〇明るいリビング
　　それは、長女が６歳を迎える
　　12月のことでした。
咲良 綾「星ちゃん、誕生日プレゼントは自転車にしようと思ってるけど、どう？」
星奈「うん、いいよ！ おもちゃはサンタさんに頼んだし」
咲良 綾「じゃあ、自転車屋さんに行こうね」
空「じてんしゃやさん？」
咲良 綾「アイスクリーム屋さんの近くだから、 帰りにアイスクリーム買おうか」
空「アイスクリーム！」
星奈「やったー！」

〇自転車屋
店員さん「大きさ的にはこの辺の自転車ですね」
咲良 綾「星ちゃん、どれがいい？」
星奈「紫のがいい！」
店員さん「試しに乗ってみましょうか」
空「・・・」
店員さん「ん？　どうかした？」
空「ハゲ！」
　　え？
空「ハゲー！」
　　空気が　凍る・・・！
咲良 綾「空ちゃん！　やめなさい」
店員さん「は、はは・・・」
空「ハーゲー！」
　　どこで覚えたの？　完全に予想外
　　
　　なんて言って止めればいいの
　　失礼でしょって言うのも失礼な気がする
　　
　　どうしよう　待って　どうしよう
空「ハゲー！」
　　口を！
　　
　　閉じて！
　　
　　お願い！
咲良 綾「す、すみません・・・！」
店員さん「はは・・・いいですよ・・・」
空「ハゲぇー！」
　　ああああ、やめて
　　もうやめて────!!!!!!!

〇幻想空間
　　心に刺さった小さなトゲが、
　　今も疼（うず）くのです。
　　店員のおじさん、忘れてるといいな──