花姫様と最強の冷徹騎士様

ちゅるちゅるめん

帰省と婚約(脚本)

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〇巨大な城門
モブ「なぁ、花姫様とどっかの王子が婚約するって本当か?」
モブ「きっと本当よ!あぁ、でもこの国から花姫様がいなくなってしまうのね」
モブ「なにがともあれ、姫様がどこかの王子と結婚してくれるのであればうちの国は安泰だねぇ」
モブ「花姫様がセイルージが狂い咲きする新たな春に婚約する、とても縁起が良いじゃないか」
モブ「!!お二人が出てきたぞ!」
国民「花姫様と王子さまだ!」
国民「綺麗なお方だなぁ、一体どこの国の方だ?」
  婚約の内容を国王が話した後に2人がにこやかに手を振ると、国民からは大絶賛の歓声が飛び交った
セゼル「・・・ねぇ、本当に良かったの?シャイローゼ様、本当に結婚してしまうわよ」
アレグラット「俺がどう思ったところで、変えられるものではない。それに、俺もそろそろ婚約を考えなければならない年だ」
アレグラット「いつまでもシャイローゼ様の傍にいるわけにはいかない」
アレグラット「というかセゼル、お前知ってたのかよ」
セゼル「私、あなたの姉の幼馴染よ?昔から見ているんだもの。知ってるというか、わかるに決まってるじゃない。・・・でも、そうね」
セゼル「私たちにどうこうできる問題ではなかったわよね」
アレグラット「あぁ、だから俺はこれでいい。シャイローゼ様が幸せなら、それでいいんだ」
セゼル「でもアルとシャイローゼ様が婚約することを願っている人は私以外にもいるのよ?」
アレグラット「・・・そんな変わり者がいるとは驚いた」
セゼル「特にダルメリヤス様よ。あの方は貴方にべったりだからね。大切な姉と尊敬する人が結婚するのなら嬉しいのでしょう」
セゼル「でも運命は残酷ね。そんなことになるためにはどれだけの運と努力、そして才がいるのか」
アレグラット「残酷ではない。"そういうもの"だからだ」
セゼル「・・・そうね。あぁそれからもう一つ」
セゼル「貴方に婚約の申し込みが届いてるみたいだけれど、実家に帰って確認した方がいいんじゃないかしら?」
アレグラット「──婚約はともかく、家には帰りたくなかったな」

〇城の廊下
アレグラット「では、しばらくの間失礼します」
シャイローゼ「えぇ、久々の帰省を楽しんできてね」
アレグラット(楽しむ、か)
シャイローゼ「──あなたの家の事情は大方聞いているわ。あぁは言ったけれど、中々楽しめないわよね」
アレグラット(父親から逃げるように離婚した母、俺への”教育”と他国の王子の世話をしてどこかへ消えた父、そして──)
シャイローゼ「でも、あなたのお姉さんはきっとアルの帰りを待っているわ。だから、きちんとただいまって言うのよ」
アレグラット「・・・はい、ありがとうございます。では僕はこれで失礼します」
シャイローゼ「そういえば、アルの父親はどこに行っているのかしら。あまり深く聞いていなかったわね」

〇レンガ造りの家
アレグラット(久々にみる、自分の家)
???「あら?」
アンダート「お帰りなさい、アル」
アレグラット「・・・ただいま、姉さん」
アレグラット「!!」
アレグラット「っ・・・!やはり、歓迎が荒いと思うのですが、この家は!」
バーズェラ「おかえり、アル君。前より反応が早くなってるね、成長していて嬉しいよ!」
アレグラット「お義兄さん・・・!」

