エピソード1(脚本)
〇駅のホーム
〇広い改札
遅れる──!!
〇電車の中
間に合った
しかも座れる、幸せっ!
ご利用くださいまして
ありがとうございます──
この電車は○☓線直通、
渋谷行き──
乗客「ね、ご飯のあとヒカリエ行っていい?」
乗客「いいよ、俺も買い物したいし」
渋谷かぁ──
乗り換えで使うくらいで
ちゃんと降りたのすごい前かも
色々変わってそうだな
皆で渋谷のライブ行ったときは
楽しかったなー
あの映像、まだあったっけ?
どうしてるだろ、皆
・・・皆も、変わったんだろうな
〇ハチ公前
〇ハチ公前
「中村ちゃん・・・だよね?」
木崎「人違いならいいなと思ったんだけど」
木崎、失礼だな
木崎「いや、待ち合わせで カメラ構えてるほうが失礼だから」
まりな「おまたせー!」
派手だねー!
まりな「お兄の彼女の制服借りたの 目立つから良くない?」
木崎「似合ってるよ」
まりな「ありがと」
さすがまりな!
まりな「まあね〜ってかうけるね 中村ちゃん何でカメラ持ってんの?」
映画部の夏の課題用に撮ってるの
皆は主演ね
まりな「まりな。17歳」
まりな「得意料理は酢・ぶ・た」
R指定になりそうだからやめて
ぐんちゃん「遅れてごめん!」
ぐんちゃん!
先に着いてたんじゃ
ぐんちゃん「そうなんだけど、ハチ公が 見つからなくて」
ぐんちゃん「交差点の横にあるんだと思ってた」
ぐんちゃん渋谷初めてだもんね
じゃあ、揃ったところで
ライブいこっか!
〇ライブハウスのステージ
ボーカル「行くぜ渋谷ーー!」
ライブは最高だった
〇渋谷のスクランブル交差点
では皆、感想をひと言
ぐんちゃん「初の渋谷に感無量です」
真面目か!
まりな「楽しかったー!」
木崎「中村ちゃんも映れば?カメラ持つよ」
ぐんちゃん「大変、もう信号変わる」
まりな「走れー!」
〇渋谷のスクランブル交差点
もう随分昔のこと──
あのとき夢中になったバンドは
方向性の違いから解散したし
卒業してからは皆とも
会っていない
〇大きな木のある校舎
私達4人は同じ高校だった
とは言っても、クラスも部活も違い
普段一緒にいたわけではない
選択授業の科目が同じ美術だったのだ
まりな「勉強より絵のほうがマシ」
まりなは、絵が下手だった
木崎「デザインとかに興味あるんだよね」
木崎も、絵が下手だった
ぐんちゃん「私部活ばっかりで成績やばいんだ 美術で巻き返したいの」
ぐんちゃんは吹奏楽部の推薦で
群馬から上京してきた子だ
1番努力家だったけど
彼女の絵はこの時代には早すぎた
かくいう私も画力はなく
私達は美術クラスの
落ちこぼれとして仲良くなった
〇部屋のベッド
中村「懐っかしい映像!」
中村「・・・・・・」
連絡してみようかな、久々に
中村:久しぶり
今日高校のときに皆で行った
渋谷の動画見返して
懐かしくて連絡したよー!
──2時間後
やめときゃよかった
お!!
高野 美咲:久しぶり〜懐かしいね!
高野?
中村「あ、ぐんちゃんの本名だ」
木崎充:昔の自分がどんなこと
話てるのか怖いよ
皆元気?
木崎!
Marina:ねー、皆元気してるの?
久々に会おうよ
木崎:いいね、どこにする?
