コンカフェ嬢の流儀1.5〜異世界から、もえもえてん〜

ぽんたろう

第6話『臆病勇者来店』(脚本)

コンカフェ嬢の流儀1.5〜異世界から、もえもえてん〜

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〇巨大な城門
臆病勇者アルス「はあぁ」
偉い人「どうした、勇者よ」
臆病勇者アルス「あのー、やっぱり、行かないと・・・・・・」
偉い人「ん? なんか言ったか?」
臆病勇者アルス「あ、いえ、何も」
偉い人「ほら、気合い入れて 魔王討伐に行ってきなさい」
偉い人「さあ、行け! 選ばれし勇者よ!」
臆病勇者アルス「は、はい」

〇メイド喫茶
月「今日は確かイシーさんが 来てくれるって言ってましたね」
あみーな「最近、ほぼ毎日来てくれるよね」
月「今日も楽しみです」

〇闇の要塞
臆病勇者アルス「はああ ここに魔王がいるのか あっけなく辿り着いたな」
臆病勇者アルス「どうやって倒せばいいんだよ」
臆病勇者アルス「人付き合いが苦手だから 仲間も集められなかったし」
臆病勇者アルス「俺、魔法も剣術も苦手だぞ」
臆病勇者アルス「神のお告げで勇者にさせられたけどさ」
臆病勇者アルス「どうしよう」
成金貴族イシー(何だ? こんなところに人か?)
成金貴族イシー(まあ、いいか。ふれてんに行こう)
臆病勇者アルス「今の人って国1番の金持ちの人だよな」
臆病勇者アルス「なんで、こんなところにいるんだ?」
臆病勇者アルス「それよりも、今は魔王だ」
臆病勇者アルス「はああぁ」

〇メイド喫茶
成金貴族イシー「さっき、外に人がいたけど何なんだろうか」
月「そうなんですか?」
成金貴族イシー「鎧を装備していたから おそらく兵士かなんかだと思う」
月「魔王さんのところに用事があるんですかね」
成金貴族イシー「軍の偵察かもしれないから 放っておいた方がいい」
月「お仕事のお邪魔したらいけませんもんね」
月「わかりました」

〇闇の要塞
  翌日
臆病勇者アルス「どうするかなぁ」
臆病勇者アルス「明日にしよう うん、そうだ、明日こそ絶対中に入る」
成金貴族イシー(偵察も大変だな)

〇闇の要塞
  さらに翌日
臆病勇者アルス「数十年前に比べれば大人しいって聞くけど」
臆病勇者アルス「やっぱり魔王は怖いはずだよな」
臆病勇者アルス「だとすると、もうちょっと様子見しないとな」
臆病勇者アルス「・・・・・・」
臆病勇者アルス「なら、仕方ないよな 明日だ、明日」
成金貴族イシー(偵察に随分と時間をかけるんだな)

〇闇の要塞
  さらにさらに翌日
臆病勇者アルス「いっそのこと手下にしてもらうか」
臆病勇者アルス「四天王の座、空いてるって聞いたし」
臆病勇者アルス「どうせなら手土産ぐらい 持ってくれば良かった」
成金貴族イシー「ごきげんよう」
臆病勇者アルス「どうもです」
成金貴族イシー(意外と気さくなんだな)

〇闇の要塞
  さらにさらにさらに翌日
臆病勇者アルス「ていうか、もう帰んなくてよくね?」
臆病勇者アルス「意外とここ居心地いいしな」
臆病勇者アルス「魔王に見つかったら寝返ればいいし」
成金貴族イシー「ちーす」
臆病勇者アルス「うーす」

〇メイド喫茶
月「その人、ずっといるんですか?」
成金貴族イシー「悪いやつではなさそうだ」
月「とても仕事熱心な方なんですね」
月「うちのお店に来ないかなぁ」

〇闇の要塞
臆病勇者アルス「よし、決めたぞ!」
臆病勇者アルス「俺は、みんなを裏切る!」
臆病勇者アルス「そして、魔王の手下として 生きていくことにする」
臆病勇者アルス「魔王に挑んだところで勝てないし 戻る場所もないしな」
臆病勇者アルス「だったら、魔王の手下になるのが良策だ」
臆病勇者アルス「よし、じゃあ、入ろう」