〇豪華な部屋
アンダート「もう、許して?大事な弟の成長を確かめたかっただけなのよ」
アレグラット「それでわざわざ手合わせを中断して気配を消し、不意を狙ったと・・・」
バーズェラ「まぁそういうわけだ。そもそもこの家のやり方がそんなものだろう?」
  この2人は結婚している。義兄さんはこの家の現当主であり、姉さんはその妻だ。
  結婚の決め手がまぁなんとも姉らしく、『剣の腕が自分より強くて惚れた』かららしい
  義兄さんが婚約を受け入れた理由は『魔法の腕が自分より強い』からだ。似た者同士の結婚で、これがなかなか上手くいってるらしい
アレグラット(俺の周りは変人が多いな)
アンダート「それで、本題ね。アルに届いた婚約の申し込みについてなのだけれど──」
アレグラット「待って、この話は父さんも交えて話さなくていいの?」
バーズェラ「・・・お義父さんは、帰ってこないしね。それにこの家の当主は僕だから問題ないよ」
アレグラット「わかりました」
バーズェラ「これがこの家に届いた。・・・この紋がどこの家のものかは、アル君もわかるよね?」
アレグラット「はい・・・”蝶ケ夜家”ですよね」
アンダート「お姉さまの方は既に国王と婚約されていらっしゃるし、となるとお相手は妹の胡桃様になるわね」
アンダート「というかいつの間に胡桃様を射止めたの?アルにしてはやるじゃない!」
アレグラット「茶化さないでよ。俺達は恋仲でもないし、胡桃様の方からも伝えられていない。それなら政略結婚だろ」
バーズェラ「とりあいず開けてみて。僕たちもまだ開けていないから」
アレグラット「はい」
  (省略)
  アレグラット・カルウェリー殿に蝶ケ夜胡桃との婚約を申し込む。
アレグラット「予想した通り、かな」
バーズェラ「だが、身分の差が相当大きい。なにか大きな見返りとかは書かれていないかい?」
アレグラット「・・・蝶ケ夜家には武力が足りないので、そこを補えるだけの技量を持つ姫つきである僕を選んだそうです。そして1部兵の献上」
アレグラット(この家は王家に騎士として仕える風習がある。そのおかげか、この領地の兵も戦力が高い)
アレグラット(どの位の家にも劣らない武力を手にすることで、この領地は栄えてきたのだ)
アンダート「なるほどね、確かに納得。あの家、この前ただの山賊に相当手こずったらしいわね。アルがいたからどうにかなったらしいけど」
バーズェラ「それで当主を胡桃様にして、兵達の育成や指揮全般をアル君に任せたいってところかな」
アンダート「それにお相手は子爵家。伯爵家のうちと比べると相当上よ。しかも王妃の実家だから結婚すればうちもかなり安泰」
バーズェラ「正直、僕達としては受けてほしい話だけれど君の気持ちがわからない。・・・どうする?」
アレグラット「受けます」
「・・・え?」
アンダート「アル、それはこの家のため?」
アンダート「あなたは昔からお父様に苦しめられた。だからあなたにこれ以上望むことはない。だから無理に結婚しなくてもいいのよ?」
バーズェラ「そうだ、それに君はなんでそんな即答をできるんだい?」
アレグラット「僕は・・・彼女のことをお慕いしているからです」
アンダート「──アル」
アンダート「ちょっと、剣を持って表に来なさい」
アレグラット(あぁ、バレたか)
バーズェラ「・・・アル君、頑張れ」

