第1話 その事件、始まる前に解決します(脚本)
〇雪山の山荘
???「キャアアァーーーッ!」
吹雪で閉ざされた山荘に少女の叫び声が響き渡る。
〇城の客室
客A「し、死んでる・・・」
客B「殺人よ! あの殺人予告はいたずらじゃ なかったんだわ!」
客C「この山荘は吹雪で孤立してる・・・ この中の誰かが殺したんだ!」
オーナー「お客様、落ち着いてください!」
客A「落ち着いていられるか!」
客B「停電も、電話線が切れたのも殺人犯の 仕業なのよ!」
客C「俺たちはみんな殺されるんだ!」
緋崎神郎「静粛に!」
緋崎神郎「混乱しては犯人の思う壺です」
オーナー「・・・あなたは?」
緋崎神郎「私は緋崎神郎、探偵です」
客A「探偵?」
緋崎神郎「この傷、凶器はナイフですね。 しかしそのナイフがない。 犯人が殺害後に隠したのです」
客B「やっぱり殺人?」
緋崎神郎「ええ、そして犯人は山荘の中にいる。 動き回ると危険です。 ホールに集まってください」
緋崎神郎「オーナー、ちょっとお話が」
オーナー「なんでしょう」
緋崎神郎「・・・これは連続殺人です」
オーナー「えっ」
緋崎神郎「予告状には『復讐の刃は3つの生贄を求める』とありました。つまり3人を殺す予定で、そのために凶器を回収した」
オーナー「と言うことは・・・」
緋崎神郎「放っておけば犠牲者が増えます」
オーナー「そんなことになれば商売 あがったりだ・・・」
緋崎神郎「ご依頼いただけたら、これ以上犠牲を 出さずに事件を解決しましょう」
オーナー「い、依頼します!」
緋崎神郎「ではこの場は私に任せて オーナーもホールへ」
オーナー「は、はい!」
緋崎神郎「・・・・・・」
緋崎神郎「・・・ふう」
死体「ね、そろそろ起きていい?」
緋崎神郎「ああ」
部屋に倒れていた血まみれの少女が
大きく伸びをしながら起き上がる。
彼女の名前は沙鬼(さき)、俺の相棒だ。
沙鬼「あー! ワンピに穴があいてる!」
緋崎神郎「新しいの買ってやるよ。 事件を解決して謝礼をもらったらな」
沙鬼「うまくできそ?」
緋崎神郎「うまくやらないと今月の家賃が払えない」
沙鬼「んー、お金のことはわかんないから 神郎に任せる」
沙鬼「私は漫画読めてゲームできてお菓子 食べれればそれでいーから!」
緋崎神郎「それがうちの生活費の8割なんだが」
沙鬼「それより早く血飲ませて。 いっぱい血でちゃったからお腹すいた!」
緋崎神郎「ほらよ・・・」
沙鬼「ちゅー」
緋崎神郎「・・・いてっ! 優しく噛め!」
この会話を聞けばわかる通り、
彼女は吸血鬼だ。
吸血鬼だから死んでも生き返る。
傷を治すのに下僕である俺の血を
必要とするけど。
緋崎神郎「飲みすぎるなよ」
沙鬼「ケチ」
緋崎神郎「ケチじゃなくて、死体が血色良くなっちゃ まずいだろ」
緋崎神郎「で、お前を殺した犯人は?」
沙鬼「えーと、1人で来てるメガネちゃん。 高校時代に虐められた復讐だって」
沙鬼「なんで殺人犯って殺したあとに ペラペラ喋るんだろね?」
緋崎神郎「お約束なんだよ。 で、お前は何で殺されたんだ?」
沙鬼「拾った手帳を読んでたらいきなり 刺されたの。 テンパってたっぽい」
緋崎神郎「手帳か。 殺人の計画が書かれてて、口封じのため 殺されたってところだな」
緋崎神郎「凶器は?」
沙鬼「窓の外でゴソゴソしてた」
緋崎神郎「雪の中ね」
――トントン。
緋崎神郎「は、はい!」
緋崎神郎「おい、死体のふり!」
沙鬼「え? あ、ちょっと!」
オーナー「何か声が聞こえましたが・・・」
緋崎神郎「失礼。 私、捜査しながら独り言を言う 癖がありまして」
オーナー「あれ? 死体のポーズがさっきと違いませんか?」
緋崎神郎「死体はそう見えるものです」
オーナー「さっきより血色も良いような」
緋崎神郎「そう見えるものです」
緋崎神郎「それよりオーナー、犯人がわかりました」
オーナー「もうですか!?」
第一話
「その事件、始まる前に解決します」
〇洋館の一室
眼鏡「私は犯人じゃありません!」
緋崎神郎「凶器のナイフが雪の中に 隠してありました。 調べればあなたの指紋が出てくるはず」
眼鏡「わ、私には殺人をする理由が」
緋崎神郎「宿泊客の中に学生時代の同級生が いますね?」
緋崎神郎「あなたは、学生時代の虐めの復讐のために 殺人を計画した」
緋崎神郎「その計画が書かれた手帳を被害者の女性に 読まれたため、口封じに殺したのです!」
眼鏡「な、なんの証拠が」
緋崎神郎「ポケットの中の手帳を見せてください。 そこに全ての計画が書かれているはず」
眼鏡「うっ」
緋崎神郎「もう一度聞きます。犯人はあなたですね?」
眼鏡「・・・はい」
オーナー「こんな短時間に・・・さすがだ」
緋崎神郎「警察へは私が連絡します。 死体も私のほうで処理しますので、 通常通りに営業してください」
オーナー「えっ。しかし」
緋崎神郎「大丈夫。噂が立たないように内々に 処理してもらいます。客商売ですからね。 変な噂が立つと困るでしょう?」
