47面 指、好意（脚本）
〇勉強机のある部屋
──寝ていて、
ふとベッドの足元を見ると
白いシーツの寄ったところ、
ひょこ、と顔のぞかせる。
あ、と思って、近づいてみると、
「ねーっ、今見てたでしょーっ」
と、結構な音量とともに
赤ん坊がパッと出てきて、
赤ん坊「この指好きー」
赤ん坊「この人好きー」
赤ん坊「この腕好きー」
と、這い這いしながら言ってくれる。
江藤鉱（ああ、よかった、報われる）
江藤鉱（自分のやってきたことは無駄じゃなかった）
ただ嫌われてるだけかと思った
折中珠未さん。
もちろん付き合うとかそんなのないけど
一定の好意くらいはもってくれた
とか、そういうこと。
〇白い校舎
──ヤオバザ出張イベントの設営作業で
江藤鉱（何しようかな）
江藤鉱（パワー系か、やっぱり）
角材運ぶ方に行って、
二人１組で持つんだけど
江藤鉱（お、同期だ相手）
江藤鉱「って早いよ投げんのっ」
江藤鉱「あんま運べてないじゃん」
江藤鉱「まー現場のプロの土方さんいるから あとはやってくれっか」
江藤鉱（同期とワイワイ作業すんのも楽しいしな）
で、次の角材を運ぶのに
また並んだところで、
折中珠未さん。
みんなの前なのに、
前じゃなくたってそんなことしないのに
袖を持つくらい後ろにくっついてきて、
体操着姿で、胸の感触当たってる
明るく話しかけてくるけど、顔見ると
江藤鉱（泣いてる？）
江藤鉱（そんな笑い泣きにしては ね、にじんでて）
江藤鉱（肌の色白くて、何だろ はかない、せつない）
折中珠未「ちょっと抜けて、話ししよ？」
江藤鉱「うん、行こう、いいよ・・・」
江藤鉱（みんなにどう思われてもかまわない）
江藤鉱（けど、どうしたんだろう本当に）
江藤鉱（ここに来る前から 折中さんついてきてたのかな）
江藤鉱（あっ、いるなってわかってたけど 俺に話しかけてくるなんて思いもしない）
江藤鉱（人差し指をキュッとつまんで 合図出してきて）
江藤鉱（そんなのね、ないもの）
〇雑踏
俺、漫画家はじめたのは
こんなつまんない世界でも
この子に出会うため
「・・・困りましたね」
馬虎「まるで珠未さんのこと 好きかのように出発して」
好きだよ
〇温泉街
── 上野さなと２人でいて、
上野さな「本名でいると全然人柄が変わる」
江藤鉱「ああ、そうなんだ ぶりっ子でいなくて済むと」
上野さな「ウッ、そうっ（笑） だってうち結婚できひん気するもん」
江藤鉱「本名だと？」
上野さな「そうー」
モモノタマエとかそんな名前。
それにすると、
上野さな「もー何なのーあんたーやめてー」
ってバンバンこっちを手の平で
叩いてきたりして（肩を突いてきたり）
江藤鉱（これはこれで人から見たら）
江藤鉱（いちゃついてるっぽく見えるんじゃ）
って思ったりして。
まぁ、仲良くなれそうでいい
（さばさばしてて）
峠の町並みかな木造の軒つらね、
高地で、自転車手押しして、歩き話し。
〇商店街の飲食店
江藤鉱「アーユー ア リトゥン ア ピクチャー？」
外国人「ＮＯ」
江藤鉱（えっ、違うんだ）
江藤鉱（じゃあこの絵は何？ 俺の英語がまずかった？）
江藤鉱（それともやっぱ、違うんだろうな ピクチャーって絵じゃないっけ、写真？）
──外国人の方が店先の壁の、
元々張ってあるものの空いてるところに
自分の持ってる手の平大くらいの
絵を張っていってる。
一枚一部屋構成って感じ（基調の一色で）
カエルとか、生物がこまくて味わいある。
──折中珠未さんとニアミスして、
やっぱ意識してテンション上げて
英語っちゃった。
江藤鉱（何もねーけど）
こっち女性が一人ついて、
連れというわけじゃないけど一緒に。
江藤鉱（英語俺のどーなんか判断してほしいもんだ）
折中さんも別口で英語使って、
ハモッたようになったっけ？
江藤鉱（競って声張ってってわけでもねーけど）
江藤鉱（わかんねーな）
江藤鉱（恋人は外国人かってな）
〇散らばる写真
俺が自分の書いたものをいうんなら
冒険と安住とかかな
冒険はどんな夢でもそうだし
安住ってのは夢の中にいる感じ
ってのがそういう感じなのかな
（親和してる）
俺何か読みあげてたな
読めない漢字あって
途切れ途切れになっちゃったけど
子供の読むように朗読したな
明朗に（音を伸ばして通った声で）
折中さんどう思ったかな
ってやっぱり考えてんの
これも読めってコカコーラがどうとか
〇牢屋の扉（鍵無し）
わかるだろ
おまえの足元は血でびっちょりだ
確かに扉足蹴にしたらビチャッて
なんで、誰かが鉄バケツで
水バシャッ流して血を洗い流す
栄町55
・・・何なんだ
折中さんの住所の一部？知らないよ