〇原っぱ
アンダート「懐かしいわ、昔なにか揉めた時は剣でどっちがいうことを聞くか決めてたわね」
アレグラット「たしか五分五分だったはず」
アンダート「あら、私の方が勝っていたような気がするけれど?」
アンダート「・・・もうわかっていると思うけれど、今回も賭けをしましょう?私が勝ったら本当に彼女を好きなのかどうか教えてね」
アンダート「あなたが勝ったら今回の件は好きにして構わないわ。それともう1個、他に言うことを聞いてあげる」
アレグラット「言質、とったからな」
アレグラット(俺は親父から剣の稽古の時間を姉より多くされたにも関わらず、ほぼ姉と互角だった)
アレグラット(それはもう、才能の差としか言いようがないだろう。・・・昔は悔しいと思ってたのに、段々それすらなくなってきた)
アレグラット(ただ今回だけは負けられない)
バーズェラ「今回のは先に剣を当てた方が勝ちにしようかな。”魔法”を使う以外は、それ以外自由」
バーズェラ「君たちが魔法を使ったらここ一帯吹き飛ぶだろうからね・・・」
アンダート「異議なしよ」
アレグラット「同意」
バーズェラ「それでは両者構えて」
バーズェラ「・・・始め!」
「・・・」
  お互いの腹を探りあう緊張の瞬間、ほぼ同タイミングで2人は走り出した
アンダート「前より重くなったんじゃない?アル」
アレグラット「そりゃあ1人でもずっと稽古してきたからね。姉さんこそ前より構えが安定している」
アンダート「ふふ、随分と余裕があるみたいじゃない」
アンダート「でも、あなたは段々手元がブレているみたいね」
アンダート「なにか嫌なことでもあったのかしら?」
アレグラット「!!」
アンダート「わかりやすいわね、でも何かまでは聞かないであげる。後でたくさん聞いてあげるから!」
アレグラット「消えっ・・・下か!」
アンダート(いない、まさか上?!)
アンダート「っ!後ろかぁ・・・」
バーズェラ「そこまで!」
バーズェラ「アンダートの腕にアル君の剣が当たったので、今回はアル君の勝利だ」
アンダート(しゃがんだ体勢の私が見える視界には限度がある。わざと上に飛んで避けて視界から外れたのね)
アンダート(前はこんなことできなかったのに・・・)
アンダート「強くなったのね、アル」
アレグラット「ありがと、ただあんな下までいきなり消えられるのは初めてだよ。身体柔らかすぎない?」
アンダート「鍛えるだけじゃなくて、柔軟さも大事よ?思わぬ一撃を入れるチャンスも作れるしね」
アレグラット「覚えておくよ。・・・ヒールⅡ」
アンダート「ん、ありがとう」
アレグラット「・・・じゃ、約束通り俺は胡桃様との婚約を受けるから。後の手続きも自分でするよ」
アンダート「わかったわ、約束だものね。ちなみにお願いはどうする?」
アレグラット「・・・いつか使うよ」
バーズェラ「おつかれさま。随分と派手に動いたね。服も汚れてるし、1度身体を洗ってきな。切られてる部分はメイドたちに直したもらおう」
アンダート「ありがとう。素で私より強くなってるのも悔しいけど、なによりあの子はあれで幸せなのかしら」
バーズェラ「それは僕たちには分からない。でもあちらで幸せになれる可能性もあるじゃないか」
バーズェラ「彼の未来は僕達でどうこうできるものじゃない。影からそっと見守ろう」
アンダート「・・・そうね、ありがとう」

〇レンガ造りの家
  翌朝
アレグラット「じゃあ昨日はありがとう、またいつか帰ってくるから2人とも元気で」
バーズェラ「うん、次帰ってくるときは連絡してね」
アンダート「風邪に気をつけるのよ。それに仕事も頑張りすぎず、ほどほどに」
アンダート「・・・ねぇアル」
アンダート(他に好きな人がいるなら結婚はおすすめしないわ。お相手にも失礼だからね)
アレグラット「!!姉さん」
アンダート「ほら、早く行きなさい」
アレグラット「・・・行ってくる」
「行ってらっしゃい」
バーズェラ「ねぇ、さっきアル君に何て言ったの?」
アンダート「んー?・・・内緒。ただ、婚約はちゃんと考えなさいみたいな感じかしら?」
バーズェラ「そっか」
バーズェラ「じゃあ次帰ってきたときどう歓迎するか考える?」
アンダート「それもいいけれど、あなた、昨日の分の仕事溜まっているでしょ。私も手伝うから先にそっちね」
バーズェラ「あー...そうだった忘れてた」

次のエピソード:新たな道に向けて

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