こうして私達は再会することとなった
〇ハチ公前
2週間後、渋谷──
木崎「中村ちゃん?」
中村「木崎!」
ぐんちゃん「あれ、中村と木崎?」
中村「ぐんちゃん!」
2人とも大人になったなぁ
中村「久しぶりだね!」
中村「2人は何食べたい?」
ぐんちゃん「私は何でもOK」
木崎「俺も」
ぐんちゃん「・・・・・・」
木崎「・・・・・・」
どうしよ
久々すぎて気まずいかも
まりな「久しぶりーっ!」
中村「まりな」
まりな「中村ちゃん丸くなった? なんかかわいい」
まりな「ぐんちゃんは大人びたね!」
まりな「木崎!?髪長ー! 似合ってるじゃん」
まりな「ウチはねー4歳の娘がいるの。ママなんだ!今度一緒に遊んで!」
まりな「実は去年離婚しちゃったんだけど今はまた素敵な彼氏ができたんだよ!話聞いて!」
ぐんちゃん「・・・あはは」
ぐんちゃん「まりな変わってないな」
まりな「えー、美女になったでしょ!?」
ぐんちゃん「なんか緊張感なくなった!」
ぐんちゃん「大人びたって言ってもらったけど 私今日も30分迷ったんだ」
ぐんちゃん「渋谷の駅、迷路かよ!?」
ぐんちゃん「って文句言いたくなったわ」
中村「相変わらず方向音痴だね」
木崎「それじゃ、見栄をはらずに」
木崎「安くてうまそうな居酒屋でも入る?」
中村「だね?」
ぐんちゃん「ね、それなんだけど」
ぐんちゃん「プラン決めずに渋谷歩くのはどう?」
木崎「お、楽しそう」
まりな「うちが案内するよ」
ぐんちゃん「なら決定!」
〇地下街
まりな「しぶちかでーす!」
ぐんちゃん「明日用に買って帰ろう」
木崎「これかわいいな」
中村「プレゼント?」
木崎「いや、俺の」
ぐんちゃん「木崎かわいいの好きだねー」
木崎「似合うからね」
〇SHIBUYA SKY
ぐんちゃん「え、えー?!」
ぐんちゃん「渋谷、今こんなとこあるの!?」
まりな「どうだ驚いたか? 2時間かけて来たかいがあったろう?」
ぐんちゃん「まりな様ーっ!」
木崎「何そのノリ・・・」
木崎「でもびっくりしたな! 渋谷はよく来るけどここは初めて」
中村「すごい」
中村「SF映画の世界みたい」
ぐんちゃん「中村もここ初めて?」
中村「うん」
中村「渋谷ってどんどん変わってくね」
まりな「まだまだ新しくなるよ」
中村「楽しいけど」
中村「ちょっと寂しいかも」
まりな「そう?」
まりな「変わるって楽しいじゃん」
まりな「それに」
まりな「変わってないとこもたくさんあるよ」
ぐんちゃん「私達みたいな感じか!」
木崎「皆大人になったようで 根は変わんないもんな」
ぐんちゃん「中村も今も好きなんでしょ? 映画」
中村「・・・うん」
中村「全然関係ない仕事について もういい大人なのに」
中村「まだ趣味で映画撮ってる」
中村「変われないんだ、私」
ぐんちゃん「別に良くない?」
まりな「そうだよ!好きなものなんて ずっと好きでいいじゃん」
木崎「心からそう思えるように 中村ちゃんも変わってみれば?」
中村「うん・・・」
中村「なんか、ありがと」
〇渋谷のスクランブル交差点
木崎「ここは変わらず混んでるね」
中村「そうだね」
よかったな、今日皆と会えて
また新しくなった渋谷に来よう
皆と
新しい自分と
まりな「そこの君たち このスマホで1枚撮って!」
学生「いいっすよ」
ぐんちゃん「ね、3.2.1渋谷ーっ! でポーズ取らない?」
木崎「うわ、ダサい」
学生「ださいっすね」
木崎「ほら、信号変わるぞ」
学生「撮りますよー」
学生「3」
学生「2」
学生「1」
中村「渋谷ーっ!」
〇渋谷の雑踏
じんわりと残る暖かさがありました。
大人になって外見が変わっても、意外と精神性は変わってなくて、いざ話し始めたらなんか安心する感覚…ありますね☺︎
そしてぐんちゃんの「時代が早すぎた絵」、気になりました…笑
学生時代の友達って、なんか特別ですよね。
時が流れても、こんな風に会って昔のように話し合えるって、とても素敵なことのように感じます。
「3・2・1・渋谷~っ!」って、ダサいんでしょうけど良いですね 笑
多くの人にとっては馴染みのある場所ではないからこそ、少し特別な思い出を受けとめてくれる懐の大きさがある街なのかもしれませんね
最後のスクランブル交差点の一枚絵、何気ないけど僭越ながら同じ作者目線で見ると凄く大胆な采配で、これをやるのは勇気がいるなと感じました
台詞も人物絵も無しだからこそグッとくる、色々な想いが巡るラストでした