渋谷と猫ときみ。

ウタツキ

渋谷と猫ときみ。(脚本)

渋谷と猫ときみ。

ウタツキ

今すぐ読む

渋谷と猫ときみ。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇駅のホーム
  今日は朝からツいてない。
  寝坊するし、跳ねた髪は直らない。時間がなくて朝ご飯も食べそこねた・・・
亜紀「もうっ!!」
  いつもはもっと空いているのに、今日に限ってぎゅうぎゅうの満員電車だ。
  奥の方は空いてそうなので、体を無理矢理押し込んだ。

〇広い改札
亜紀「はあ、疲れた・・・」
  なんとか渋谷で降りて、辺りを見回したけれど、目的の人は見つからない。
亜紀「いないかぁ・・・」
  時々電車で見かける素敵な人。今日はいないみたいだ。
亜紀「もう、ほんとツいてない・・・」
  あんまりゆっくりしていると遅刻してしまう。
  がっかりしながらも改札を出た。

〇渋谷駅前
  私の心とは裏腹に、空は気持ちの良い快晴だ。
  恨めしい気持ちになりながら、スクランブル交差点を渡り始めた。
亜紀「うわっ!?」
  交差点を渡っている最中に、何かが横切った。足下を見ると黒猫がいる。
  しかもしっぽを立てて、悠々と交差点を渡っている。
亜紀「これって不幸の前触れかも・・・」
  そう呟いてうちに、信号が青から黄色へと変わった。
  このままだと猫が渡りきる前に赤に変わっちゃう・・・!!
  猫を抱き上げて、急いで交差点を渡ろう。
  そう思って手を伸ばした時だった・・・

〇渋谷駅前
隆「おい、お前。 こんなところにいたら危ないぞ」
黒猫「にゃうっ」
  向こう側から来た男の人が猫を抱き上げた。
  どうやらその男の人も私と同じことを考えていたみたいだ。
亜紀「えっ・・・!?」
  よく見ると、その人は・・・
  いつも電車で見かけていた
  気になるあの人だった!!
  彼は私に気がついて、照れくさそうにはにかんだ。
  彼が私を見てくれた・・・!?
隆「君もコイツを助けようとしてたんだ」
亜紀「ふぁっ、はい・・・!!」
  へんな声が出てしまったことが恥ずかしくてたまらない。
  それ以上何も言えなくなってしまった。
  ふたりの間に無言が流れた。
  はっと気がついた。
  このままじゃ私たちも危ない!!
亜紀「あっ、あ、あの。 渡っちゃいませんか!?」
隆「おっと。そうしよう」
  ふたりと一匹で信号を渡りきった。
  ホッすると、今度はなんだか可笑しくなってきた。
亜紀「ふふっ」
隆「ははっ」
  彼も同じだったみたいで、どちらともなくふたりで笑い合った。
  彼は人通りの少ないところまで移動して、猫を降ろした。
隆「さあ、気をつけて歩けよ」
  猫は手を使って毛並みを整えると、興奮した様子でブンブンとしっぽを振った。

〇渋谷駅前
  私はその場の勢いで告白した。
  ・・・・・・なんていう勇気はもちろんなかったけれど。
隆「君、時々電車で見たことあるよ」
  彼がそう声をかけてくれたから、勇気をふりしぼって名前を告げた。
  彼も名前と高校、学年まで教えてくれた。
隆「その制服、妹の学校のだ。 君は何年生?」
亜紀「は、はい、私は・・・」
  そんな風に自然と話せるようになって、どんどんと会話がふくらんでいく。

〇渋谷駅前
  いつの間にか黒猫はいなくなっていた。
  不幸の前触れなんて思ってゴメンね。
  そして素敵な出会いをありがとう。
  彼とふたりで歩きながら、心の中でそう感謝した。
黒猫「にゃーん」

コメント

  • 黒このままうまくいけば黒猫ちゃんが恋のキューピットになるかもしれませんね♪朝の通学のひとときを恋愛ストーリーの序章としてうまくまとめてますね!

  • 渋谷界隈の電車はぎゅうぎゅうで疲れる感じに共感しました。それに乗り越えたからこそ,黒猫ちゃんが連れてきた出会えたのですね。

  • 猫が結んだ縁って素敵ですね!
    不幸どころか幸せを運んできてくれたんですから、お礼を言いたいところですね笑
    かわいいお話で和みました。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