01:女の子になろう(脚本)
〇大広間
――ナ・・・・・・
誰だろう。
誰かがぼくを呼んでいる気がする。
な?
ナーシャ?
なに。
誰かの声が、気配がなんだか、すごく懐かしいような。
此処は・・・・・・
・・・・・・知らない。
屋敷?
の中。
行七夏々都((何処、だっけ。・・・・・・どうして、此処に、居るんだ?))
懐かしい。
──広い庭と、シャンデリア。薄暗い廊下、背丈の倍ありそうな、大きな棺桶。
ぼくは宝箱だと、思ってて・・・・・・
あれ?
わからない。何をいってる?
妙に甘い硝煙の匂い。
砕けた壁の、土と砂埃のにおい。
遠くの方にブロンドの女の人が居る。
ぼくは、だって、何か・・・・・・何だ?
あれ?
「そっか、ぼくは――――」
な・・・・・・なと、――ななと
〇走行する車内
佳ノ宮まつり「夏々都君!!」
目を、覚ます。
車内の天井が見える。
行七夏々都「・・・・・・、寝て、たのか」
随分眠っていた気がするが、そういえば今日はまつりとルビーたんと一緒に食事に行っていたのだったか。
すぐ横で、まつりが、きょとんとぼくを見降ろしている。
佳ノ宮まつり「おはよ。よく眠れた?」
行七夏々都「おはよ」
返事をしながら体を起こす。
えーーと。
寝起きが悪い方なので、まだ混乱しているけど・・・・・・
今車が停止しているという事は家に着いたって事に違いない。
いつまでもご厄介になっている場合じゃないだろうし、
目的地に着いたら、早く降りなくては叱られそうだ。
行七夏々都「すみません、すぐ、降りま・・・・・・」
ドアに手を掛け、ふと違和感を覚えた。
――ん?
なぜ、まつりは降りようとしない?
もしやガソリンでも入れに行ってるんだろうか。
それとも、ルビーたん辺りが寄り道しているのかなどと呑気に考えていたぼくはなんとなしに窓の向こうを見る。
「・・・・・・」
〇西洋の城
行七夏々都「・・・・・・」
城が、聳え立っている。
和風ではなく、西洋風。
左右と真ん中の棟があり、その奥に宿舎があるような、あの城。
ガラス越しに、入口を囲む立派な門が見える。
施設名が彫られていたので目を凝らして見つめた。
――――■■学園
生徒さんに迷惑が掛かってしまうので、仮にK学園しておくが、名前からして恐らく、佳ノ宮系列の学園名。
行七夏々都「さすがに、変なホテルとかじゃなさそうだけど・・・・・・」
佳ノ宮まつり「ホテルに行きたかったの? 今度一緒に行く?」
まつりはきょとんとしている。
確かに寝たいという意味じゃ寝不足なぶん今から部屋で寝直したいよ。
膝枕もいいけど、やっぱり柔らか素材の枕じゃないと熟睡出来ないし。
それで、そうだな、添い寝くらいならしてやっても・・・・・・って、
行七夏々都「そうじゃなくて。どこなんだ、此処?」
訊ねると、まつりは笑みを浮かべた。
佳ノ宮まつり「此処は佳ノ宮財閥があった頃からの歴史ある伝統の女学園なんだ」
じょ・・・・・・
行七夏々都「女学園!?」
〇王妃謁見の間
幼馴染、まつりの実家である佳ノ宮家は、
巨大勢力で、社会の暗部であるのと同時に、昔でいう財閥を持っていたとか、親類が貴族とか・・・・・・いろいろと壮大な家系だ。
内部には軍人が多かったのもあり、古き考えというか、男尊女卑の傾向が強かったといわれている。
その場所の異様さを目の当たりにしてきたぼくに、女学園があるという事実は、なかなか受け入れがたいものだった。
〇西洋の城
佳ノ宮まつり「確かにあそこは、ガチで学問を『男性のもの』と言い切っているよ」
佳ノ宮まつり「勿論、学問だけじゃなくて研究とかも、頭を使う仕事は全部男性がすべきで複雑な分野程男性と決めてかかってる」
尚更に、女学園なんか建てそうな印象がないんだよな・・・・・・
佳ノ宮まつり「いやぁ、あのガチさは、一般人が引くくらいすごいからね」
佳ノ宮まつり「ちょっとレポートが上がって、名前が女性っぽかったら、ガチっぽい男性名に書き直すもん」
何度も頷きながら、苦労を語るまつり様。まつりもなんかあったんだろうか。
佳ノ宮まつり「だから、そりゃもう、いろいろ、あったんだけど」
まつりは感慨深そうだ。
佳ノ宮まつり「先人たちの計り知れない、物凄い苦労があるんだよ」
行七夏々都「そ、そうか・・・・・・偉大な創立者なんだ」
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