魔法戦士レッドローズ、参上! 中編(脚本)
〇通学路
カァ・・・カァ・・・
千咲 マナ「ねぇチーゴ、あれでよかったのかな?」
チーゴ「あれとは?」
千咲 マナ「さっきれもんちゃんとお話した時にしたアドバイスだよ。本人にしかと伝わったのか不安で不安で」
チーゴ「見事に伝わったとは思うぞ? 実際俺も少し感動してたところだ」
千咲 マナ「チーゴはいいとして、ほんとはれもんちゃんの心に響いてなかったどうしよう」
千咲 マナ「さっき『全くもう』なんて言われちゃったし、きっとあの子に失望されちゃったんだぁ!」
マナは歩道の端で四つん這いになる。
千咲 マナ「はぁ・・・私ってどうして何時ああなんだろう?」
チーゴ「だからそれはお前の考え過ぎ・・・だ?」
千咲 マナ「チーゴ、どうかしたの?」
チーゴ「マナ。どうやら言い争っている暇は無いみたいだぜ」
千咲 マナ「もしかしてまた怪人が!?」
チーゴ「近くのゲーセンからだ。 発現したばかりだが、強い邪氣を放ってやがる」
千咲 マナ「こうしちゃいられない。行くよ、チーゴ!!」
チーゴ「おう!」
チーゴ(こういう時に限って切り替え早いんだよなぁ。うん)
〇繁華な通り
不良怪人「ふぁっはっはっはっは、俺の怒りを見よ、小童ども!!」
不良2「兄貴、一体どうしちゃったんですか!?」
店員「そこの貴方、早くこっちに・・・!」
不良2「あ」
不良2は店員に腕を引っ張られ、その場を離れて行く。
マナはその二人とすれ違いながら現場に駆け込んでいった。
千咲 マナ「なんてことなの、一日に二人も怪人が現れるなんて・・・」
チーゴ「おいマナ、あの怪人が着ている服、見覚えなくね?」
千咲 マナ「え?」
マナは怪人の制服を見て、公園で出会った不良の事を思い出した。
千咲 マナ「まさか、あの時れもんちゃんに絡んでたやつ?」
チーゴ「事情は知らねぇが、心を闇に捉われてしまったようだな」
チーゴ「マナ、取り敢えずやるぞっ!」
千咲 マナ「うん!」
〇ビルの裏通り
マナはビルとビルの間に身を顰めると、ポーズを構えながら呪文を唱える。
千咲 マナ「開け、心の花よ!」
レッドローズ「・・・・・・よしっ!」
〇繁華な通り
不良怪人「ふぁっはっはっは。燃えろ燃えろ、すべて燃えてしまえ!」
不良怪人「俺の怒りはまだまだこんなもんじゃないぞ!」
「そこまでよ、そこの制服怪人!」
不良怪人「ぬ、誰だ!?」
レッドローズ「情熱なるバラ、レットローズ参上!!」
レッドローズ「町中で堂々と火遊びだなんて・・・これ以上乱暴事はおよしなさい!!」
不良怪人「黙れ、お前に俺の何が解る!?」
怪人はレッドローズ狙いを定めると掌から火球を撃ち込む。
しかしレッドローズはそれに動じることはなく、飛んできた火球を裏拳で弾き飛ばしてしまった。
不良怪人「なっ!」
レッドローズ「もうお終い?」
不良怪人「舐めるなよ小童がぁぁ!!」
怪人は両手を前に突き出して火球を連射。
レッドローズは一直線に飛んでくる火球の群れを避けながら徐々に距離を詰めていく。
レッドローズ「ふっ、はっ、ひっ、てやぁっ!」
不良怪人「えぇいちょこまかと・・・!」
レッドローズ「隙あり!!」
不良怪人「ふごぁっ!」
レッドローズは怪人の鳩尾に渾身のジャブを決める。
怪人はその衝撃でアスファルトを引きずりながら勢いよく後ろへ下がっていった。
不良怪人「はぁ・・・はぁ・・・」
レッドローズ「ねぇ、降参しない? これ以上貴方とは戦いたくないの」
不良怪人「黙れ、お前も俺を小馬鹿にして楽しんでんだろう!?」
不良怪人「さっきからビョンビョンビョンビョンと飛びまわって、まるでピエロみたいに」
レッドローズ「そんな事ない!」
レッドローズ「ねぇ教えてよ、どうしてそこまで他人を恨むの?」
レッドローズ「貴方の身に一体何が・・・?」
不良怪人「五月蠅い五月蠅い、五月蠅ーい!」
怪人は絶叫しながら腕を横に薙いで炎の荒波を生み出す。
レッドローズはその波を避けることままならず、呑みこまれてしまった。
レッドローズ「きゃああぁぁっ!」
チーゴ「レッドローズ!」
〇古いアパートの一室
その時、レッドローズの脳裏に映像が流れる。
幼い少年「ママ、お腹空いた・・・」
女性「五月蝿い! 腹ペコだからってせがむんじゃないよ」
女性「ママこれから“お仕事”あるから、これで何か買ってきな」
幼い少年「・・・・・・ママ」
〇散らかった職員室
教師「・・・お前、ハンカチを盗ったって本当か?」
軟派な青年「え?」
教師「今日女子から報告があったぞ。 この際だから白状しろ」
軟派な青年「そ、そんな、盗んでなんていません!!」
軟派な青年「俺はただ、あの子が落としたものを届けただけで──」
教師「俺が嘘をついていると言いたいのか?」
軟派な青年「いえ、そんなことは」
教師「だったら本当のことを言え!」
教師「教師である俺を出し抜けると思ったら大間違いだぞ!!」
軟派な青年(違う、俺は盗ったんじゃない。俺はやってない・・・)
〇モヤモヤ
軟派な青年「どうして・・・どうして皆、しっかり俺を見てくれないんだ」
軟派な青年「俺がいったい何をしたってんだ?」
軟派な青年「憎い・・・憎い。あいつらが憎い」
軟派な青年「どいつもこいつも俺を見下して・・・」
不良1「俺の声が届かねぇっていうなら」
不良怪人「・・・もう、全て灰になれ!!」
〇繁華な通り
レッドローズ「・・・はっ!」
チーゴ「気が付いたかレッドローズ?」
チーゴ「大丈夫か? 何処か痛い所は?」
レッドローズ「う、うん。なんとか平気よ・・・」
レッドローズ「チーゴ。私、あの怪人の過去を見たわ」
チーゴ「え?」
レッドローズ「幼い頃に親から見放され、教師にもコケにされ、ずっと独りぼっちだった」
レッドローズ「闇に取り込まれるのも頷ける程に」
チーゴ「それがどうしたってんだ、早くしねぇと町が焼かれるぞ!」
レッドローズ「でも、ただ戦うだけじゃあの人の闇は掃えないわ!」
レッドローズ「例え怪人化を浄化できたとしても、あの人はこれからも独りなのよ。 それで本当に勝ったと言えるの?」
チーゴ「こんな時に『お人よし』を発動させるな!」
???「兄貴! くにひこの兄貴ー!」
チーゴ「ん? あれは・・・」
不良2「大丈夫ですか兄貴? しっかりしてください」
不良の悲しき過去が判明。貧しい家庭で育った上に、学校で罪を擦り付けられるとは悲し過ぎる……。
戦う事では救えないと判断したレッドローズの前に現れた舎弟の不良。彼の登場で風向きが変わりそうですね。
続きを待ってます!