43話 厄介な情報屋(脚本)
〇ファンタジーの学園
ナーヤ・ガーヤ「・・・ったく、リンのやつなんでこんなところに入り込んでんだ?」
ナーヤ・ガーヤ「そう言えばこの学園って・・・ルゥラッハも通ってたよな」
ナーヤ・ガーヤ「用事が終わったら会いに行ってやるか♪」
エウレット・ヘヌシアン「リンっ! リンいる!?」
ナーヤ・ガーヤ(あれはヘヌシアン公爵令嬢? リンはあの令嬢に会いに来たのか)
エンシェン・リン「ここよ公爵令嬢!」
エウレット・ヘヌシアン「リン・・・来てくれたのね」
エンシェン・リン「あなたのためにならどこへでもくるわよ! あーん相変わらずかわいいわ!」
エンシェン・リン「でもなんだか元気がないわね? 何かあったの?」
エウレット・ヘヌシアン「・・・ワヌゥレンって知ってる?」
エンシェン・リン「え、ええ。あなたが好きだった人でしょ? もしかして振られた!?」
エウレット・ヘヌシアン「う・・・うう」
エンシェン・リン「え、ええ!? 本当に!?」
エンシェン・リン「泣かないでちょうだい、私慰めるの苦手なのよ〜」
ナーヤ・ガーヤ(振られた? そんなことを相談するためにリンを呼び出したんじゃないだろ?)
ナーヤ・ガーヤ(リンに忠告しにきただけだったが、何かいい情報が手に入りそうだな・・・)
エウレット・ヘヌシアン「ルゥラッハ・オル・レバノスタン・・・」
エンシェン・リン「レバノスタンって、あの怖い特級騎士よね? あなたの嫌いな女の・・・」
ナーヤ・ガーヤ「・・・・・・」
エウレット・ヘヌシアン「そうよ! そうよ!! あの男さえいなければあんな女──ッ!!」
エンシェン・リン「お、落ち着いて公爵令嬢」
エウレット・ヘヌシアン「ワヌゥレンの奴、あのルゥラッハ・オル・レバノスタンが好きだから私の敵になるんですって! そんな話信じられる!?」
エウレット・ヘヌシアン「私の目の前であの男にキスしようとしたのよ!」
ナーヤ・ガーヤ(なんだとお!? 俺のルゥラッハなのに!)
エンシェン・リン「え? もっと詳しく・・・」
エウレット・ヘヌシアン「リン・・・」
エンシェン・リン「ご、ごめんなさい? 好奇心が・・・」
エンシェン・リン「それよりどうして私を呼んだの? そのルゥラッハ・オル・レバノスタンの情報が欲しいのかしら?」
エウレット・ヘヌシアン「いいえ」
エウレット・ヘヌシアン「あの女よ。アゥルペロ・ミルス・レバノスタン」
エンシェン・リン「え? またその女でいいの?」
エウレット・ヘヌシアン「いいわ。だって、レバノスタン卿相手じゃ私たちじゃ勝てないもの」
エウレット・ヘヌシアン「あっちは帝国の兵器を全部持っていってテルヌンドへ引っ越したのよ」
エンシェン・リン「テルヌンドへ引っ越した? どうやって?」
エウレット・ヘヌシアン「知らないわよ」
エウレット・ヘヌシアン「でもむこうの王さまと婚約中らしいわ」
ナーヤ・ガーヤ(こ、婚約!? 婚約って言ったか!? テルヌンドの国王と!?)
