好きの在処

夏名果純

第11話 謙弥とデート(脚本)

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〇駅の出入口
  7月13日(土)
  翌週の土曜日は謙弥とのデートだった。
  謙弥はなぜか、待ち合わせ場所を「駅前で!」と指定してきた。
川崎謙弥「よう!」
  花奈が向かうと、そこにはすでに謙弥の姿があった。
水杉花奈「待たせちゃった? でも、なんで駅なの?」
水杉花奈(家、隣なのに・・・)
川崎謙弥「だって、この方がデートっぽいだろ!」
  そう言う謙弥はやけにご機嫌だ。
水杉花奈「もしかして謙弥、デートごっこがしたかったとか?」
  花奈が不思議そうに首をかしげると、謙弥はがっかりしたように顔をゆがめる。
川崎謙弥「ごっこって・・・。違ぇよ。 花奈とデートがしたかったんだっつうの」
水杉花奈「家から一緒に行った方が長く一緒にいられるのに」
川崎謙弥「・・・あ、それもそっか」
  謙弥は小さくつぶやき、なぜかわずかに頬を緩めた。
水杉花奈「えっと、謙弥?」
川崎謙弥「いや、花奈からそういうこと言われるとは思ってなかったから・・・」
水杉花奈「そういうことって・・・あっ、別に深い意味はなくてっ!」
川崎謙弥「いや、まあそうだろうなとは思ったけど・・・」
川崎謙弥「って、こうしてる場合じゃなかった!」
川崎謙弥「早く行かねぇと遅れる!」
水杉花奈「ねえ、今日はどこへ行くの?」
水杉花奈(謙弥、当日のお楽しみだって言って教えてくれなかったんだよね)
川崎謙弥「どこに行くかは着いてからのお楽しみだ。 ほら、急ぐぞ!」
水杉花奈「まだ教えてくれないのー?」
水杉花奈「・・・って、ちょっと待ってよ!」
  走り出した謙弥の後を、花奈は慌てて追った。

〇綺麗なコンサートホール
水杉花奈「ここって・・・」
  連れてこられたのは、とあるホールだった。
  見ると、『サマークラシックセレクション』と書かれている。
水杉花奈「もしかして、クラシックコンサートとか?」
川崎謙弥「正解!」
水杉花奈「えっ、なんで?  謙弥、クラシックに興味なんてあったっけ?」
水杉花奈(私はあんまりないけど・・・)
川崎謙弥「だって、デートだろ」
水杉花奈(またそれ・・・)
川崎謙弥「とにかく入ろうぜ!」
水杉花奈「そうだ、チケット代って・・・」
水杉花奈(立派なホールだし、いいお値段がするんじゃ・・・)
川崎謙弥「いいって。実は安く手に入ったんだ。 だから、気にすんな」
水杉花奈「そうなの? ありがとう」

〇劇場の座席
  花奈と謙弥が席に着くと、すぐに照明が落ちて公演が始まった。
川崎謙弥「ふー、セーフ!  ギリギリだったな」
水杉花奈「しーっ!」
川崎謙弥「おっと・・・」
  演奏者や指揮者が出てきて演奏が始まる。
水杉花奈(わっ、すごい迫力!)
水杉花奈(こうして、プロの演奏を聴くのって初めてかも・・・)
川崎謙弥「・・・・・・」
  隣をちらりとうかがうと、謙弥も真剣な表情で前を見つめているように見えた。

〇綺麗なコンサートホール
  コンサートが終わった頃には夕方になっていた。
川崎謙弥「あー、よく寝た!」
  謙弥は大きな伸びをして、両肩を拳で交互にたたいている。
水杉花奈「謙弥ってば・・・」
  花奈と謙弥が演奏に聴き入っていたのはせいぜい、最初の15分ほどだった。
  すぐに謙弥が船をこぎはじめ、花奈もウトウトしてきてしまった。
  終盤なんて何の曲を演奏していたのかも知らず、時折、音量が大きくなると2人してビクッと起きるだけだった。
水杉花奈(私も一緒だから、謙弥に何も言えない・・・)
川崎謙弥「ちょっと待ってくれ・・・」
  謙弥は途中で立ち止まると、スマホで何か検索し始めた。
水杉花奈「何?」
川崎謙弥「やっぱり間違えたな。 俺たちはこっちだな!」
  しばらくして、謙弥が花奈にスマホの画面を見せる。
  映っていたのは遊園地だった。
水杉花奈「あっ、ワンダーランド!」
  決して大きなテーマパークではないが、比較的近くにある地元の遊園地だ。
川崎謙弥「ちょっと時間が遅いけど、ナイト営業もやってるみたいだし、行ってみるか?」
水杉花奈「うん、行こっか!」
  花奈も遊園地は久しぶりなので、うれしくなってうなずいた。

〇遊園地の広場
  ワンダーランドは夕方になっても、ほどよくにぎわっていた。
水杉花奈「わあ、久しぶりだなあ!」
川崎謙弥「この遊園地、修司も一緒によく家族で連れてきてもらったよな」
水杉花奈「修司がジェットコースターで泣き出したり」
川崎謙弥「花奈がお化け屋敷でビビッて動けなくなったり」
水杉花奈「謙弥がミラーハウスで思いきりおでこを鏡にぶつけたり」
川崎謙弥「ハハッ、いろいろやっちまってるな、俺たち」
水杉花奈「うん、本当だね」
川崎謙弥「今日はどうする? なんか乗りたいのあるか?」
水杉花奈「じゃあ、せっかくだからお化け屋敷にリベンジしたい!」
川崎謙弥「大丈夫か? お前、いまだに超怖がりだろ」
水杉花奈「でも、さすがに小学生の時とは違うよ!」
水杉花奈「いい加減、お化け屋敷を克服したいんだ。 付き合ってくれる?」
川崎謙弥「・・・おう、そういうことならわかった! 俺がついてるから安心しろ」
水杉花奈「うん!」

〇お化け屋敷
水杉花奈(勢いであんなこと言ったけど、ついに来ちゃった・・・)

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