〇メイド喫茶
臆病勇者アルス「失礼します」
月「おかえりなさいませ ご主人様」
臆病勇者アルス「『おかえりなさいませ』? 『ご主人様』?」
臆病勇者アルス「そして、この目がチカチカする空間は何だ?」
臆病勇者アルス(これが魔王か? いや、手下の者か)
臆病勇者アルス(突然入ってきたから私を 魔王と勘違いしたに違いない)
月「どうかなさいました?」
臆病勇者アルス「あ、いえ」
臆病勇者アルス(ここを突破しないと 先に進めないというわけだな)
臆病勇者アルス(ということは、この愛らしい少女が ここの番人なのか)
月「もしかして、ご主人様が ずっとお店の外にいた方ですか?」
臆病勇者アルス「は、はい」
臆病勇者アルス(やはり、気付いていた上で 俺を放置していたのか)
臆病勇者アルス(ということは、俺の目的も 分かっているはずだ)
月「長い間、偵察お疲れ様です」
臆病勇者アルス(お疲れ様だと?? 『お前のやっていたことは全て無駄だ』と 牽制しているということか?)
臆病勇者アルス(魔王め 初手から精神に揺さぶりをかけてくる)
臆病勇者アルス(どうやら、俺は試されているらしい)
臆病勇者アルス(そして、ここを突破しないと 魔王には会えないということだな)
月「では、こちらの席へどうぞ」
臆病勇者アルス「は、はい」
臆病勇者アルス(なぜ、席へ案内する)
臆病勇者アルス(私を試すのか?)
月「お飲み物はいかが致しますか?」
臆病勇者アルス「飲み物?」
月「こちらがメニュー表になります」
臆病勇者アルス「あ、どうも」
臆病勇者アルス(メニュー表? まるで店みたいだな)
臆病勇者アルス(しっかり料金まで書いてある)
臆病勇者アルス(つまり、何を注文するかによって 私の心理状態を試しているのかもしれない)
臆病勇者アルス「このボトルをお願いします」
臆病勇者アルス(まあまあ、高めのものを注文し 余裕があるところを見せつけてやる)
臆病勇者アルス(ここで動揺していては 手下にしてもらえないだろう)
月「かしこまりました」
ルティエル「すぐに準備いたします」
臆病勇者アルス(なんか、また1人増えた)
月「コンカフェは初めてですか?」
臆病勇者アルス(『コンカフェ』? 魔王城の別称のことか)
臆病勇者アルス「はい、初めてです」
月「初めて入るのに 勇気が必要だったんじゃありませんか?」
臆病勇者アルス「そうですね」
月「大体の方は、そうおっしゃるんですよ」
臆病勇者アルス「そうでしょうね」
臆病勇者アルス(魔王城に、勇気を必要とせずに 入れる者がいるものか)
臆病勇者アルス(そんなやつ相当アホだ)

〇上官の部屋
「ヘックション!」
成金貴族イシー「クシャミが出てしまった」
成金貴族イシー「きっと、ふれてんの子たちが 私の噂をしているな?」
成金貴族イシー「まったく金があると困ったもんだな」
  金があることで勘違いし
  勢いで突入した相当なアホがここにいた

