第八話・それはとても光に満ちた(脚本)
〇地下室
第六階層
スユール「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
アマテ「スユール、どうしたの?」
スユール「アマテ、様・・・・・・」
アマテ「苦しい?」
アマテ「傷のせい?」
スユール「いえ、傷は治りました」
スユール「ですが、何か、別の・・・・・・」
アマテ「ひどい熱だ」
アマテ「スユール、触れるよ」
アマテ「スユール、もしかして」
アマテ「私と同じになっていってる」
スユール「同じ・・・・・・?」
アマテ「〈トモシビ〉そのもの」
アマテ「生命そのものが、変質しかけているのかもしれない」
アマテ「〈トモシビト〉になったからか・・・・・・」
スユール「アマテ様・・・・・・」
アマテ「スユール、待ってて」
〇怪しい実験室
第六階層
ベリル・オークランド「懐かしいな」
ベリル・オークランド(二十年前まで、ここに住んでいた)
フーカ・ナイラ「あ、久しぶり」
ベリル・オークランド「ナイラ先生!?」
ベリル・オークランド「なぜここに!?」
フーカ・ナイラ「ま、君と似たようなものだよ」
フーカ・ナイラ「局長閣下に反抗してクビ!」
フーカ・ナイラ「消される前にこっちから消えてやろうかと思ってね、今は第六階層に住んでる」
ベリル・オークランド「先生は、今何を・・・・・・」
フーカ・ナイラ「不思議だよね、両親と同じことをしてる」
フーカ・ナイラ「第六階層の子どもたちの面倒を見てるんだ」
フーカ・ナイラ「もっとも私は両親と違って医者じゃないから、普通の人間に医療行為はできないけど」
フーカ・ナイラ「世話するくらいなら、まあ何とか私でもやってるよ」
ベリル・オークランド「そんなことが・・・・・・」
フーカ・ナイラ「ベリルは?」
ベリル・オークランド「実質、首が飛んだ訳ですし」
ベリル・オークランド「どうせなら、故郷に戻ろうかと」
ベリル・オークランド「それより先生、ここは治安もあまり良くありません」
ベリル・オークランド「どうか安全に・・・・・・うっ」
フーカ・ナイラ「どうかした?」
ベリル・オークランド「いえ、少し、胸の痛みが」
フーカ・ナイラ「大丈夫? ふらついてるよ」
ベリル・オークランド「平気です、少し疲れただけですから」
アマテ「見つけた、フーカ・ナイラ!!」
ベリル・オークランド「アマテ!?」
アマテ「今すぐ来て。スユールがひどい熱なんだ」
フーカ・ナイラ「分かった。今行く」
ベリル・オークランド「ナイラ先生!?」
ベリル・オークランド「彼らと手を組んだのですか!?」
フーカ・ナイラ「詳しい説明は後でする」
フーカ・ナイラ「とりあえず、ベリルも一緒に来て!!」
〇地下室
アマテ「スユール!」
スユール「フーカ・ナイラ・・・・・・」
スユール「なぜ、またあなたが・・・・・・」
フーカ・ナイラ「ひどい熱だって、アマテが言ったから」
フーカ・ナイラ「見せて」
アマテ「フーカ・・・・・・多分だけど、彼は今〈トモシビ〉そのものになろうとしてる」
フーカ・ナイラ「〈トモシビ〉そのもの・・・・・・?」
アマテ「〈トモシビ〉は、本来人間とは別の生命体」
アマテ「〈トモシビト〉はいわば、ひとつの肉体に二つの命が生きているようなものだ」
アマテ「それも、まったく別の」
アマテ「しかも、〈トモシビ〉の方が人間よりはるかに強い」
アマテ「きっといずれ、飲み込まれる」
フーカ・ナイラ「ということなら、つまり・・・・・・」
ベリル・オークランド「俺も、いつかは・・・・・・?」
スユール「ベリル」
アマテ「スユールの〈トモシビト〉としての力は政府の施した術式に加えて、私が後から力を注いでいるんだ」
アマテ「だからスユールの方が、〈トモシビ〉の力に呑まれるのが早いんだろう」
