第2話 殺人の音はガチョーン? 前編(脚本)
〇海辺
沙鬼「海だっ! ビーチだっ!」
沙鬼「南国リゾートだ〜〜〜っ!!」
沙鬼「神郎、水着と浮き輪を用意して!」
緋崎神郎「・・・お前、何しに来たのかわかってんのか」
沙鬼「バカンスだよね?」
緋崎神郎「ち・が・い・ま・す」
沙鬼「えっ。じゃあバカンスついでに仕事?」
緋崎神郎「違う! 仕事ついでにバカンス・・・じゃなくて仕事だけだ! バカンスはないの!」
沙鬼「えー。せっかくリゾートなのに〜」
緋崎神郎「だいたいお前、吸血鬼のくせになんで太陽が平気なんだ」
沙鬼「お城に閉じ籠もってたご先祖様じゃあるまいし、今どきの吸血鬼は太陽も十字架もにんにくもぜーんぜん平気だよ?」
緋崎神郎「今どきも何も吸血鬼なんてお前しか知らないが」
沙鬼「とゆーわけで、ご先祖様の分まで泳いできまっす!」
緋崎神郎「こら待て!」
こいつは沙鬼(さき)。
本人の言う通り吸血鬼の末裔だ。
そして俺は緋崎神郎(ひざきじんろう)。
詐欺師。不本意ながら沙鬼の下僕でもある。
沙鬼は吸血鬼ゆえに不死だが、然るべき手順を踏めば消滅することもある。
沙鬼が死ぬと下僕である俺も死ぬわけで、自分の身を守るためにも、こうして沙鬼の世話を焼いているのである。
この一方的な主従関係を解消するため、俺は『キリオ』という人物を探している。
その手がかりを追ってこの島にやって来たのだが・・・
沙鬼「あ、やば」
緋崎神郎「どうした」
沙鬼「やっぱこんだけ日光強いとダメみたい。 爪の先が灰になってきちゃった」
緋崎神郎「おーい!! お前が消滅したら俺も死ぬんだぞ!!」
沙鬼「ゴメンネ☆」
緋崎神郎「ゴメンネ☆ じゃねえ! ホテルに帰るぞ!」
〇ホテルのエントランス
オーナー「おかえりなさいませ。 海を満喫されたようで」
沙鬼「楽しくて燃え尽きるとこだった!」
緋崎神郎「洒落になってねえよ」
オーナー「それは何よりです。 今夜は台風で海遊びできるのも今日までですから」
沙鬼「どうりで風が強いと思った」
緋崎神郎「台風か。この後の展開が見えるようだな」
沙鬼「どうなんの?」
緋崎神郎「まずフェリーが運休してこの島が孤島になるだろ」
緋崎神郎「そして電話線が切られて携帯の電波塔も壊されて、通信手段が途絶える」
緋崎神郎「クローズド・サークルができあがったところで殺人予告の手紙が発見されるってところか」
客A「おい、フェリーが運休だってよ!」
客B「なんてこった、台風が過ぎるまでこの島から出られないのか」
客C「おかしい、さっきから携帯が通じないんだ」
客D「ホテルの電話もダメよ!」
客A「おい、娯楽室に変な手紙が置いてあるぞ」
客B「今夜12時誰かが死ぬ・・・殺人予告じゃないか!?」
緋崎神郎「な?」
沙鬼「完璧じゃん!」
沙鬼「この後は? 前の雪山みたいにパニックになる?」
緋崎神郎「まだ誰も死んでないからな。 簡単には信じないさ」
客C「誰かのいたずらだ。気にすることないさ」
客D「そうね、ミステリー小説じゃあるまいし」
緋崎神郎「大抵のやつの反応はこうだ。 でも様子がおかしい奴がいたら・・・」
E子「・・・・・・」
緋崎神郎「あの子は身に覚えがあるようだな。 ちょっとカマかけてみるか」
沙鬼「私は? また死ねばいい?」
緋崎神郎「・・・メンヘラ彼女と喧嘩してると思われるから小声でしゃべってくれ」
緋崎神郎「いつも通り殺人の被害者になって犯人を教えてくれればいい」
沙鬼「そしたら新しいゲーム買ってくれる?」
緋崎神郎「好きなだけ買ってやるよ。事件が解決できたらな」
沙鬼「わかった!」
沙鬼にはとある特性がある。
彼女には死を呼ぶ呪いがかけられていて、行く先々で殺人事件の最初の被害者になってしまうのだ。
俺はその沙鬼の体質を利用して、続いて発生するはずの殺人を未然に防ぐ。
そして施設のオーナーや殺人の標的だった人物から謝礼を巻き上げて生活費にしているのである。
緋崎神郎「始めるか」
沙鬼「じゃあ死んでくるね!」
緋崎神郎「声がでかいっての!」
〇結婚式場の廊下
沙鬼「人気のないとこ適当に歩いてればまた殺されるかな〜?」
沙鬼「でも私が不死だからってのはわかるけど、危ない目にあうのってふつーは下僕の仕事じゃないの?」
沙鬼「なんかムカついてきた! ゲーム2本買ってもらお」
ガンッ!