〇メイド喫茶
ルティエル「お待たせしました」
ルティエル「こちらが、御注文の品になります」
月「どうぞ」
臆病勇者アルス(まさか、毒なんて入ってないだろうな)
臆病勇者アルス「いただきます」
臆病勇者アルス(おそらく、私の度胸を試しているのだろう)
臆病勇者アルス「・・・・・・」
臆病勇者アルス「美味しい」
月「良かったです」
臆病勇者アルス「一瞬、毒が入ってると思っちゃいましたよ」
月「そんなわけないじゃないですか」
臆病勇者アルス(この場の空気で忘れていた)
臆病勇者アルス(俺は酒が弱いんだった)
臆病勇者アルス「ウイィ」
月「もしかして、お酒弱いんですか?」
臆病勇者アルス「あ〜、いや〜、そんなことは〜」
臆病勇者アルス(さすが、魔王だ 酒を飲ますことによって 人の本性を見抜こうとしているんだな)
臆病勇者アルス(魔王の方が 1枚も2枚も上手(うわて)か)
月「差し支えなければ ご職業は何をされているんですか?」
月「やっぱり、兵士さんですか?」
臆病勇者アルス「いちおう、ゆうしゃ、やってまーす」
月「勇者さんなんですか?」
月「すごーい」
臆病勇者アルス「・・・・・・」
臆病勇者アルス「といっても、俺には 勇者の才能なんてないんです」
臆病勇者アルス「剣術もダメなら魔法も使えない」
臆病勇者アルス「その上、友達もいないし 人に話しかける勇気もない」
臆病勇者アルス「勇者に選ばれたのだって 神のお告げによって 強引に選ばれたからなんです」
臆病勇者アルス「本当は勇者なんてしたくなくて・・・・・・」
月「どうして、断らなかったんですか?」
臆病勇者アルス「昔から小心者で 相手を否定できない性格なんです」
臆病勇者アルス「あと周りの期待を前にしたら 断ることなんてできなかった」
月「そうだったんですね」
月「嫌なことは ちゃんと断った方がいいと思います」
臆病勇者アルス「でも、そんなことしたら なんて言われるか」
月「勇者さんはきっと優しいから 断れないんですよね」
月「でも、本当に嫌だったら 断らないと伝わりませんよ」
臆病勇者アルス「そうなのかな」
月「はい」
月「本当は自分に才能なんてないと はっきり言えば、いいんです」
月「そうしたら、きっと みんな納得してくれますよ」
臆病勇者アルス「なるほど」
月「正直に言えば 意外と事態は好転するかもしれません」
臆病勇者アルス「・・・・・・」
臆病勇者アルス「あなたの言う通りだ」
臆病勇者アルス「俺には力や才能なんてないって 正直に言おう」
臆病勇者アルス「そして、魔王討伐なんて嫌だって」
月「はい」
臆病勇者アルス「本当は魔王の手下になるために ここに入ったんです」
臆病勇者アルス「しかし、みんなを裏切るぐらいなら 本当の気持ちを正直に言った方が きっと気持ちは楽になると思います」
月「そうですよ」
臆病勇者アルス「ありがとうございます おかげですっきりしました」
臆病勇者アルス「俺、町に戻ります」
臆病勇者アルス「そして、勇気を出して 魔王討伐は無理だって告白します」
月「はい」
月「そうやって勇気を出せる人こそ」
月「本当の勇者ですよ」
臆病勇者アルス「俺が勇者?」
臆病勇者アルス「・・・・・・」
臆病勇者アルス「ありがとう」
臆病勇者アルス(どうやら、俺は不採用らしいな)
臆病勇者アルス(でも、ありがとう、魔王 大切なことを教わったよ)

〇巨大な城門
  それから、勇者アルスは町に戻り
  勇者の辞退を申し入れた
  最初は騒がれたが
  彼の真摯な気持ちと言動から
  同情的な声が集まり
  勇者を辞めることが許されたのだった

〇メイド喫茶
月「そういえば、 あの勇者さん、どうなったんだろ」
月「きっと上手くやってるよね」

〇メイド喫茶
  次回予告
  勇者に本当の勇気を教え
  勇者と魔王どちらも救った月
  しかし、次回、そんな月も
  祖父の意外な過去に驚愕するのだった
  次回『過去の因縁』
月「・・・・・・」
月「・・・・・・」
月「・・・・・・」
月「たまには、何も喋らない勇気」
月「次回も、もえもえてん!」

次のエピソード:第7話『過去の因縁』

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