第73話 夢の中(脚本)
〇ダブルベッドの部屋
2021年 イリノイ州 ピオリア郡 ピオリア市 パー・ア・ダイスホテル・カジノ 一室
斎王幽羅「『レッドスモーク』···?敵は確かにそう呼ばれてたの?」
鸞「あぁ、それに床が『異常な程傷ついていた』。高速移動の能力者の可能性がある」
すると斎王は眉をひそめながらキングにある事を聞き始める
斎王幽羅「キング···レッドスモークって人···俺が『6代目Xヒーロー』就任当時にいなかったっけ?」
キング「やっぱ居たよな?俺もなんかそんな奴居た記憶あってよ···」
キング「あいつどうしたっけ?辞めたんだったか?」
すると斎王の言葉に皆が顔を一斉に青ざめた
斎王幽羅「『死んだはず』···確か··· ··· ···『失恋』して飛び降りたんじゃなかったっけ?」
エンチャント魔導法士「おいおい待て待て!それが正しいなら鸞が会ったのは誰だ!?死人が蘇ったとでも言うのか!?」
斎王幽羅「ありえない···けどもし鸞が会ったのが俺とキングが知ってるレッドスモークなら···」
エンチャント魔導法士「いやいや···落ち着け?なにか間違ってるはずだ···あ、能力!お前達が会った事がある奴も高速移動できたのか!?」
斎王幽羅「できる。俺とキングが知ってるレッドスモークは『摩擦を操る能力』で」
斎王幽羅「赤い服を好んで着ていて、煙みたいに見える残像が赤いからそこから『レッドスモーク』ってあだ名がついたんだ」
鸞「変だな···確かに煙みたいな残像は出ていたが色は『緑』だったぞ」
エンチャント魔導法士「なら別の能力者じゃないか?WoOSは能力者の能力を保存できるんだろう?そいつから能力をとって移植したとか!」
斎王幽羅「でも死体は『燃やしたよ?』能力抽出には恐らくだけど『能力者の肉体が必要』なんじゃないかな?」
鸞「分からないところも多いな···ひとまず敵の探りを入れる為に斎王が言った通り『日常』を装うか」
そして斎王達はそれぞれの部屋に戻り、眠りにつく。
その夜··· ··· ···
〇実家の居間
■■ ■■の■
鸞がふと目を覚ますと、そこは見慣れた場所だった
鸞は自分が寝ていた場所からゆっくり起き上がりながら自身の武器の有無を確認する。当然武器などない事を理解すると
近くにあったティッシュ箱を手に取り立ち上がる。そして周囲を警戒しながら立ち上がると
『パスっ···』という畳を踏む音が聞こえそちらに顔を向ける。瞬間、鸞の首に鋭利な刃物が突きつけられ
相手は話し始める。相手は明らかに聞いたことのある声で鸞はそれを黙って聞いた
鶻「顔を向けるなと教えたはずだ。ただでさえ物音で注意が散漫になりやすいのになぜわざわざ顔を向ける?」
鶻「だからお前は未熟なんだ『雛鳥』」
そんな鶻に対して鸞は首に突きつけられた刃物を掴み、振り返り『言いたいことはそれだけか?』と
鶻に言い放つ
鸞「人の夢にわざわざ来て昔の修行のおさらいか?お優しい事だな」
鸞「要件はなんだ?何も無いなら『月にいる』母さんの所に行って、話でもしてくればいい」
鶻は短刀をしまい縁側に座る。鸞は警戒をしながらも、鶻の隣に座ると鶻は庭の池を眺めながら鸞に茶を渡した
鈴虫はリリンと鳴き、庭にはトンボが数匹飛び交う。池には数匹の鯉がゆったりと泳ぐこの情景
鸞は鶻に渡された茶を飲みながら、かつての修行場所である『実家』の風景を楽しんでいた
鶻「··· ··· ···雛鳥、よく聞け」
鶻も茶をすすりながらも鸞に言葉を投げる
鶻「『男として生きろ』。生殖器を作り替える術を教えてやるから、夢から醒めたら男の体に作り変えろ」
鸞はそんな鶻の言葉を拒否した。父親の言いなりになるのが嫌というのもあったがそれ以上に『強い思い』があった
しかし、そんな思いを感じたのか鶻は続けた
鶻「お前の『恋』は実らない。子宮も卵巣もないお前は相手を不幸にさせる」
鶻「それが例えあの『灰色の小僧』であってもだ、諦めて俺の言う通りにしろ雛鳥」
鶻「『男しての幸せ』を目指せ。俺も親父もそうしたようにな」
鸞はそんな鶻の言葉に対して一言返した
鸞「アンタは···『妥協で男』になったのか?」
鶻「なんだと··· ··· ···?」
鸞「女の姿じゃ幸せになれないから男の姿で生きようと『妥協』したのか?違うだろ」
鸞「アンタは母さんに出会って、一緒に過ごしていくうちに惹かれていった。そして···アンタは」
鸞「『誰の手も借りず』自身で術を編み出した。アンタが『情愛』で性別の壁を越えたように」
鸞「俺も『情愛』で愛の壁を超える。だからアンタに干渉される筋合いはない」
鶻「··· ··· ···頭の悪い雛鳥が···」
鸞「アンタと同じ『頑固で性格が歪んでる』んでね」
そして鶻は不機嫌そうにしながら鸞にある事を話す
鶻「雛鳥···お前『諱(いみな)忍術』を知っているか?」
鸞「知っている。だが未だに見い出せていない···俺は『鸞』だが得意とする物は炎だ」
鸞「本物の鸞の様に美しい羽もなければ、再生能力もない。アンタは···どうなんだ?」
鶻「諱忍術は通常の術とは違う術を自ら見い出し、真にその『名の通り』の物になる術」
鶻「俺は鶻だった。だからこそ俺は鶻の様に『一切の容赦なく、死角からの一撃』を放つ技を見出した」
鶻「鸞とは鳳凰の幼体、子供フェニックスだ。再生も蘇生も中途半端で未熟だが」
鶻「それ故の『強さ』がある。お前の中でそれを見い出せればお前だけの諱忍術が使えるだろう」
鸞「俺の中の···鸞··· ··· ···」
鸞の視界が霞む。視界がぼやける中鸞は鶻に問いかける
鸞「朝か···?クソッ···俺は斎王を守りたい···頼む··· ··· ···敵の事を教えてくれ···」
鶻は鸞を抱きしめ耳元で囁いた
鶻「『失恋から見出された負け犬達(ルーザーズ)』」
鶻はその一言だけを言うと鸞を離す。懐かしき情景はやがて闇に包まれ
鸞の意識はここでぷつんと途切れる。そして夜を越えた
to be continued··· ··· ···