アマテ「でも、君もいずれそうなる可能性は高い」
アマテ「それほど、生き物としての性質が違うんだ」
ベリル・オークランド「それを、回避する方法はないのか」
フーカ・ナイラ「ひとつの体に、命が二つ・・・・・・」
フーカ・ナイラ「〈トモシビ〉だけを殺すことができれば?」
フーカ・ナイラ「アマテ、それは可能?」
アマテ「わからない」
アマテ「私も地下に閉じ込められていたものだからね」
アマテ「〈トモシビ〉の全てを知っているわけじゃない」
アマテ「でも・・・・・・賭けるとするならその方法だけだ」
スユール「中の〈トモシビ〉を殺せばいいんですね?」
フーカ・ナイラ「スユール、何をする気?」
スユール「ベリル」
ベリル・オークランド「なんだ」
スユール「僕たち最後に、思い切りやり合わないか」
ベリル・オークランド「何を言っている?」
スユール「普段なら、僕の方が強い」
スユール「でも今は、ご覧の通り弱ってる」
スユール「ちょうどいいハンデだと思わないかい」
スユール「もしもこれで、どちらかの中の〈トモシビ〉が死ねば、どちらかは助かるかもしれない」
スユール「どちらも死ぬかもしれないけど」
スユール「どうする、ベリル」
スユール「君が決めて良い」
ベリル・オークランド「・・・・・・アマテ」
アマテ「何」
ベリル・オークランド「俺の身体でもスユールと同じ事が起きているとすれば、俺は近いうちに死ぬのか?」
アマテ「そうなるね」
ベリル・オークランド「やろう、スユール」
スユール「本当にいいの」
ベリル・オークランド「俺が勝つ」
ベリル・オークランド「約束した人がいるんだ」
ベリル・オークランド「絶対に生きると」
スユール「そうか・・・・・・」
スユール「行こう」
ベリル・オークランド「ああ」
〇廃ビルのフロア
スユール「ここなら一番広いかな」
ベリル・オークランド「そうだな」
スユール「始めようか」
ベリル・オークランド「ああ」
スユール「懐かしいね、あの時と一緒だ」
スユール「覚えてるかい?タキとかいうヤツに戦わされていた時のことだよ」
ベリル・オークランド「忘れられるわけないだろう」
ベリル・オークランド「あの場で俺は、お前をこの力で殺した」
スユール「はずだった」
ベリル・オークランド「そうだな。お前は生きている」
スユール「見せてやりたかったよ、君にも」
ベリル・オークランド「何を?」
スユール「タキの最期さ。あれは傑作だった」
スユール「まさか自分が処分を指示した被検体に殺されるとは思っていなかったんだろうね」
ベリル・オークランド「・・・・・・今までに、何人殺した」
ベリル・オークランド「人間を〈昏人〉にして、人を襲わせて──」
スユール「うん。そうだね」
ベリル・オークランド「お前が生み出した分だけ、俺も〈昏人〉を殺している」
ベリル・オークランド「約束したよな、俺たち」
ベリル・オークランド「どっちが勝っても、幸せになると」
スユール「そうだね」
ベリル・オークランド「俺はきっと、約束を守れていない」
スユール「ベリル」
スユール「僕が勝っても、同じことだったと思うよ」
ベリル・オークランド「いや、お前だったら────」
ベリル・オークランド「やめよう」
ベリル・オークランド「行くぞ」
スユール「うん」
二人の手に、光る剣が現れる。
剣を握った手が、いつもより熱かった。
ベリルは剣を振った。力の限り。
スユール「っっ・・・はぁ・・・・・・」
スユール「そう、それだよ、ベリル・・・・・・」
スユール「僕も、負けられないな・・・・・・」
ベリル・オークランド「ゔっ!」
ベリル・オークランド(痛みはある。でも、前戦ったときより、はるかに弱い)
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