エンシェン・リン「こ、婚約!?」
エウレット・ヘヌシアン「ねえ、リン。レバノスタン卿に喧嘩を打ったら私が戦争の火種になるらしいの」
エンシェン・リン「そ、それは流石に・・・私も協力したいけど・・・」
エウレット・ヘヌシアン「わかってるわ。あなたを巻き込んだりしないわよ。私もそんなリスクを負ってまであの男をどうにかしようだなんて思わないわ」
エウレット・ヘヌシアン「でも復讐はしたいの」
エンシェン・リン「でもどうやって・・・」
エウレット・ヘヌシアン「だから、あの女よ。テルヌンドの王はあの女のことで忠告していないわ。あの男に手が出せないから、大切な妹を狙うのよ」
エンシェン・リン「さすがね公爵令嬢! あの女の情報ならいくらでもあるわ!」
エウレット・ヘヌシアン「その情報、早速買わせてくれる?」
エンシェン・リン「うふふ・・・今日もがっぽり〜 相変わらず太っ腹だわぁ」
ナーヤ・ガーヤ「リン」
エンシェン・リン「・・・・・・」
エンシェン・リン「ナーヤさま?」
ナーヤ・ガーヤ「久しぶりだな」
エンシェン・リン「ナーヤさま!」
エンシェン・リン「どうして・・・どうして! なんで今さら私の前に現れるのよ!」
ナーヤ・ガーヤ「ただの警告だよ。すぐ去るさ」
エンシェン・リン「でも会いにきてくれたわ!」
ナーヤ・ガーヤ「まあな」
エンシェン・リン「警告って?」
ナーヤ・ガーヤ「ルゥラッハ・オル・レバノスタン。そしてアゥルペロ・ミルス・レバノスタンのことだ」
エンシェン・リン「な、なんでナーヤさまが彼らを?」
ナーヤ・ガーヤ「レバノスタンについてはもう情報を売らないで欲しい・・・と言うより公爵令嬢とは手を切れ」
エンシェン・リン「な、何言ってるのよ! 公爵令嬢は恩人なの! いくらナーヤさまの警告でも聞けないわ!」
エンシェン・リン「あなたがまた来てくれたのだって、私が情報ギルドを守ってきたからよ! そのギルドに協力してくれた公爵令嬢のおかげなのよ!」
ナーヤ・ガーヤ「違う。俺が来たのはルゥラッハ・オル・レバノスタンに頼まれたからだ」
エンシェン・リン「どう言うこと?」
ナーヤ・ガーヤ「手を切る以前の話だったな。俺はお前に情報ギルドを終わらせて欲しいと言いにきたんだ」
エンシェン・リン「え・・・」
ナーヤ・ガーヤ「守ってくれてありがとう。でももういいんだリン。もう二度と俺たちはあそこへは帰らない。俺たちは既に居場所を見つけてる」
ナーヤ・ガーヤ「だからもう守らなくていい」
エンシェン・リン「な、何よそれ・・・もう戻らない? どうして?」
エンシェン・リン「私にとってはまだあそこが居場所なのよ!!」
エンシェン・リン「あそこしか帰る場所がないのに!!」
ナーヤ・ガーヤ「もうあるだろお前にも。まあそのギルドをやめろって言いにきたんだけどな」
エンシェン・リン「・・・・・・」
ナーヤ・ガーヤ「お前は商売ができる。でもそれが情報ギルドである必要はない。もう俺たちのことを忘れて自由になってくれ」
ナーヤ・ガーヤ「お前ならできるだろ?」
エンシェン・リン「・・・・・・またそうやっていなくなるのね」
ナーヤ・ガーヤ「去るって言っただろ」
エンシェン・リン「わかったわよ」
エンシェン・リン「でも次に何をやるべきかは教えなさい。そしてライバル店の情報を毎回買わせなさい! 情報の大事さは私、よくわかってるもの!」
ナーヤ・ガーヤ「本当にいいのか? 公爵令嬢は?」
エンシェン・リン「恩人に頼まれたと正直に話すわ。あの方は優しいの、きっと次の商売でも助けになってくれるわよ!」
ナーヤ・ガーヤ「逞しくなったなリン」
エンシェン・リン「会えて嬉しかったわナーヤさま」
ナーヤ・ガーヤ「素直に言うことを聞くとは思わなかったけどな」
エンシェン・リン「私、あなたのことちょっと好きだったの」
エンシェン・リン「この情報は内緒よ」
ナーヤ・ガーヤ「ちょっと大人になったからって何臭いこと言ってんだ・・・」
〇綺麗な教会
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(ちょっと早くついてしまったな)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(アゥルペロとワヌゥレンはまだみたいだ)
ナーヤ・ガーヤ「ルゥラッハ〜!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「な、なんでお前がここに!」
ナーヤ・ガーヤ「ちょっと用事があって」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺にお前との用事はない!」
ナーヤ・ガーヤ「な、なんか嫌われてる?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「そうだ!」
ナーヤ・ガーヤ「お、思いっきり言うじゃねえか・・・」
ナーヤ・ガーヤ「俺はこんなに好きなのに・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「は、離せ変態!」
ナーヤ・ガーヤ「本当に変態になってやろうかこの・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「離れろ気持ち悪い!」
ナーヤ・ガーヤ「わかった。なる」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ご、ごめんなさい! ならないでください!!」
ナーヤ・ガーヤ「ぅ・・・相変わらずかわいすぎる」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「・・・・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(いつまでこうしてればいいんだろう)
ナーヤ・ガーヤ「ルゥラッハ、結婚するって本当?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「え?」
ナーヤ・ガーヤ「俺、そんな情報知らなかったんだけど」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(何言ってるんだこの人?)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「もしかしてワヌゥレンのことを聞いたのか?」
ナーヤ・ガーヤ「ワヌゥレン? ・・・テルヌンドの国王と婚約者って聞いたけど?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ど、どこ情報だそれ! 婚約者候補ではあるらしいけど・・・!」
ナーヤ・ガーヤ「マジで言ってんのか! 候補ってなんの話だよ! そんな情報知らない!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「別にお前に言うことでもないし・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「んっ・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(え・・・え!?)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「な、何するんだ!!」
ナーヤ・ガーヤ「何って・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「なんでこんなこと・・・」
ナーヤ・ガーヤ「そ、そんなに泣くことないだろ・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(キスされた・・・キスされた・・・)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(初めてなのに・・・)
ナーヤ・ガーヤ「言っただろ? 好きなんだ・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「うるさい変態・・・俺はお前のことなんか嫌いだ」
ナーヤ・ガーヤ「そ、そうか・・・」
ナーヤ・ガーヤ「その・・・悪かった。むかついて」