沙鬼「ん? なんだこれ? 蹴飛ばしちゃった」
???「み、見たな!」
沙鬼「え?」
〇大広間
緋崎神郎「なるほど、島に来る前に嫌がらせを受けていたと」
E子「・・・はい。 SNSに良くない噂を流されたり」
緋崎神郎「恨まれる憶えは?」
E子「いいえ・・・まったく」
緋崎神郎「逆恨みかもしれませんね」
E子「犯人は私を12時に殺すつもりでしょうか・・・」
緋崎神郎「どうでしょう。 その前に何か事件が起きるかもしれません」
オーナー「うわあああ!」
E子「悲鳴!?」
緋崎神郎「何かあったようですね。行ってみましょう」
〇広い更衣室(仕切り無し)
オーナー「シ、シーツを取ろうとリネン室に入ったら・・・」
緋崎神郎「彼女の死体があったのですね?」
オーナー「はい・・・」
緋崎神郎「その時、ドアには鍵がかかっていたと・・・」
オーナー「はい。窓は開いていましたが、ここは4階でベランダはなく、近くに飛び移れるような窓もありません」
緋崎神郎「つまり密室だったというわけですね」
客A「予告は本当だったんだ」
客B「でもまだ夜の9時だぞ?」
緋崎神郎「犯人にとって想定外の殺人かもしれません。その証拠に死体を引きずった跡がある」
緋崎神郎「廊下かどこかで殺した後、死体の発見を遅らせるためにこの部屋に動かしたのでしょう」
緋崎神郎「そして何らかの手段で密室を作ったのです」
緋崎神郎「犯人は焦っているはず。危険です。 みなさん単独行動は控えてください」
オーナー「あの、あなたは」
緋崎神郎「探偵です」
オーナー「亡くなったのはお連れさまですよね?」
緋崎神郎「・・・ええ。彼女は有能な助手でした。 おそらく予告状のことを調べて、犯人につながる何かを掴んだのでしょう」
オーナー「そんな・・・」
緋崎神郎「彼女の無念は私が晴らします。 ああ、オーナー。ちょっとお話が・・・」
〇広い更衣室(仕切り無し)
緋崎神郎「・・・沙鬼、もう起きていいぞ」
沙鬼「・・・・・・」
緋崎神郎「おい、沙鬼?」
沙鬼「ふえ?」
緋崎神郎「寝てんじゃねえ!」
沙鬼「だって、死体って動いちゃいけないから眠くなるんだもん!」
緋崎神郎「お前は死んでることになってるの! いびきかいたりしたらアウトだったぞ」
沙鬼「気をつける・・・神郎の方は?」
緋崎神郎「オーナーと女性から依頼を取った。 さっさと事件を解決するぞ。 犯人は見たんだろうな?」
沙鬼「もちろん! あの青白いひょろっとした人」
緋崎神郎「ああ、確か・・・フリーライターの山田だったか」
沙鬼「俺の人生を台無しにした、復讐しなきゃいけないんだ〜とか何とか言ってた」
緋崎神郎「目標はあの女か。 振られて逆恨みってところだろうな」
緋崎神郎「お前はなんで殺されたんだ? 何かを目撃したのか?」
沙鬼「・・・よくわかんない。 後ろからいきなりガンって」
緋崎神郎「密室はどうやって作ってた?」
沙鬼「えっ?」
緋崎神郎「おい・・・まさかそっから寝てたのか?」
沙鬼「あはは・・・そのまさか」
緋崎神郎「お前の死体が発見された時、この部屋は密室だったんだよ!」
緋崎神郎「困ったな。密室の謎を解かないと犯人を指摘しても意味がない」
沙鬼「そういうもの? お前が犯人だーって言うだけじゃだめ?」
緋崎神郎「謎が残ってちゃ犯人当てても説得力がないだろ。全ての謎を解決したうえで犯人を指摘する、それがお約束なんだ」
緋崎神郎「何でもいい、何か憶えてないか?」
沙鬼「うーん・・・あ、そう言えば」
沙鬼「寝てるときガチョーンって音がしたような・・・」
緋崎神郎「ガチョーン?」
沙鬼「ガチョーン! バタン! って」
沙鬼「そのガチョーンで密室作ったんだよ! たぶん!」
緋崎神郎「えー・・・」
殺人予告の12時まであと2時間。
それまでにガチョーンと密室の謎を解かなくては・・・
沙鬼「ね、売店でチョコ買ってきていい?」
緋崎神郎「だからお前死んでるっての!」
元々面白いですが、ボイスが入るとアニメのように楽しめてすごいです!!✨☺️登場人物たちみなさんの声素敵でした!!!!!!✨👏💖
長男が食い入るように見てました✨長男も面白かったそうです!!✨☺️👍