7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

エピソード5(脚本)

7月6日のスタンド・バイ・ミー

YO-SUKE

今すぐ読む

7月6日のスタンド・バイ・ミー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇漁船の上
秋山大二郎「・・・よっと!」
  秋山大二郎が、たくましい二の腕を出しながら、大量の魚を船に引き上げている。
  その様子を眺めつつ、思わず感嘆の声を漏らす裕介。
秋山裕介「っわ〜、じいちゃん、大量じゃん!」
秋山大二郎「例年より少し多いくらいだ。 騒ぐほどのもんでもない」
  そう言って、大量の魚を船上に引き上げる大二郎。
秋山裕介「でもアブラコにソイに、カジカ・・・あっ、アメマスも混ざってるよ」
秋山大二郎「サクラマスほどじゃないが、刺身にすればアメマスも旨いぞ」
秋山裕介「アメマスの刺身かぁ〜、おいしそう!」
秋山大二郎「陸に上がるまで待ってな。 好きなだけ食わせてやっから!」
秋山裕介「うん、わかった!」

〇黒
  漁師だったじいちゃんは、俺のヒーローで、知らないことは何にもなかった。
  海でも山でも酒場でも、俺はじいちゃんについて回って、いつもいろんなことを教わったんだ。

〇山の中
「・・・・・・」
伊藤伸生「で、どうする?」
井戸端学「まずはこの缶詰を開けないと」
伊藤伸生「だが缶切りがない。それと、もう日が暮れているっていうのに火もない」
井戸端学「困ったねえ」
秋山裕介「困ったねえ、じゃねえ!」
秋山裕介「缶詰持ってきて缶切りがない上に、ライターもなくて、どうやって夜を明かすんだ!」
井戸端学「なんだよ、全部俺に任せきりなのがいけないんじゃないか!」
伊藤伸生「火がないと狼が来るな」
井戸端学「狼いんの!?」
秋山裕介「いるか!」
秋山裕介「伸生も真顔で冗談言うな! お前がいうと妙にリアリティあんだよ!」
井戸端学「スマホは?」
伊藤伸生「圏外だな。さっきは一瞬電波があって、辛うじてメールはできたけど」
秋山裕介「仕方ねえな。 ちょっとお前のリュック漁るぞ」
秋山裕介「お菓子、トランプ、アイマスクって・・・お前、アウトドア完全に舐めてるだろ」
井戸端学「だってわかんなかったんだもん」
秋山裕介「ん? 待てよ。 これは使えるか」
伊藤伸生「乾電池? とそっちは・・・」
井戸端学「100円ショップで買ったの。お店の人が、お皿洗うときとかに便利ですよって」
秋山裕介「こいつとこいつをこすり合わせると」
  乾電池の電極に、スチールウールをこすりあわせる裕介。
  何度かこすり合わせると、パチっと火花が飛び散る。
井戸端学「おおっ! すげー」
秋山裕介「早く、紙か何か持ってこい!」

〇山の中
「いただきます!」
井戸端学「うーん、缶詰うめえ!」
伊藤伸生「にしても、これはあっさり空いたな」
秋山裕介「こんなもんスプーンひとつで充分だ。細かく削って、穴を開ければあとは簡単だ」
伊藤伸生「見直した。 本当に裕介はアウトドアの天才だ」
井戸端学「裕介のじいちゃんの直伝だもんな!」
秋山裕介「・・・・・・」
井戸端学「あっ、ごめん」
秋山裕介「気にすんな、もう平気だよ」
伊藤伸生「・・・・・・」

〇山の中
  眠っている学の隣で、焚き木を囲っている裕介と伸生。
  焚き木の火が消えかける。すると、裕介が器用にパタパタと風を送り、火を調整する。
伊藤伸生「うまいな、裕介」
秋山裕介「こいつも、じいちゃんの直伝だからな」
伊藤伸生「・・・もう1年になるんだな。裕介のじいちゃんが亡くなってから」
秋山裕介「じいちゃん、漁師だったけど、海でも山でも、いろんなとこ連れてってくれたし、いろんなこと教えてくれた」
伊藤伸生「・・・やっぱ、寂しいか?」
秋山裕介「別に」
伊藤伸生「・・・・・・」
秋山裕介「だって、今は自分の足でどこへだって行ける」
  積み上がっている空の缶詰に向かって、石を投げる裕介。
  石は缶詰のギリギリ横をかすめて、ころころと転がっていく。
秋山裕介「ちぇっ、はずれか」
伊藤伸生「・・・・・・」
伊藤伸生「やっぱりボクと違って、裕介は大人だな」
秋山裕介「大人? 俺が?」
秋山裕介「いまだかつて誰からも言われたことねえぞ。 みんな精神年齢5歳とか言うんだから」
伊藤伸生「それはみんなが裕介を知らないだけだ」
秋山裕介「どうかしてるぞ、伸生。いつもは率先して、俺のことをガキだと言うくせに・・・」
伊藤伸生「はは、そうかもな」
秋山裕介「はははっ」
秋山裕介「・・・あ、でも」
伊藤伸生「どうした?」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード6

ページTOPへ