あの日の約束

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〇渋谷駅前
  渋谷は相変わらず沢山の人が居た。
  渋谷は、おじさんには眩しすぎる街だ。
男「渋谷と言えば、まずハチ公だな」

〇ハチ公前
男「これが、ハチ公か・・・」
男「次は、モヤイ像かな・・・」

〇モヤイ像
男「何で、渋谷にモヤイ像なんだ?」
男「まぁいいか・・・」
男「とりあえず、写真!写真!」
男「次は・・・」
  何で、おじさんの俺が渋谷観光をしているのかと言えば。

〇明るいリビング
  10年前。
  俺は事業に失敗して、多額の借金を作ってしまった。
男「すまない。 お前達に迷惑はかけられない 俺と別れてくれ」
妻「何言ってるのよ! 一緒に頑張りましょう!!」
娘「そうだよ!パパ。 一緒に頑張ろうよ!」
男「すまない・・・」
  俺は、妻と娘の優しい言葉を振り切り
  離婚届を置いて家を出た。
  何とか工面して、自宅だけは残せる様にはした。
  それから10年、死に物狂いで働いて
  なんとか借金は返済した。

〇古いアパートの部屋
  俺は借金の返済が終わり、気が抜けて無気力になっていた。
  ぼんやり過ごしていると、幸せだった昔の事ばかり思い出す。
  特に娘との日々を・・・

〇明るいリビング
娘「ねえ・・・パパ・・お願いがあるの」
男「なんだ?」
娘「私・・・渋谷に行きたいの・・・」
男「何で渋谷なんだ?」
娘「この間、テレビで出てたの。 ハチ公とかスクランブル交差点とか・・・」
娘「109とか・・・」
男「そっか・・・ それじゃ、今度の休みにパパが連れていってあげるよ」
娘「やったぁ!!」
  しかし、その約束を叶える事が出来なかった。

〇SHIBUYA109
  そんな事を思い出して、渋谷に行ってみようと思った。
  娘と行くはずだった渋谷に・・・
男「これが109かぁ・・・」
女子高生「写真撮りましょうか?」
  突然声をかけられて吃驚した。
男「え?! あ! お願いします」
  言われるがまま、俺は女子高生にカメラを渡した。
  俺みたいな、おじさんに声をかけてくるなんて・・・
  もしかして・・・パパ活?
男「あの・・・あんまり金持ってないよ・・?」
  思わず、そう言ってしまった。
女子高生「え?! もしかして・・・ 私の事、パパ活の為に声をかけたって思ったの?」
男「違うの?」
女子高生「信じられない!! 親切で声をかけたのに・・・」
男「すまない」
女子高生「お詫びに美味しいスイーツご馳走してくれる?」
男「なんでもご馳走するよ」
女子高生「やった!」
女子高生「それじゃ、行きましょう!」
女子高生「美味しいスイーツの店があるの!」
  女子高生は俺の手を掴んで、走り出した。

〇ファミリーレストランの店内
  これも、ある意味パパ活じゃないのか?
女子高生「あぁ・・ またパパ活じゃないかって思ってるでしょ?」
男「いやぁ・・・」
女子高生「おじさんって良い人だね」
男「そうでもないよ・・・」
女子高生「じゃぁ悪い人なの?」
男「良い人ではない・・・」
女子高生「どうして?」
男「俺のせいで家族がバラバラになったんだ」
男「女房にも娘にも悪い事をした」
男「昔、娘と約束したんだ、渋谷に連れて行ってやるって・・・」
男「最近、その約束を思い出してね・・・」
女子高生「それで渋谷に来たんだ・・?」
男「酷い父親だろ? 娘との約束、ずっと忘れてたんだから・・」
女子高生「娘さんとは?」
男「会ってない・・・ って言うか会う資格が無いよ・・・」
女子高生「よし! それじゃ私が娘さんの代わりにデートしてあげる」
男「・・・・・」
女子高生「何度も言うけど、パパ活じゃないからね!」
男「ありがとう。 それじゃお願いします」
女子高生「何処に行きたい?」
男「君が行きたい所で良いよ」
男「俺は渋谷はわからないから・・・」
女子高生「わかったわ。 それじゃ、行きましょう!」

〇センター街
  センター街。

〇渋谷ヒカリエ
  渋谷ヒカリエ。

〇渋谷マークシティ
  渋谷マークシティ。

〇渋谷スクランブルスクエア
  渋谷スクランブルスクウェア。

〇ファミリーレストランの店内
男「さすがに疲れたな」
女子高生「まだまだ、案内する所があるんだけど・・」
男「いやいや・・・十分だよ」
男「若い子のパワーにはついていけないよ」
女子高生「それじゃ今日はこれくらいで・・・」
男「今日はありがとうね。 こんな、おじさんに付き合ってくれて」
女子高生「いいえ、どういたしまして。 私も楽しかったわ」
男「そう言ってくれると、嘘でも嬉しいよ」
女子高生「それじゃ、私・・帰るね」
  そう言って、席を立った。
男「気を付けて、帰りなよ!」
女子高生「バイバイ」
  彼女は手を振って、店を出た。
男(そう言えば、彼女の名前聞くの忘れたな・・)
男(まぁ・・もう会うことも無いだろうから、必要ないか・・・)
  コーヒを飲みほして、俺も家に帰ることにした。

〇渋谷駅前
あゆみ「もしもし・・・ママ?」
ママ「あゆみ?」
あゆみ「パパ・・帰ったよ」
ママ「どうだった?」
あゆみ「元気になったと思う」
ママ「良かった・・・」
あゆみ「そんなに心配だったら、自分で元気づければ良かったのに・・・」
ママ「別に心配なんかしてないわよ」
あゆみ「嘘ばっか・・・ パパのアパートの大家さんに、 パパの様子を知らせてもらってる癖に・・・」
ママ「それは・・・ パパに何かあったら知らん顔は出来ないでしょ?!」
あゆみ「わかった! わかった!」
あゆみ「今度はママがパパと会って、元気付けてね。 そんで、ちゃんと私の事を紹介してよね!」
あゆみ「じゃないと、パパ・・・ 私の事をパパ活女子高生だと思ってるから」
ママ「考えてみる・・・」
あゆみ「それじゃ、帰るから」
ママ「気をつけてね」
あゆみ(ママも素直じゃないんだから・・・)
あゆみ(パパ・・・私が、あゆみだって知ったら どんな顔するのかしら?)
あゆみ(今度、パパと会うのが楽しみ)
  おわり

コメント

  • みなそれぞれ心優しい家族のちょっと変わった交流を楽しませてもらいました。女の子の正体を考えながら読んでましたが、最もハッピーな結果に満足してます。気持ちのいい読後感です。

  • 家族を思うがために離婚という決断をしたお父さん、離婚しても彼のことを温かくずっと見守り続けたお母さん、そしてそんなふたりと同じように優しく育った娘さん、家族っていいなと思えるお話でした。またいつか家族3人が一緒になれる日がくるような気がします。

  • どこか淡々と進んでいく物語の中に、リアリティと温かさがあって、読後に後味の良さを感じました。

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