好きの在処

夏名果純

第18話 約束の放課後(脚本)

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〇綺麗な一戸建て
水杉花奈「明日、2人に返事するよ。 放課後、屋上に来てくれる?」
川崎謙弥「! わかった。絶対に行く」
  花奈の言葉に一瞬目を見開くと、謙弥は覚悟を決めたようにうなずいた。
水杉花奈「うん、お願いします」
  花奈もその視線をまっすぐ受け止めて、うなずき返した。

〇ファンシーな部屋
  帰宅した花奈は、すぐ修司にもメッセを送った。
水杉花奈「『明日の放課後、屋上に来てくれる?  2人に返事したいと思います』」
  すぐに、修司からも返信がきた。
  修司『わかった。行くよ。待ってる』
  修司の返事を見て、花奈は深呼吸する。
水杉花奈「・・・あ!」
  それから、カレンダーを見てふと気づいた。
水杉花奈(明日は7月18日・・・、ちょうど階段から落ちた日から1か月後なんだ)
水杉花奈(1か月も返事が遅れちゃったけど、明日こそ2人にしっかりと気持ちを伝えよう!)

〇ファンシーな部屋
  その日の夜、花奈がもう寝ようとした時。
  スマホが鳴った。
水杉花奈(こんな時間に電話・・・?)
水杉花奈「あっ、謙弥!? ・・・もしもし?」
川崎謙弥「おう。遅い時間に悪ぃな。 今、大丈夫だったか?」
水杉花奈「いいけど、どうしたの?」
川崎謙弥「今からって出てこれねぇか?」
水杉花奈「えっ? もうパジャマなんだけど」
川崎謙弥「そこをなんとか、頼む!」
水杉花奈「・・・ちょっと待ってくれる?  着替えてすぐ出るから」
川崎謙弥「サンキュ!  お前ん家の前で待ってる」
水杉花奈(・・・謙弥って強引なとこあるけど、こんな夜遅くに呼び出しって初めてだな)
  花奈は急いで着替えて身支度すると、静かに家を出た。

〇一戸建て
  外に出ると、謙弥が軽く手を上げた。
川崎謙弥「よう、いきなり悪いな」
水杉花奈「どうしたの?」
川崎謙弥「いいから、ちょっと付き合ってくれ」
  それだけ言うと、謙弥は1人さっさと先を歩いていく。
水杉花奈「あっ、ちょっと待ってよ!」

〇街中の公園
  花奈が謙弥の後をついていくと、たどり着いたのは近くの児童公園だった。
川崎謙弥「ここ、ガキの頃、よく遊んだだろ」
水杉花奈「うん、そうだね。 でも・・・どうして、ここに?」
  花奈が戸惑いの目を向けると、謙弥はようやく花奈に向き直って言う。
川崎謙弥「いや、明日、返事が聞けるんだなって思ったら、なんかいても立ってもいられなくなって」
川崎謙弥「それまでに、もう少し花奈と一緒にいたくなったっつうかなんつうか・・・」
  謙弥のしどろもどろな言葉に、花奈はゆっくりとうなずいた。
水杉花奈「うん、なんとなくわかる」
川崎謙弥「えっ?」
水杉花奈「自分で返事するって決めておきながら、そわそわしてる」
水杉花奈「だって、2人とも大事な幼馴染みだってことには変わらないから」
  花奈の言葉に、謙弥は神妙な顔つきになる。
川崎謙弥「・・・ああ。明日で今までとは変わっちまうんだって思ったら、そわそわするよな・・・」
川崎謙弥「まあ、告白したのは俺の方なんだけどよ。 いや、元はと言えば、修司が一番に言いだしたことか」
川崎謙弥「まあ、修司の気持ちもわからなくはねぇけど」
水杉花奈「うん・・・」
川崎謙弥「だから、上手く言えねぇけど、幼馴染みっていう関係のうちに、花奈とまたここに来たかったんだよ」
川崎謙弥「急に思いついたことだけど」
水杉花奈「そっか。 それなら・・・誘ってくれてありがとう」
  花奈が控えめにお礼を言うと、謙弥はニカッと笑った。
川崎謙弥「おう! こんな遅い時間に呼び出すなって怒られるかと思った」
水杉花奈「それはちょっと思ったけど」
川崎謙弥「だって、今夜しかなかったんだよ。 許してくれ!」
  顔の前で大げさに両手を合わせる謙弥に、花奈は小さく笑った。
水杉花奈「・・・うん、そうだね」

〇教室
  7月18日(木)
  いよいよ、明日で1学期も終わり。
  今日はホームルームと大掃除のみで、午前中には学校も終わる。
  教室に入ってすぐ、花奈は明日香の姿を見つけた。
水杉花奈「明日香、おはよう!」
松木明日香「花奈、おはよう。 ・・・あれ? なんかいつもと違うね」
  顔をのぞき込むようにして明日香に言われ、花奈は首をかしげる。
水杉花奈「えっ、そう?  別に、いつもと一緒だと思うけど」
松木明日香「でも、なんか雰囲気が違うよ?」
水杉花奈「! 何か伝わってる? 実は今日──」
松木明日香「そっか、伝えるんだね、2人に花奈の気持ちを」
  明日香は花奈が全部を言い終わる前にうなずいた。
水杉花奈「うん! 明日香、いろいろありがとね」

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