2.現実(脚本)
〇空っぽの部屋
お父さん「息子は?息子は目覚めましたか?」
警察「残念ながらまだ・・・」
警察「待てるのは今日までです」
警察「明日には奥さんを殺害した容疑であなたを逮捕します」
お父さん「そんな・・・」
1週間前の今日 妻は死んだ
僕は熟睡していて、全く気が付かなかった
でも朝起きたら、僕は
血の付いた包丁を握っていた
警察は僕が犯人だと思っている
そりゃそうだ、血の付いた包丁を握っている奴は大抵 犯人だ
それに僕は事件の時寝ていて、何も覚えていない
でも僕は絶対に妻を刺すわけが無い・・・
お父さん「息子は何の反応もないのですか?」
警察「今のところはな」
この事件の真相を唯一知っているかもしれない人がいる
それが息子のゆうただ
事件が起きたのは夜中
自分の部屋で寝ているはずのゆうたは
朝 僕ら夫婦の部屋の前で倒れていた
特に外傷があった訳では無い
それなのに今も眠り続けている
医者が言うにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の一種だそうだ
何か忘れたい大きなことが起きた
それを忘れるため眠り続けているという
このままでは事件の真相が分からない
埒が明かない
そう考えた警察がとある提案をした
それが──
〇殺風景な部屋
メタバース治療
ゆうたの精神を仮想世界に入れる
そこでは基本的には普通の日常を過ごしてもらう
そして時折 事件に関することを見せる
そうやって事件と強制的に向き合わせ、目覚めさせるという、荒治療だ
〇空っぽの部屋
もちろん僕は反対した
そんなことをしてもし目覚めなかったら・・・
より心身を悪くしたら・・・と
でも結果的に僕の罪の有無に関わることだとか 何とか・・言いくるめられた
あれから1週間──
何の変化もない
ちなみにゆうたが目覚めるのを待つ期限も1週間
警察側の都合と
ゆうたの体のためにも 1週間で切り上げた方が良いそうだ
これで僕は殺人罪で捕まって
ゆうたが目覚める時にも立ち会えない・・・
ごめんな・・こんな父親で
警察「先輩!」
警察「ゆうたくんが・・目覚めました!!」
「本当か? 本当ですか?」
〇殺風景な部屋
警察「ゆうた君!」
ゆうた「犯人ですか?」
警察「え?」
ゆうた「ですよね?」
ゆうた「犯人は──」
ゆうた「カカオ100%です」
「は?」