読切(脚本)
〇狭い畳部屋
高校三年・・・少しだけ興味あった先輩と、同級生の友達が、密かに付き合ってたことを知り、私は大学受験にも失敗した。
別にそんなに先輩を好いてたわけじゃないのに、なんか集中力を奪われ、
本来答えられるテストも散々な結果で、行けたはずの大学に行けなくなってしまった。
そんな中、友達が先輩と別れた話を聞かされる・・・慰めとかの言葉より、私の人生を振り回された気がして、少し腹立たしかった。
将来と友達を勝手に遠くに感じてる時に・・・変な電話がかかってきた。
アイナ「あ・・・もしもし?」
変な話だが、未来からの電話らしい。
電話の相手は、未来の夫となる人と娘で、なんか、私の声を聞きたかったらしい。
正直、イタズラ電話なんだと思った。
電話の相手は、タイムパラドックスや、バタフライエフェクトがあるから、未来のことは何も話せないと言うが、
娘の名はカナタであることは分かった。
夫の名前はわからない。
こんな証拠も確証もない電話が・・・。
何度もかかってくる。
切っても、またかかってくる。
未来の夫が言うには、私の考え方が良くなくて、未来の娘が息子になったりするらしい。
そんなバカな話があるのかと思った。
だけど、未来の夫は、ずっと真剣だった。
娘がどんな人間に変わっても、接し方に変化がない。
それに、私の変わる気持ちに、ずっと寄り添って受け答えしてくれている・・・。
私は、この名前も知らない人を、未来の夫なのだと徐々に感じていた。
でも、私の未来は聞けば聞くほど最悪だった。
何をするのか分からないが、私は事業に失敗し、家族の元を離れるそうだ。
・・・少しの気持ちで娘が息子に変わってしまう不確定なものなのに、確定したような未来。
本当は絶望するんだろうけど・・・。
私は違った。
絶望はしない、大学受験の失敗がなんだ・・・。
どんな事になっても、私は前に進む。
例え事業に失敗したり、上手く行かない事が待っていても、名前も知らない、姿も分からない、夫にめぐり逢うと信じて進む。
この家族に会うために、家族になるために、私は進む。
そう思ったら、少しだけ気持ちが落ち着いた。
〇普通の部屋
社会人になった私は、仕事の日々だった。
ストレス発散はカラオケだった。
特別好きなアーティストがいるわけじゃなく、何となく曲を聴いて、気に入った曲を覚えてカラオケで歌う。
〇カラオケボックス
ある日、同じ職場の友達とカラオケに行った時に、友達が何か面白い歌詞の曲を歌った。
〇レンタルショップの店内
それが、何故か気になって、CDショップに行って探した。
でも売ってなくて、電気屋を見たけど、ここにもなかった。
コンビニもみたけど、あるはずもなく、本屋さんに併設されたCDコーナーで見付けた。
CDの背表紙に手を伸ばすと、一人の男性の手が触れた。
シロー「あ・・・!」
シロー「なんか、ごめんなさい! なんか、ごめんなさい!! ほんと、ごめんなさい!!!」
アイナ「い、いや、そんなに謝られると、なんか、コッチだけが悪い感じになるんですけど」
シロー「で、で、ですよね。 ごめんなさい!」
シロー「あー・・・」
アイナ「ふふふ」
同じCDを同時に取るとこで、手が触れるだなんて、こんな恋愛漫画みたいなことあるんだって恥ずかしくなったけど、
相手の男性がそんな私の気持ちもお構いなしに、何度も謝ってきて・・・。
私は気付いたら、この男性の声に懐かしさを感じていました。
シロー「あの、好きなんですか?」
アイナ「えっ!?」
シロー「山崎まさよしさんの曲」
アイナ「これから好きになるんだと思います」
シロー「これからですか。 ・・・いいですね」
シロー「untitled って曲があるんですけど・・・。 って、知らないですよね」
シロー「月に照らされた夜、カナタから雪解けて川になって、まだ見ぬ明日に流れてく」
シロー「せせらぎを聞きながら、旅立った鳥の帰りを待ってるんです」
シロー「あ、俺・・・これ、何の話してるんだろ」
アイナ「でも、私。 それ、ちょっと分かっちゃうかもです」
シロー「えええ!? 本当ですか?」
アイナ「だから、もっと話を聞かせてください」
シロー「それじゃ・・・先ずは」
シロー「電話番号からいいですか!?」
アイナ「喜んで」
おしまい。