運命の人(脚本)
〇地下の部屋
目が覚めると無機質な部屋だった
ヨシダ「ここは!?」
確か、昨日は仕事帰りにいつもみたいに同僚と飲んで・・・
ヨシダ「ダメだ、思い出せない!」
ヨシダ「とにかくここから出ないと・・・」
ベッドに横たわっている身体を起こす
ヨシダ「何だ!?身体が重い!」
ヨシダ「まさか薬でも盛られたのか!? いったい誰が!?」
「・・・ああ、つぅぅぅいいィィ・・!!!」
ヨシダ「なんだ今の叫び声!?」
ヨシダ「あ、つ、い?熱い?」
ヨシダ「まさか・・・拷問!?」
ヨシダ「いったい何が起こってるんだ!?」
ヨシダ「早く逃げないと!! クソっ!!身体が!」
???「おや、お困りのようですね」
ヨシダ「だ、誰だ!?」
男「私をお忘れですか? 残念ですね」
ヨシダ「どこかで会ったことがあるって言うのか・・・?」
男「こうしてあなたが私のもとへ現れたのは必然・・・ 生きている限り、ね」
男「まさに運命とでも言いましょうか」
ヨシダ(何を言ってるんだ・・・?)
ヨシダ「いったいお前の目的は!?」
男「目的、ですか・・・ 全てはあなたのためですよ」
ヨシダ(こいつ、頭がイカれてる・・・!!)
男「さあ、そろそろ行きましょうか お楽しみの時間ですよ」
ヨシダ「や、やめろ!!」
男はベッドの上の俺を無理矢理車イスへ乗せた
〇廃墟の廊下
クソっ!!どこへ連れていこうっていうんだ?
逃げようにもこの身体じゃ・・・
〇地下実験室
男「着きましたよ。さあ、始めましょうか」
ヨシダ「なんだここは?」
ヨシダ「お、おい!!離せ!」
〇地下実験室
ヨシダ「ガボッ・・・!! お、溺れる!」
〇地下実験室
ヨシダ「ぶはっ!!ゲホッゲホッ!!」
男「クックック・・・ これは失礼いたしました」
ヨシダ(こ、こいつ・・・!! やっぱり俺も拷問して何か聞き出そうと?)
ヨシダ(それとも拷問自体が目的なのか・・・?)
〇廃墟の廊下
水責めが終わると、再びベッドのある部屋に連れ戻された
もうクタクタだ・・・
〇地下の部屋
男が扉を開けるとそこには一人の女性がいた
男「それでは、よろしくお願いします」
謎の女性「・・・はい」
男は部屋から出ていった
あとには俺と女性の二人が残された
ヨシダ(・・・綺麗なひとだ)
ヨシダ(いや、何を考えてるんだ俺は! あの男の仲間なんだぞ!?)
謎の女性「食事・・・ 食べられますか?」
ヨシダ(食事? 確かに腹は減っている気がするが・・・)
ヨシダ「・・・毒とか入ってないよな?」
ヨシダ「いや、あんな拷問するくらいだ あっさり毒で殺すようなことはしないか」
謎の女性「毒・・・ですか」
謎の女性「・・・プッ! あはは!」
ヨシダ「な、何がおかしいんだ!」
謎の女性「いえ、ごめんなさい 毒なんか入っていませんよ、ほら」
そう言うと、彼女はスープをスプーンでひと口すすった
ヨシダ(毒は入ってないみたいだな ていうか、か、間接キスになっちゃうじゃないか・・・)
ヨシダ(それにしても、こんな状況で子供みたいに笑うなんて調子の狂う女だ・・・)
ヨシダ「では、食事はもらおう」
食器に手を伸ばす
謎の女性「あっ・・・」
ヨシダ(・・クソっ!!手が震えてしょうがない! これも薬か何かのせいなのか?)
謎の女性「あの、お手伝いしましょうか?」
ヨシダ「・・・頼む」
〇地下実験室
それからは同じような日々が何日も続いた気がする
拷問、部屋の外の悲鳴・・・
あの男は拷問するだけで、何かを聞き出そうという素振りもない
やはり俺に何かの恨みがあって、苦しめること自体が目的なのか?
