47話 裏切り(脚本)
〇ファンタジーの学園
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ワヌゥレン卿、大丈夫かしら。お兄さまが休憩室に運んでくれて助かったわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン(あの女は・・・)
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「どうして部外者がここにいるの!? どうせ公爵令嬢に会いに来たんでしょう!?」
エンシェン・リン「あら・・・レバノスタン侯爵令嬢・・・」
エンシェン・リン「えっと・・・確かに公爵令嬢に会いに来たんだけど、手を切るためなのよ?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「え?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「突然どうして・・・」
エンシェン・リン「私の師匠がね・・・手を切るように言ってきたのよ」
エンシェン・リン「あの人の頼みは断れないわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「そう・・・」
エンシェン・リン「今までごめんね。怖い人だと思ってたけど、あなたを守ることに必死なのね、素敵なお兄さまじゃない」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「え? お兄さま?」
エンシェン・リン「私の師匠は頼まれたのよ。あなたのお兄さまにね」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「・・・お兄さま」
エウレット・ヘヌシアン「リン」
エンシェン・リン「お嬢さま!」
エウレット・ヘヌシアン「一体何の話? どうしてあなたがこの女に謝ってるの?」
エウレット・ヘヌシアン「あの男が何をしたのかしら?」
エウレット・ヘヌシアン「前のギルド長となんであの男が会ってるのよ!? 私に会わせてくれる約束だったわよね!? どうなってるのよリン!!」
エンシェン・リン「お、お嬢さま。ごめんね。私情報屋からは手を引くことになったのよ」
エンシェン・リン「ギルドのみんなとは違う商売を始めるの! でもお嬢さまにはお世話になったからこれからもパートナーでいさせて!」
エウレット・ヘヌシアン「それって・・・」
エウレット・ヘヌシアン「私のお金が必要ってこと?」
エンシェン・リン「え?」
エウレット・ヘヌシアン「絶対にいやよ。あなたのパートナーなんて。あなたが帝国一の情報屋だから私は支援してきたのよ」
エウレット・ヘヌシアン「立て直してあげたお金も時間も全部無駄にして、違う商売を始めるからまた支援して欲しいですって?」
エウレット・ヘヌシアン「調子に乗らないで。あなたなんて情報屋じゃなくなるなら用済みよ」
エウレット・ヘヌシアン「役に立ったからお金は請求しないでおいてあげるわ!!」
エンシェン・リン「そんな・・・支援なんかしなくていいわ。お金だって返していくつもりだったのよ。ただ友だちとして・・・」
エウレット・ヘヌシアン「いやよ。どの面下げて言ってるの?」
エンシェン・リン「・・・・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなた、なんて人なの・・・今まで世話になっておいて」
エウレット・ヘヌシアン「は? 何? 世話をしていたのは私よ。この女にどれだけ払ったと思ってるの?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたにとってお金が全てなの!? 彼女を信頼してたんでしょう!?」
エウレット・ヘヌシアン「何偉そうに説教してるのよ? アンタだって色んな人を利用してきたでしょう?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたと一緒にしないで! 私はそもそも情を持たせなかったわ!」
エウレット・ヘヌシアン「あら? それって自慢できることなの? その人たちはあなたの正体を見抜いていただけね」
エウレット・ヘヌシアン「私の協力者はみんな友だちだったの。だからこそ裏切りが許せないのよ!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなた──」
エンシェン・リン「もういいのよレバノスタン侯爵令嬢」
エンシェン・リン「これだけはっきり言われたんだから、縁を切ることにするわ」
エウレット・ヘヌシアン「リン・・・!!」
エンシェン・リン「お金をたくさんありがとう公爵令嬢♡ 請求しないと言ってくれるならありがたいわ」
エウレット・ヘヌシアン「何調子に乗ってるの? 撤回してあげるべきかしら?」
エンシェン・リン「それでもいいわ。払えるくらいには稼げる自信があるのよ」
エンシェン・リン「今までありがとう公爵令嬢。大好きよ」
エンシェン・リン「これからもずっとね」
エウレット・ヘヌシアン「私はたった今からあなたのことが嫌いよ」
エンシェン・リン「でも私は好きなの。でもこれで会うのは最後ね」
エウレット・ヘヌシアン「待ってリン」
エンシェン・リン「お嬢さま・・・」
エウレット・ヘヌシアン「最後に前のギルド長の居場所を教えて」
エウレット・ヘヌシアン「お金は払うわよ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなた──」
エンシェン・リン「絶対いやよ! あなたがあの人の虜になったら厄介だもの!」
