渋い谷ワンダーランド(脚本)
〇研究施設の屋上
・・・
〇路面電車の車内
谷(電車に乗って渋谷に向かっている途中)
谷(おれは気が付いてしまった)
谷(見て見ぬふりが一番いい)
谷(でも気になってしょうがない)
谷(同じ車内にいる どこにでもいそうなおじさん)
谷(そいつと全く同じ顔のおじさんがいる)
〇渋谷駅前
渋い谷ワンダーランド
〇路面電車の車内
谷(おじさん同士はまだ相手の存在に気が付いていないみたいだ)
周りを見渡す
谷(他に気が付いている人もいないみたいだ)
谷(これは教えるべきか?)
谷(いやいや、何をだよ?)
谷(「あの、すいません ドッペルゲンガーがいますよ」 とでも言うのか?)
谷(そもそもどっちがオリジナルなのかわからんし)
谷(まてまて 考えすぎだろ!)
谷(双子なのかもしれない)
谷(双子が悪ふざけでやっているだけかもしれない)
谷(ドッキリ?)
谷(どっかで撮影してるとか?)
谷(テレビとかのあれか?)
〇路面電車の車内
〇路面電車の車内
そっと周りを見渡す
谷(あ!向こうにいる女の子も 気が付いたみたいだ)
谷(そりゃ全く同じ人間が二人いたら そんな顔になるよな)
〇路面電車の車内
渋谷~渋谷~お出口は右側です
〇路面電車の車内
谷(渋谷に着いた!)
谷(おじさんたち二人も降りるみたいだ)
谷(ドッキリとかじゃないのか?)
〇渋谷駅前
Q「おい!」
Q「あんたさっきから何で俺を撮ってんだよ?」
A「いやいや先輩がお綺麗になっているもんですから、ついつい」
Q「そんなことしてねぇで、回収業者が来る前にさっさと計算しとけ」
A「イエッサー大佐!」
Q「今撮った奴は消しとけよ」
A「えー!!嫌ですよ!」
A「あんなごついゴリラみたいな男からこんな綺麗なお姉さまになった先輩の姿をこの時代の記録媒体で残しておきたいんです!!」
Q「は?」
〇渋谷駅前
谷(おじさんたちはお互いに絶妙な距離感で歩いているな)
谷(今日は前々から狙ってた渋いコートを買いに来ただけで、他に用事もない)
谷(追えるところまでは追ってみるか)
〇渋谷駅前
谷(!!)
スクランブル交差点に並ぶおじさん
おれは目を疑う
おじさんもう一丁追加
これで三人目
赤信号で縦一列で並ぶおじさん
青に変わるとおじさんたちは走りだした
おれも思わず走る!!
交差点を渡り終えると
おじさんたちはまた歩きだす
谷(なんなんだよ!?)
おじさん四人に増殖!!
四人は縦一列に絶妙な距離感で
渋谷の街を行進する
〇試着室
おじさんたちは洋服店の中へ
谷(しかも、おれが行こうと思っていた店)
谷(しかも五人になっているし)
谷(やれやれ)
五人のおじさんは一人ずつコートを持って五人で一つの試着室の中に入っていった
谷(しかもおれが買おうとしていたコート)
谷(店員に訊くと コートは在庫切れと言われたし)
谷(五人ともあのコートを買うとは限らないし)
谷(おれは待つ!待つでござる!)
谷(語尾がおかしくなったところで 話しかけられた)
谷(さっきの女の子だ)
白鳥沢レイコ「あの」
谷「はい」
白鳥沢レイコ「あのおじさんたちのこと 追いかけてましたよね?」
谷「そうですね」
白鳥沢レイコ「どうしてですか?」
谷「どうしてっていわれても・・・」
谷「気になって追いかけちゃったとしか・・・」
白鳥沢レイコ「何か知っているわけじゃないんですね?」
谷「ええ そうですね」
白鳥沢レイコ「変な話なんですが」
白鳥沢レイコ「あれわたしの父なんです」
谷「ええ!?」
白鳥沢レイコ「電車の中で父を見かけて」
白鳥沢レイコ「話しかけようと思ったら もう一人父がいるのに気が付いて」
白鳥沢レイコ「父が双子だというのも 聞いたことないですし」
白鳥沢レイコ「というか、もう五人になってますし」
白鳥沢レイコ「怖かったんですけど」
白鳥沢レイコ「つい追いかけてしまって」
谷「あの中に本物のお父さんはいるのかな?」
谷「電話してみたらどうかな?」
白鳥沢レイコ「そうですね」
谷(やれやれ)
女の子は電話をかけに店の外に出た
その間
試着室を見張る
女の子が戻ってきた
谷「どうだった?」
白鳥沢レイコ「今、母とご飯食べに行ってるみたいです」
谷「お母さんも一緒?」
白鳥沢レイコ「ええ、父と母と両方と話したんで 間違いないと思います」
谷「なんか言ってなかった?」
白鳥沢レイコ「関係あるかわからないんですが」
白鳥沢レイコ「父がやっているSNSのフォロワーが 今日、急に3000万人以上になったって」
谷「なんじゃそりゃ?」
白鳥沢レイコ「ええ。よくわからないですよね」
白鳥沢レイコ「あと、最近父は会社を辞めたんですけど」
白鳥沢レイコ「急に大金が入ったらしくて」
白鳥沢レイコ「父が言うにはDNA を売ったら大金が入ってきたって言ってました」
谷「うーん。どういうことなんだろう?」
谷「うわ!なんだあれ!?」
白鳥沢レイコ「!!」
〇SHIBUYA SKY
Q「次の予定チェックしときな」
A「オッケーです」
〇暗い洞窟
空が急に暗くなった
見ると街に巨大な穴が出来ている
その穴は広がりながら街を飲み込んでいる
すると試着室からおじさん五人が出てきた
おじさんたちはその穴へと走る
穴の中へ落ちていくと
穴は消えた
〇渋谷のスクランブル交差点
・・・
谷(うわぁ、意味わかんねぇ)
谷(コートはどうしたんだよ?)
〇映画館の座席
myth「情報資産の暗号化はしていましたが」
myth「今回は件はDNAの情報に変化が生じたせいだというのが委員会の見解です」
イザナギ「あっそ」
イザナギ「それよりぼくのリンゴ食べたでしょ!」
myth「知りません」
イザナギ「本当かよ!」
イザナギ「まぁいいや」
myth「それでは あとはよろしくお願いします」
Q「はいよ」
Q「セキュリティ穴だらけなんだよ」
A「先輩 ずっと気になってたんですけど」
Q「なんだよ?」
A「あの子供ってなんなんですか?」
Q「あれはただの物語だよ」
〇路面電車の車内
電車で向かいに座る女の子と目が合った
見覚えはない
谷(でもなんだか知っているような気がする)
隣に座るおじさんが言う
おじさん「きみたち二人は夢の中で会ったんだよ」
まもなく渋谷に到着します
お出口は左側です
渋い谷ワンダーランド
DNAを利用して人間のコピーをつくりだし,しかもそれに気が付いた人の記憶を夢へと変換させてしまうところがとってもミステリーで…面白かったです!
結果、ダイナミックな夢をみていた・・ということなのでしょうけど、現実と非現実が交差してとても興味深いストーリー展開だと思いました。DNAを売ることで、コピー人間が誕生したのは夢がありました。
作品世界にすごく引き込まれました。渋谷という舞台は、地方民からすると何か非日常なことが起こりそう、というか非日常と隣り合わせの場所と感じます。ですので、本作のようなことも、、、