だとしたら最後には・・・?
〇地下の部屋
あの女性は毎日来て、身の回りの世話をしてくれた
最初は羞恥心や情けなさを感じたものの、気さくな彼女の笑顔に次第に心を許していった
俺の好物や、枕が合ってなさそうとか、とにかく細かいところまで気づいてくれる
もしかしたら、俺たちは波長が結構合っているんじゃないだろうか・・・
辛い日々だったが、毎日彼女と会えると思うだけでなんとか精神をつなぎ止められていた
〇地下の部屋
ヨシダ「なぜこんなに優しくしてくれるんだ?」
謎の女性「夫に・・・似てるから、かな?」
ヨシダ「!!!」
ヨシダ「そ、そうか 結婚してるんだな・・・」
ヨシダ「ま、まったく君の旦那は幸せ者だな・・・ こんなに気が利く可愛い嫁さんがいるなんて」
謎の女性「え・・・?」
ヨシダ「あ・・・ すまない!いまのは忘れてくれ!」
そのとき・・・
男「おや、お邪魔のようでしたかね?」
ヨシダ「な、何しに来たんだ!? まだいつもの拷問の時間じゃ・・・」
男「おやおや・・・ お楽しみの時間を拷問とはあんまりじゃありませんか」
男「今日は別の用で参りました ここから出ていただきましょう」
ヨシダ「そ、外に出してくれるのか!?」
男「そうではありません この部屋から出ていただき、そして二度と戻ってくることはないということです」
二度・・・と?
ヨシダ(そうか、ついに・・・)
ヨシダ(もう十分に苦しめた俺をやっと処分するってわけか)
ヨシダ(いつも部屋の外から聞こえる悲鳴のように、酷い拷問の挙句に・・・)
ヨシダ(薬漬けにされて弱ったこの身体じゃ、どのみち逃げ出すことも不可能だ)
ヨシダ「わかったよ・・・ 連れて行ってくれ」
男「物分りがよろしくて助かります」
ヨシダ「・・・だが、最後に少しだけ時間をくれ」
男「ええ、少しだけなら」
ヨシダ「あのさ・・・」
ヨシダ「短い間だったけど、いままでありがとう」
謎の女性「・・・」
ヨシダ「言わなくちゃ最期の瞬間にきっと後悔するから、言わせてくれないか?」
謎の女性「はい・・・」
ヨシダ「俺はたぶん、君を愛してしまった」
謎の女性「!!!!」
ヨシダ「君に旦那がいるってことも分かってる もう先のない男の言うことだから忘れてくれて構わない」
ヨシダ「だけど、もし生まれ変わって、すべてを忘れ去ったとしても・・・」
ヨシダ「きっとまた君を愛してしまうと思う」
ヨシダ「今度は普通に出会って、普通に恋に落ちて・・・ 君にも愛してもらえたら嬉しいな」
謎の女性「そんな・・・」
ヨシダ「だから、どうか幸せで・・・」
ヨシダ「俺が君の運命の人として、君の前に現れるその時まで」
謎の女性「・・・はい」
男「もう、よろしいですね?」
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本当に泣きました!
エルナさんの作品は泣けるものが多いです
どきどきした拷問部屋のミステリーからの結末!圧巻です
しかも熱いがカラオケは笑うし風呂は本当に拷問になってたのは更に笑いますね😂顔が怖いしね
やはり面白かったです!
ジャンルが移行する作品に興味があります。そういったものと捉えました! サスペンスホラーと思わせて、 実はほのぼのとした話になる。 あるいはサスペンスホラーから社会派 ホームドラマに …という風に ジャンル変化するんだな、ということに感心しました🤔
ドキドキしながら読み進めて、ラストでホッコリしました!
全てわかった上で二周目を読んでみると、介護職員の男の言動がとても面白く、コメディとしても楽しめました。