星屑の財宝

月暈シボ

エピソード2(脚本)

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〇コックピット
  『PI PI PI ・・・・!』
  艦長席でデータ解析を続けるアルディンの耳に警告音が唐突に響く。
  何事かと確認すると、居住区からリアルタイムで発せられている救難信号であることを知る。
アルディン「士官用の寝室か・・・」
  その場所を映像に出そうとしたアルディンだが、救難信号が発せられたのは高級乗員に用意された個室の一つだ。
  さすがにそこまでは艦内の記録用カメラは設置されていない。確かめるには実際に出向くしかなかった。
アルディン「行くか・・・」
  腰の銃を手に取ってその重みを感じるとアルディンは判断を下す。
  三百年間宇宙を漂っていた船の中に生身の生存者がいるわけがないのだが、
  このまま救難信号を無視するのは抵抗があった。

〇近未来の通路
  士官用の寝室が並ぶ区画にやって来たアルディンは、並んだドアの一つから叩く音を聞く。
  中に何かしらの存在がいるのは間違い。当初、彼はシステムが誤作動を起こして救難信号を発動させたと疑っていたのだが、
  ドアを叩く音には恐怖に駆られて助けを求めている生々しさがあった。
  銃を構えながらアルディンは問題の部屋のドアを調べるが、
  彼の見立てではドアの開閉システムに異常は見られない。
  この手の扉は外側から強制的に開けるのは難しいが、内側なら簡単に開けることが出来るはずなので、
  中の者は開け方を知らないか、かなりのパニックを起こしていると思われた。
  アルディンまずは自分の存在を報せようとノックを返す。
  当然だが、外側からのノックに気付いたのだろう。内側から叩かれていた音が止む。
  次に、これまで以上にドアが激しく叩かれる。
  アルディンは銃を構えつつ、艦長権限の非常用コマンドでドアのロックを解除した。
アルディン「そこで止まれ!」
  解放された閉鎖空間から飛び出そうとする人型の存在にアルディンは警告を発する。
  従わなければ、容赦なく銃のトリガーを絞るつもりだったが、
  その者もアルディンの声に本気の気配が込められていることを悟ったらしく、両腕を突き出してその場に立ち尽くした。
謎のドロイド「う、撃たないで下さい!」
アルディン「・・・誰、いや何だ、お前は?」
  人型の存在から発せられた透きとおるような女性の声に驚きながらも、アルディンは咄嗟に問い掛ける。
  何しろ相手は、平均的な体格を持つ男のアルディンよりも一回り程大きい機械式ドロイドだったからだ。
  シルエット的には屈強な成年男子を思わせるフォルムをしており、
  機能を追及した無骨なデザインと若い女性の声はミスマッチとしか思えなかった。
謎のドロイド「わ・・・わからないのです・・・気付いたらこの部屋の寝台で目が覚めて、」
謎のドロイド「何か重要なコマンドを与えられていたはずなのですが・・・」
  そのドロイドはまるで少女のように腕をバタつかせると、やがて頭部を両手で覆って項垂れる。
  旧式のドロイドなので顔にはセンサー類が剥き出しのまま備え付けられていたが、妙に人間臭い動きだった。
アルディン「所属、もしくは登録番号は覚えていないのか?」
謎のドロイド「・・・はい、何も思い出せません・・・」
アルディン「どういうことだ?・・・いや、自分で調べた方が早いな・・・」
  応対を続けながらもアルディンは謎のドロイドについて艦内データの検索を行う。
  直ぐに照会は終了し、戦艦アドラーには彼、いや彼女と同型のドロイドが多目的用途として十体ほど配備されていたことを知る。
  気になったのは、その内の一体が当時の艦長権限で通常任務を解除されていたことだ。
  状況から見て、その個体が目の前のドロイドに違いない。
アルディン「・・・よくわからないが、お前は当時の艦長の指示によって本来の任務から外され、内部データも書き替えられているようだな」
アルディン「・・・何をさせようとしていたかまではわからないが・・・」
  ドロイドが非武装タイプであることをデータから知ったアルディンは銃を腰に戻す。
謎のドロイド「わ、私はどうしたら良いのでしょう?」
  銃を仕舞ったことで警戒心を緩めたのか、ドロイドはアルディンに問い掛ける。
アルディン「どうしたらと言われてもなぁ・・・」
アルディン「まあ、せっかく稼働可能なドロイドを無理に停止させることもないし、手伝いでもさせるか・・・」
アルディン「これからは、この艦の所有者である俺の命令に従ってもらおう!」
謎のドロイド「・・・よくわかりませんが、あなたの言う事を聞けばよいのですね?」
アルディン「ああ、そのとおりなんだが・・・帝国軍所属にしては、なんか端切れの悪い返事だな」
アルディン「前の艦長はなんでこんな人口知能にしたんだ?」
謎のドロイド「うう・・・すいません。私にもわからないのです・・・」
  アルディンに叱られているとでも思ったのか、ドロイドは怯えたような反応を示す。
アルディン「いや、別に責めているわけじゃない」
アルディン「・・・とりあえず、ブリッジに戻って詳しく調べてみるか・・・」
アルディン「大きいのに後ろを歩かれると、なんとなく気味が悪いから・・・お前が先頭を歩いてくれ。いいな!」
謎のドロイド「は、はい。わかりました!」
  ドロイドはアルディンの指示を受けると艦内の廊下をおどおどしながら歩き出す。
  その歩き方はやはりどこか女性染みていた。

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