理央が顔を上げると、そこは
渋谷駅のホームだった。
真壁理央「ええっ!?」
慌ててスマホを取り出すと、
画面上には”22:05”と表示されていた。
真壁理央「・・・まじか・・・」
「まもなく○番線に──・・・」
〇開けた交差点
<IN 大阪>
仕事を終えた唯は
家に向かって歩いていた。
唯(理央、今もまだ寝てたりして・・・ 土曜日は大抵昼まで寝てるみたいやけど さすがにもう起きてるかなぁ・・・)
唯「はぁ~・・・会いたいなぁ・・・」
〇マンション前の大通り
唯「・・・・・・・・・」
唯「・・・・・・えっ」
唯はマンションの前に立っている
一人の男性を見た途端、
驚きのあまり立ち止まった。
真壁理央「・・・唯!」
理央が笑顔で走ってくる。
唯「・・・・・・うそでしょぉ・・・」
真壁理央「へへへ! ビックリした?」
唯は理央に抱き付いた。理央に力強く、
でも優しく包み込むように
抱きしめられた唯の目からは
幸せの涙が溢れていた。
彼女はめちゃ嬉しいですよ!
まとめて長い時間会いたいって、彼の言い分もわからなくはないですが、やっぱり短い時間でもこまめに会いたいですよね!
少し不思議な感じの心温まるストーリーでした。その中に、実はとても大切な事が描かれていますね。ハッピーエンドでよかったです。
確かに確認もせず相手も同じ気持ちでいてくれてる、とか、そう言ってくれてると自分で思い込ませてしまうことありますよね。
逃げではないですが、楽な道へ行ってしまうことも…。
気をつけなければと!思いました!