エピソード1(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
『渋谷チェイサーズ』
〇渋谷のスクランブル交差点
誰もが認めるブランド発信地、渋谷。
渋谷のカルチャーが日本のカルチャーとして世界に発信され、世界をリードしていると言っても過言ではない。
したがって、渋谷のカルチャーを制する者が世界を制することになるのだ。
左を制する者は世界を制すに似ているが、やや意味合いが違うこともことわっておこう。
〇渋谷駅前
前置きが長くなったが、とにかく渋谷区民は日々世界を制するために、ブランドを追い続けた。
ファッション、グルメ、アート、あらゆるブランドを追いかけた。
すべては世界のトップに君臨するためである。
〇新橋駅前
世界のトップを目論む人々は、次第に細分化されていった。競合他社を避けるためである。
ある者はファッションに、ある者はグルメに、という風に、自分の得意とする分野にそれぞれ分かれていった。
勝負において、自分の強みを最大限に活かせることは定石である。
自分が得意とする土俵で世界のトップを目指すのである。
〇広い改札
世界のトップを目指す者たちは、四六時中ブランドを追った。
そこにブランドが立ち上がればすぐさま駆けつけそれを極めんとする。
極めた者はそれを土台に新たなブランドを立ち上げる。
そして自分がトップにとって代わるのである。
ブランドは目まぐるしく乱立した。
その都度トップは入れ代わり、一日を待たずして入れ代わることもある。
三日天下の明智光秀でさえ長期政権であったと言えるほどである。
〇渋谷駅前
ここでブランドを追う者たちを仮に「チェイサー」と呼ぼう。
つまりブランドを「追う人」という意味だが、チェイサーたちの行動は日に日にエスカレートしていった。
トップになるために他には目もくれず、ブランドめがけて時には大移動さえ起った。
チェイサーたちはとりつかれたように動いた。
〇駅の出入口
専門家はこの現象に警鐘を鳴らした。しかしチェイサーたちの耳にはまったく届かなかった。
チェイサーの目まぐるしい動きはもはや誰の手にも負えなかった。
チェイサーの目には完全にブランドしか映らなくなったのだ。
渋谷の中であった事件や出来事でさえ目に映らないのだった。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
渋谷の一部ってもしかしたら、こんな世界もあったりするのかなと思ってしまいました。なんだかとても考えさせられるお話でした。
渋谷のブランドはチェイサーの最終聖地です。近未来は現代の狭間でフラフラと遊動性があるが、世界の未来がチェイサーのブランドとなるのでしょう。
現代の渋谷をさらに先鋭化させた世界ですね。普通に有り得る未来だと思ってしまいました。
この渋谷を是とするか非とするかは読み手によって異なるでしょうが、活力溢れた都市であることは間違いないですね。