ナーヤ・ガーヤ「ごめん」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(な、なんだ? この人? 俺の方が悲しいのに、なんで悲しそうな顔・・・)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「もういいから・・・帰ってくれないか」
ナーヤ・ガーヤ「本当にいいのか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「うん・・・」
ナーヤ・ガーヤ「じゃあ・・・」
ナーヤ・ガーヤ「もう一回・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「え!?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ん・・・んんんうううっ!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「バカッ!! キスしていいなんて言ってないッ!!」
ナーヤ・ガーヤ「くそ・・・かわいい」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄さま〜! お待たせしました! ベラと追加のお弁当を取りに行ってたの!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「アゥルペロ・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ま、まあお兄さま! 泣いてらっしゃるの!?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あ、あら? あなたは?」
ナーヤ・ガーヤ「わ、悪いお嬢さま・・・俺が泣かしてしまって」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄さまを泣かせるなんて──あなた一体!」
ナーヤ・ガーヤ「す、すまない」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄様が泣くなんてよっぽどのことがあったのね」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「一体何をしたの!」
ナーヤ・ガーヤ「その・・・キスを・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「・・・・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「き・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「・・・・・・」
ナーヤ・ガーヤ「お嬢さま?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ど・・・どう言うことなの? でも喜んではダメよアゥルペロ。お兄さまは悲しんでるのよ!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「よく見ると逞しくて素敵な方だわ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「コ、コホン・・・ あなたお名前は?」
ナーヤ・ガーヤ「ナーヤ・ガーヤ・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「普段は何をされているの?」
ナーヤ・ガーヤ「なんでこんなこと聞かれてんだ? 情報屋だ、単発の」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「”単発”・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたが噂の”単発”屋さんなのね!」
ナーヤ・ガーヤ「え? 噂?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「まあまあまあまあ! あなたが!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「アゥルペロ、そんな変態に近づくな」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄さまの唇を奪うだなんてなんて大胆なの!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄さまのどこをお好きに!?」
ナーヤ・ガーヤ「ひ、一目惚れで・・・ どこって言われても・・・しいて言うなら全部かわいいところ?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ひ、一目惚れ・・・全部!?」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄様は魅力的だから仕方がないわ! キスしたくなるのも仕方がありません!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「でも同意なくキスしてお兄さまを傷付けたことは減点です!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「でも鈍感なお兄さまへ大胆な行動でアピールすることは良し! 加点でプラマイゼロね!」
ナーヤ・ガーヤ「あの〜・・・何の話なんですか? お嬢さま」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「婚約者候補にエントリーしませんか? エントリー受付中なんです!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「私とお父さまが面接して最終的にお兄さまに選ばれた人がお兄さまの婚約者になるんです!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「いやだ! そんな奴は俺が願い下げだ!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ここまで嫌がるのも珍しいわ! ある意味意識されている証拠です! アピールの仕方を改めて挑戦なさって!」
ナーヤ・ガーヤ「エントリーさせてもらう」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「まあ・・・」
ナーヤ・ガーヤ「絶対に結婚する・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「やだ・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「やだやだ・・・」
ナーヤ・ガーヤ「結婚して俺が幸せにする!! 絶対に結婚して俺が絶対幸せにする!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「うるさいうるさいお前はいやだ!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ま、まあ・・・なんて大胆なの。大胆すぎてお兄さまがパニックを起こしているのかもしれないわ・・・」
ナーヤ・ガーヤ「好きだルゥラッハ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「いやだ!! 俺は好きじゃない!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「ど、どうしましょう・・・私一人じゃ決められないわ。お父さまに相談しなくちゃ」
ナーヤ・ガーヤ「俺のことを絶対に好きにさせてみせる!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「きゃあっ! 積極的すぎる、素敵だわ〜! 王さまに並ぶ・・・いやそれ以上の逸材ね!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「いやなんだってば!!」