オーナー「そ、それは・・・はい」
緋崎神郎「ここでは何も起きなかった。 誰も死ななかった・・・いいですね?」
オーナー「は、はい! あ、これ謝礼です」
緋崎神郎「・・・確かに。 吹雪もやんだようなので早速連行します」
緋崎神郎「あー、眼鏡ちゃん。 ちょっとこの荷物、後部座席に 乗っけてくれる?」
〇車内
仕事の半分はこれで完了だ。
ペンションからもだいぶ離れたし、
残りの半分も片付けるか。
緋崎神郎「眼鏡ちゃん」
眼鏡「・・・はい」
緋崎神郎「駅まで送るから帰っていいよ」
眼鏡「え? 警察に行くんじゃ?」
緋崎神郎「ちょっと後部座席のスーツケース 開いてくれる?」
眼鏡「え、あ、はい」
沙鬼「あーもー! 狭かったー!」
眼鏡「きゃー! きゃー! きゃー!」
沙鬼「ごめんね! 驚かせて」
眼鏡「え? 私、ナイフで刺しましたよね?」
緋崎神郎「刺されどころが良くて、彼女生きてまして」
眼鏡「え? え?」
緋崎神郎「幸いこの通り元気で、彼女も事件には したくないと言ってます」
眼鏡「殺されかけたのに?」
沙鬼「いーのいーの」
緋崎神郎「だからあなたも、復讐なんて忘れて やり直しましょう」
眼鏡「やり直すって・・・人を殺そうと したのに?」
緋崎神郎「殺してないですよ。 むしろ死んでたのはあなたの方です」
眼鏡「・・・私?」
緋崎神郎「これまでのあなたは自分の人生を 生きてなかった。 復讐だけを考えてね」
緋崎神郎「これを機に復讐から離れて、 ちゃんとあなたの人生を生きてください」
沙鬼「そーそー、あんな奴らのせいで 人生無駄にすることないって」
沙鬼「だってあいつら虐めてたこと 忘れてたじゃん!」
眼鏡「・・・そうですね」
緋崎神郎「ただこの子、無事とは言えナイフで刺されてますし、治療費と、あとワンピースの代金をいただけると嬉しいんですが」
眼鏡「あ、はい。もちろん!」
沙鬼「ねえ、あとお腹すいた。 ファミレスでご飯おごってくれる?」
眼鏡「いくらでも!」
こうして今回の仕事は完了した。
〇黒
俺は探偵じゃない、詐欺師だ。
こんな風に殺人事件に絡んで小銭を稼いでる。
〇車内
沙鬼「眼鏡ちゃん、元気になってよかったね」
緋崎神郎「そうだな」
沙鬼「ね、帰るまでゲームしてていい?」
緋崎神郎「好きにしろ」
何でわざわざ殺人事件に関わるか?
沙鬼には死を呼ぶ呪いがかけられて
いるからだ。
ほうっておいてもペンションや孤島に
呼び寄せられ、連続殺人の最初の
被害者になってしまう。
沙鬼が殺されながら得た情報から犯人を
特定して、続けて発生する殺人を
未然に防ぐ。
それをネタに関係者から謝礼を
巻き上げる・・・それが俺の仕事だ。
沙鬼「ね、神郎」
緋崎神郎「なんだよ」
沙鬼「キリオって見つかるかな」
緋崎神郎「・・・・・・」
キリオ。
吸血鬼である沙鬼に死を呼ぶ呪いを
かけた相手。
そして俺に沙鬼の封印を解かせた相手。
そのせいで俺は沙鬼に血を吸われ、
下僕として仕える羽目になった。
キリオのことは何もわからない。
姿も、性別も。
わかっているのは、そいつが殺人事件を
愛する殺人愛好者であるということだけ。
沙鬼が呼び寄せる死をひとつひとつ
繰っていけば、きっとキリオに辿り着く。
俺は、そう信じている。
いや、辿り着かなければならないのだ。
キリオを見つけ出して、沙鬼にかけられた
呪いを解くために──
緋崎神郎「家についたぞ。歯磨いて寝ろ」
沙鬼「やだ。眠くない。ゲームしよ?」
緋崎神郎「寝る! こっちは血を吸われて疲れてんだよ!」
沙鬼「あ、ポストに手紙入ってる」
緋崎神郎「手紙? 誰からだ?」
沙鬼「えっと、K?」
緋崎神郎「K?」
沙鬼「わ! 南国リゾートの宿泊券が入ってる!?」
緋崎神郎「貸せ」
こんなものを送りつけてくる人物に
心当たりはない。
K・・・いったい誰だ? もしかして・・・
・・・キリオ?
沙鬼「やったー! リゾート!」
緋崎神郎「行くと決まったわけじゃ・・・」
差出人がキリオと決まったわけじゃない。
でも、初めて掴んだキリオにつながる
ヒントだ。
緋崎神郎「・・・いや、行くか」
沙鬼「私、パラセーリングやりたい!」
緋崎神郎「そんな金ねえよ」
沙鬼「なきゃ作って! 下僕でしょ?」
・・・この世話の焼ける吸血鬼から
解放されるには、キリオを見つけ出すしか
ないのだから。
沙鬼「新しい水着買っていい?」
緋崎神郎「そんな金はねえ!」
ボイス付き、待ってました!!篠原さん&黒乃さん達の声がついて物語が彩られてるの、本当にいいですね!楽しみに読ませていただきます!!イベントのグランプリ受賞、本当におめでとうございます!
ヒーローもヒロインもその他の方もとっても良いお声でしたー!!✨👏☺️やはりボイスが入るとキャラに生命力が宿りますね✨元々面白いお話が更に世界が広がったに感じがありました!!✨☺️続きも楽しみにしております✨😆