次また会うときも、渋谷にて

アザミノハナ

次また会うときも、渋谷にて(読切)(脚本)

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〇電車の中
車内アナウンス「次は渋谷、渋谷──」
  やや混雑している電車内に、到着を告げるアナウンスが響く。

〇駅のホーム
  ドアが開くと同時に、我先にと乗客がホームへとなだれ込む。
  その流れに押し潰されそうになりながらも私は友人のさくらと決めた集合場所へと向かう。
  集合場所は渋谷ではお馴染みの──、ハチ公像だ。

〇改札口
  改札を通るためにスマホを開くと、さくらからメッセージが届いていた。
メッセージ:さくら「『ハチ公に着いたよ~』」
私(美咲)(──珍しい)
  さくらは自他ともに認める方向音痴であり、それが原因で集合時間に遅れてしまうこともしばしばある。
  しかし今回は集合時間の10分前に到着している。
  これはさくらの遅刻に既に慣れている私にとって驚くべきことだった。
  ──ともかく、せっかく早く到着したさくらを待たせる訳にもいかないので、私もハチ公像へと歩みを進める。

〇ハチ公前
  ハチ公像に到着すると、確かにそこにはさくらの姿があった。
  さくらは私に気が付くと、嬉しそうに駆け寄る。
さくら「美咲~!」
私(美咲)「さくら!凄い、迷子にならなかったんだ~」
さくら「ちょっと!美咲、一言多いよ~」
さくら「確かに私の方向音痴の酷さについては認めるけど、」
さくら「渋谷は美咲と何回も行っているから、何となくわかってきた!」
さくら「って自信持って言いたいけど、実は集合時間間違えて渋谷駅には1時間前に着いたの」
私(美咲)(1時間前!? なるほど、だから集合時間前に到着できたのか・・・)
  そう合点がいき──、ふと先程さくらから送られてきたメッセージを思い出す。
私(美咲)「ん?『ハチ公に着いたよ~』って私に連絡したのがつい5分前よね?」
さくら「うん!ハチ公探してたけどなんかわかんなくなっちゃって、」
さくら「そしたら丁度警察署があったから、道聞いてなんとか辿り着いたんだ~」
私(美咲)「・・・警察署って、渋谷警察署?」
さくら「んー、確かそうだった気がする」
私(美咲)「結局反対方向に行って迷子になっているじゃん!」
  思わず突っ込んでしまった私を見て、さくらは大爆笑する。
さくら「出ました!美咲のツッコミ!」
  そんなさくらの言葉につられて、私も一緒に笑い合った。

〇ラーメン屋のカウンター
  無事集合し、さくらが「腹が減っては戦はできぬ」ということで、私は一緒にとあるラーメン屋に来ていた。
  ──散策を戦というのは大袈裟な気がするが、多分ツッコんだら負けである
私(美咲)「いや~、結構並んだね」
さくら「そうだね。このラーメン屋さん、お昼にしか営業していないからここの味を求めてわざわざ遠方から来る人も少なくないんだって」
私(美咲)「昼営業のみなんだ?凄いなぁ」
  そうこう話しているうちに、私たちの前にラーメンが置かれる。
  食欲をそそる香りが湯気とともに立ち上り、私たちを空腹に導く。
さくら「わぁ、美味しそう! いただきます!」
私(美咲)「いただきます」
さくら「ん~、美味しい!」
私(美咲)(凄い、スープのコクがよく感じられる。このコクを引き出すためにどのくらいの時間をかけているんだろう)
  あまりの美味しさに感動していた私はふと気が付くとスープまで飲み干していた。
  食べ終わった私の横ではさくらがニコニコと笑っている。
さくら「どう?美味しかったでしょ?」
私(美咲)「うん。よくここの店、見つけたね」
さくら「えへへ」
  そう笑うさくらはとても嬉しそうだ。
さくら「よし、それじゃあ次は喫茶店行こう!」
私(美咲)「え、また食べるの?」
さくら「うん!次行く所は早めにいかないと売り切れるスイーツがあるの」
私(美咲)「マジか」
さくら「というわけで、レッツゴー!」
私(美咲)(最近カロリー抑え目にしていたけど、今日はまあいっか)
  ──後に体重計の上で絶叫することをこの時の私は知らない。

〇レトロ喫茶
さくら「わぁ~。これだよ、これ」
私(美咲)「SNSで話題のプリンってこれのことなのね」
さくら「そうそう!一度食べてみたかったんだ~。 というわけでいただきます!」
私(美咲)「いただきます」
  プリンをスプーンですくうと、少しとろっとしている。
  私はそれを口に運び──、驚いた。
私(美咲)(ん、これ本当にプリンなの!? 凄く滑らかなのに弾力があって美味しい!)
私(美咲)(それに珈琲ともよく合う。 こんなプリンがあったのか・・・)
さくら「ん~、クリームソーダも絶品ですなぁ~」
私(美咲)「やっぱりさくらは甘いものに目がないね」
さくら「うん!だって好きなんだもん!」
  そう、さくらはスイーツが大好きだ。
  パンケーキやマリトッツォを食べたり、タピオカとかも飲みに行ったりした。
  そんな私たちのスイーツやらグルメ巡りの中心になっていたのが、ここ、渋谷だ。

〇SHIBUYA SKY
  喫茶店でスイーツを堪能した後、私たちは展望施設であるSHIBUYA SKYに登った訳だが──、
私(美咲)「・・・雨」
さくら「渋谷スクランブルスクエアに入った時には降ってなかったのに・・・」
私(美咲)「まあ、こんなこともあるよね・・・」
  気まずい沈黙が流れる中、さくらが口を開く。
さくら「ねえ、また行こうよ。 渋谷に」
さくら「私、渋谷の夜景も見てみたいし!」
私(美咲)「確かに。私も気になる!」
さくら「よーし、それじゃあ次会うときも渋谷にしよう!」
私(美咲)「とか豪語してるけど、さくらのことだからまた迷子になりそうだね」
さくら「ちょっと!なんでまた私が迷子になる前提なの!?」
  必死に反論するさくらを見て、私は笑顔になる。
  そんな私につられてさくらも笑う。
  次に会えるのがいつかはわからない。
  でも、渋谷で私たちはまた会えるだろう──。
  不確実なことだけど、私はそんな気がした。
  ──Fin.

コメント

  • 二人で渋谷を散策って楽しそうだなぁと思いました。
    お店をまわって、おいしいものを食べて…素敵な時間ですよね。
    新しい発見もすごく楽しそうです。

  • 確かに初めて行く場所に行くと方向がわからなくなることはあります…。東西南北全然わかりません笑
    大人になると中々こういった友達が少なくなりますが、ずっとこの二人には仲良くあってほしいです!

  • 2人のやりとりがとても和やかで癒しを与えてくれました。自分の行きたい所や食べたい物に賛同してくれる友達ってありがたいですよね。表紙は、少し大人になったさくらでしょうか?また二人は渋谷で再会したんでしょうね。

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