エウレット・ヘヌシアン「何よ虜って。ありえないわ」
エウレット・ヘヌシアン「私の虜になるの間違いでしょ?」
エウレット・ヘヌシアン「それよりアンタ・・・よくもリンを」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「な、何言ってるのよ。今あなたが・・・」
エウレット・ヘヌシアン「こうなったのは全部アンタのせいじゃない? アンタの兄がアンタが大切だからって理由で! リンに何かしたんでしょ!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたと話してると疲れるわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「私もう行くわね。私も今後一切あなたと会いたくないわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「きゃあ──!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「な、何を・・・」
エウレット・ヘヌシアン「無礼だからよ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「どうかしてるわ・・・」
エウレット・ヘヌシアン「手紙で謝ったくらいで許されてるとでも思ったの? 許すわけないじゃない。絶対にアンタを殺すわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン(この女・・・こわいわ、お兄さま。私はなんでこんな女を相手してしまったの)
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「手紙で謝ったことが悪いの? なら今謝らせて」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたの婚約者を奪ったこと、そしてあなたの名誉を傷つけようとしたことを謝らせてちょうだい。本当にごめんなさい」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたの命を狙ったこともあったわ。本当にごめんなさい」
エウレット・ヘヌシアン「ふざけないで」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「え・・・」
エウレット・ヘヌシアン「絶対に、殺すわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「な、なんで──今謝っ──」
エウレット・ヘヌシアン「直接謝ったら許すなんて言ってないわよ」
エウレット・ヘヌシアン「イカれてるわね」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「な、何を──」
エウレット・ヘヌシアン「ちょうどいいわ、死になさいよ」
〇黒
お兄さま──・・・
〇ファンタジーの学園
モエスカル・アルダニア「だ、だめです!! エウレットさま!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン(た、助かったの? この子は誰かしら?)
エウレット・ヘヌシアン「退きなさいモエスカル嬢」
モエスカル・アルダニア「こ、この女を懲らしめるだけではなかったのですか!? 殺してはいけません、まして自分の手では・・・!!」
エウレット・ヘヌシアン「そうね・・・殺人犯にはなりたくないわ。プロを雇いましょう」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「プロ?」
モエスカル・アルダニア「何戸惑ってるの? 全部あなたが悪いのよ。エウレットさまから婚約者を奪った」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「でも私、反省しているのよ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「許してとは言わないからもう放っておいて。私もあなたに関わらないから・・・」
エウレット・ヘヌシアン「死んでくれたら許してあげるわ」
モエスカル・アルダニア「エウレットさま・・・」
モエスカル・アルダニア「殺さずに懲らしめる方法があるはずです」
エウレット・ヘヌシアン「殺さずに・・・」
エウレット・ヘヌシアン「いいわ。考えておきましょう」
モエスカル・アルダニア「ふぅ・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あ、あの・・・ありがとう」
モエスカル・アルダニア「別にあなたのためじゃないわ。エウレットさまが殺人犯になるのを止めたかっただけよ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「私、あなたに何もしてないと思うのだけど」
モエスカル・アルダニア「エウレットさまは恩人なの! エウレットさまの敵は私の敵よ!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「そう・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「でも、命の恩人だわ。本当にありがとう」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「じゃあ私、もう行くわね」
モエスカル・アルダニア「え、えっ」
モエスカル・アルダニア「なんで感謝するの? 悪女なんでしょ?」