エピソード2(脚本)
〇ビルの裏
情報屋「珍しいな」
情報屋「今日も女連れか」
桐生 優希「今日”も”?」
高木 誘作「余計なこと言わないでくれるか?」
情報屋「何でさ、俺は喜んでるんだぜ?」
情報屋「あんなに女っけなかった誘作にも、ついに春が来たってんだから」
情報屋「親友として喜ばしい限りだよ」
桐生 優希「誰なんですか、その女って!」
情報屋「嬢ちゃん、俺は情報屋だ」
情報屋「買うか?」
桐生 優希「買います!」
桐生 優希「えーっと、お金お金」
桐生 優希「あ、あれ? お財布どこやったっけ?」
高木 誘作「はぁ・・・」
高木 誘作「ほらよ」
桐生 優希「ああ! すいません!」
桐生 優希「後で絶対返しますから!」
高木 誘作「そういうんじゃないんだけど」
桐生 優希「それで誰なんですか、その女の人って」
情報屋「・・・・・・」
桐生 優希「あ、あれ? 何で黙っちゃうんですか?」
高木 誘作「ほらよ」
情報屋「・・・意外だな」
桐生 優希(喋り出した!)
高木 誘作「何がだ?」
情報屋「既に知ってる情報に金を払うとは」
情報屋「少し見ないうちに、金の使い方が下手になったな」
高木 誘作「だから違うって」
高木 誘作「俺は俺の知りたい情報に金を払ったまでだ」
情報屋「ほう」
情報屋「で、何が知りたい」
高木 誘作「兵藤高藁って男、知ってるか?」
情報屋「そりゃあ、知ってるさ」
情報屋「そこら中にポスター貼ってあるんだから、知るなって方が無理だ」
高木 誘作「そいつに営業かけたい」
情報屋「ほう、それはそれは仕事熱心なことだ」
情報屋「それとも、ノルマでもあるのか?」
高木 誘作「金は払った。もう冗談は止せ」
情報屋「なんて言われもな、さすがに直通の電話番号なんざ知らないぜ」
高木 誘作「お得意様がいるはずなんだ」
情報屋「そりゃあ政治家なんだ、いるだろうさ」
情報屋「お得意様の一人や二人」
高木 誘作「そういうんじゃなくて、裏の奴」
情報屋「・・・なるほどな」
情報屋「確かに兵藤の黒い噂は聞く」
高木 誘作「噂? 今、噂と言ったか」
高木 誘作「情報屋が聞いて呆れる」
高木 誘作「そんなの、ここにいる優希でさえ調べられたぞ」
桐生 優希「あ、あはは」
情報屋「そう噛み付くなよ」
情報屋「兵藤に後ろ暗い奴がいるってのは有名な話だ、それこそその嬢ちゃんでも知れるくらいにはな」
情報屋「だが考えても見ろよ、これだけ噂が流布しているのに奴は堂々と政界にふんぞり返ってるんだぜ?」
情報屋「どう考えてもヤバいだろ」
桐生 優希「た、確かに・・・」
高木 誘作「そんなことは百も承知だ」
情報屋「はぁ・・・」
情報屋「少しは自分の身を案じる気持ちはないのかね」
情報屋「この間のヤクザとはわけが違うんだぞ?」
高木 誘作「違うのか?」
高木 誘作「てっきり政治に関心を持つのはヤクザとばかり思っていたが」
情報屋「当たらずとも遠からずってところだな」
高木 誘作「・・・半グレか」
情報屋「ああ」
高木 誘作「どこのどいつを追えばいい」
情報屋「・・・頑固な奴だな」
情報屋「わかったよ、負けた負けた」
情報屋「榊 権藤(さかき ごんどう)って男を追え」
情報屋「俺から言えるのはそれだけだ」
高木 誘作「恩に着る」
情報屋「それには及ばん」
情報屋「俺はただ貰った金を返したくなかっただけだ」
高木 誘作「そういうことにしておくよ」
〇インターネットカフェ
桐生 優希「ネカフェでだなんて誘作さん」
桐生 優希「随分と大胆なんですね」
桐生 優希「僕、誘作さんを満足させられるよう頑張ります」
桐生 優希「だけど、声を抑えらえる自信がないので」
桐生 優希「まずは口づけから・・・」
桐生 優希「あの、無視はさすがに傷つくんですけど」
高木 誘作「静かにして」
桐生 優希「はい・・・」
桐生 優希「って、ええ!」
桐生 優希「どうしてマッチングアプリに登録してるんですか!」
桐生 優希「僕という存在がありながら!」
高木 誘作「静かにしてって言ったよね?」
高木 誘作「他の客に迷惑だから」
桐生 優希「はい、すいません・・・」
桐生 優希「でも、なんでマッチングアプリなんかに・・・」
桐生 優希「溜まってるなら僕がお相手するのに」
高木 誘作「あのね、さっきから黙って聞いてりゃ勘違い甚だしいけど」
高木 誘作「そもそも俺たちは今、榊って男を探してるんだからね?」
桐生 優希「そ、それはわかってますけど」
桐生 優希「それじゃあどうしてここに来たんです?」
高木 誘作「マッチングアプリってのはね、アダルト向けになるほど援デリ斡旋業者ってのが蔓延ってるんだよ」
桐生 優希「援デリ?」
高木 誘作「援交デリバリーヘルスの略」
高木 誘作「まぁ有り体に言えば、認可の受けてない風俗店ってところかな」
桐生 優希「違法じゃないですか!」
高木 誘作「そ」
高木 誘作「だから、不法者たちの手で経営されている」
桐生 優希「わかりました、それをしているのは半グレって人たちなんですね?」
高木 誘作「一概にそうとは言い切れない」
高木 誘作「もちろん、そういうこともあるけど違う場合もある」
高木 誘作「ただ、ヤクザでまだ昔気質の連中がトップにいるような組だったら」
高木 誘作「この節操のない仕事をシノギにするのをご法度にしていることがある」
高木 誘作「その分だけケツモチを半グレに頼んでいる可能性が、ぐんと高くなるんだ」
桐生 優希「な、なるほど?」
高木 誘作「・・・まぁ、これが一番半グレに接触しやすいんだって思ってくれればいいよ」
桐生 優希「直接、お店に行くんじゃダメなんですか?」
高木 誘作「言ったでしょ、認可のない風俗店なんだよ」
高木 誘作「店舗を持てないから、こうやってネット上で客を取ったりしてるの」
桐生 優希「なるほど」
桐生 優希「でも、言うほど簡単に見つかるようには思えないんですけど」
高木 誘作「いや、そうでもないよ」
高木 誘作「ほら、見てみ」
桐生 優希「わっ、わっ、すごい」
桐生 優希「すごい勢いでメッセージ来ますね」
桐生 優希「これ全部?」
高木 誘作「そ」
高木 誘作「あっちは数撃てば当たるの精神でやってるから、手あたり次第にメッセージを寄こしてくるんだよ」
高木 誘作「特に登録したては右も左もわからないカモであることが多いから、恰好の狙い目だ」
桐生 優希「しかも、随分と綺麗な方ばかりですね」
桐生 優希「女優みたいな人もいますけど」
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