ビンダーパープル

但馬感象

48面 そういってくれて(脚本)

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〇河川敷
  ──折中珠未さんだ。
  四角ばった麦わら帽かぶって
  近く、視界に入って、
  あ、直視しないけど、そうだ
  向こうも意識してる、たぶん
  でも話しかけたりしないし
  したいけど
  俺は楽しくやってる振りをする。
  土手の小山を駆けまわって、
  なだらかな木につかまって飛び下りたり
  折中さんの行った方に行くと
  すぐそこにいて──

〇公園の入り口
  ──上野さな。
上野さな「やっぱりそうだ」
  さなの方もわかってたって
  お店(兼自宅なのかな板屋商店)
  のところで見た格好と着替えてきてる。
上野さな「あ、あたしもわかったー」
  って、お店の前通る時
  俺だってわかられてたんだって
  しかも、さなのお母さんが
  わかったんだって。
  で、さなが出てきたら
  もういなかったって
江藤鉱「いやさ、一言いってやろうと思って」
江藤鉱「ポスターと同じかっこだったでしょ?」
上野さな「え?」
江藤鉱「黄色のダウンジャケットに」
上野さな「いやいや」
江藤鉱「何ていうの ノースリーブの黄色いの」
上野さな「ああ、着てた」
江藤鉱「それに膝上丈のショートパンツ」
江藤鉱(で、声かけようと思ったら 店の中入っちゃって)
江藤鉱(話し始めちゃったから いっか、って通り過ぎて)
江藤鉱(で、引き返してもう一回 前通ったときはご近所さんと話してて)
江藤鉱(人気者だ お店の手伝いとかもしてんだな)
江藤鉱(犬の散歩とか いろいろきりもりしてえらいな)
  邪魔しちゃ悪いんで、
  わきを抜けて立ち去ったんだけど
江藤鉱(あー何だこれ鼻ん中汚いな)
江藤鉱(ほじってもほじっても 汚れたあとがついてくる)
  公園にさしかかったところで
  (葉茂り覆う外周コンクリ段辺り)
江藤鉱(ん、後ろから誰か、来てる)
江藤鉱(さな?)
  と思って、そうならいいと思って
  足を遅らせてると声かけてきて、
  軽く怒り顔で、
上野さな「さっきいたでしょー」
  って、さ。
  追ってきて
  そういってくれただけでうれしいよ

〇格闘技リング
  ──新人プロレスラーのARATAが、
  同じく新人の大型プロレスラーに
  無表情に跳びまくって、
  直身でぶつかってはまた戻りを
  繰り返し攻撃をくらわせて、
  場外だけど、床がフンニャリした
  半透明ゲルクッションになってて、
  跳び込んでも全然平気。
  ──その対決を横目に、
  戦ってるうちに自分がリングサイド内から
  観客サイドへくぐり込んでいく。
江藤鉱(それが自分のエントリーになって)
江藤鉱(パートナー見つけて プロレス参戦になんのかね)
  抜け出たところには、
  じっと座ってるアイドルさん方がいて
江藤鉱(動いちゃいけない番組なのか)
  その中に、
江藤鉱(ああ、おさえてくれてるんですか)
  逆手を伸ばして、照明の光を遮ってくれる
  上野さなさん。
  上野さなさんのところに出たって
  偶然は半分くらいで、
  透けて見えてたっちゃあ見当つけてたし
江藤鉱(ああっ目の前におめしものが素敵な)
江藤鉱(どうしようっ、ここにいたいっ)
江藤鉱(いや、それは駄目だっ)
  隣見たって後ろ振り返ったって
  失礼だけど比べもんにならない──
江藤鉱「上野さなさん」
江藤鉱「付き合って下さいっ」
江藤鉱「・・・駄目?」
江藤鉱「そりゃそうだよねー」
上野さな「ごめんなさい、でも」
江藤鉱「でも?」
江藤鉱(でも、うれしかった? 仲良くはなりたい?なんてな・・・)
江藤鉱(俺の馬鹿は一生もんだ なおりゃしない)

〇格闘技リング
上野さな「さなっとなっかよっくしったーいっ」
上野さな「なっかよくおしゃべりしったーいー」
  さながステップしてとび跳ねて歌う。

次のエピソード:49面 方角

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