あの駅で待ってるから

ポッチャ・ポッチャリィ

エピソード1(脚本)

あの駅で待ってるから

ポッチャ・ポッチャリィ

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〇駅のホーム
  人々が、足早に家路を急ぐ
  夕暮れ時の渋谷駅
  その雑踏の中、山手線のホームの隅で
  見知らぬ男女のカップルが、
  別れ際の熱い抱擁を交わしていた
  それを見て、僕の彼女は
  ねえ、私にもチュウしてよ♡
  またそんな事を言い出す
  簡単に感化されすぎだよ・・・。
  3年もつきあっているのに
  嫌だよ、こんな所で。
  会社の誰かに見られたら恥かしいだろ。
なつき「なんだよー、このケチ男!」
  僕の脇腹をぽん、と叩く。
  痛くもないけど、痛たた、とおどけていると

〇駅のホーム
なつき「きゃっ・・・!」
  大きな風が吹いて、後を追うように
  電車がホームへと入ってきた
なつき「じゃあ・・・また明日ね」
  うん、また明日ね。

〇電車の中
  僕達は手を振って別れ
  僕は電車に乗り込んですぐにポケットの中からスマホを取り出そうとしたんだけど・・・
  車両の後方にさっきのカップルの女性が居るのに気が付いた
  女性はぐずぐずに泣き腫らした顔をハンカチで拭いながら、ドアにへばりついて
  まだ男性と見つめあっていた
  残念だけど
  無情にも電車は走り出してしまうから・・・
  ほんの少しだけ、男性は女性を追いかけて走った
  でも、すぐに人混みの中に紛れて
  小さく消えてしまった
  ・・・ったく、昭和のドラマかよ。
  軽く心の中でひとりごちて、
  僕はいつものようにスマホを弄ろうとした
  のだけど・・・
  やっぱりやめた

〇電車の座席
  移り行く景気を、ただぼんやりと眺めていた
  一体、どんな運命のいたずらに
  あの二人は翻弄されているのだろうか
  知る由も・・・
  ・・・知る由もないし
  僕がそんな事を気にしたって
  大きなお世話なんだろうけど
  ごめん
  考えれば考える程

〇白
  何だか、僕まで切なくなってしまうじゃないか

〇広い改札
  乗り換えの駅で
  またあの女性を見かけた
  真っ赤な目をしていたけど
  もう涙はなかった
  大きなキャリーケースを引いて、
  背筋を伸ばして
  毅然と前を向いて
  足早に歩いて行った
  ガンバレ
  ハハ・・・(笑)

〇渋谷のスクランブル交差点
  何故だろう
  僕はまた渋谷に戻ってきてしまった
  居ても立っても居られなくて
  「ん?どうしたの?」
  あのさ
  「何~?」
  「・・・モグモグ、美味しい~♡」
  ・・・何か食べてんの?
  「ケーキ♡」
  「なんか美味しそうだったから、途中で寄り道しちゃった♡」
  ・・・ったく。
  いつも君はムードってものが無いんだから
  「何それぇ~?濡れ衣だぁ~」
  「で、何なの?」
  うん、あのさ・・・
  「はよう」
  もう一度会おう
  「えっ?」
  もう一度、渋谷で会おうよ?
  「え~?なんでぇ?」
  キスする所から・・・やり直そう
  「・・・」
  「え~、どうしよっかなぁ~」
  エェー・・・・・・(汗)
  「・・・んふふっ(笑)」
  「しょうがないなぁ~」
  「・・・いいよ♡」

〇白
  ── あの駅で待ってるから ──

コメント

  • 渋谷だからこんなこともあっていいよね っていうストーリーで面白かったと思います。

  • 彼女いない歴59年の男です。駅のホームで男女がイチャイチャしてる光景を見て、羨ましいやら腹ただしいやら複雑な感情は今も続いています。

  • 他のカップルの抱擁に感化される彼女をからかっていた彼が、まさにそれより強く感化されましたね。それをすぐに行動に移した所にとても感銘を受けました。

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