アパルトとヘイト

山縣将棋

アパルトとヘイト4(脚本)

アパルトとヘイト

山縣将棋

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〇個別オフィス
アパルト ヘイト「今日も海の見張り頑張って来ますね!」
ロベルト「うむ。・・・アパルトよ」
アパルト ヘイト「はい?」
ロベルト「えっとな、言いにくいのじゃが・・・」
アパルト ヘイト「何です?言って下さい」
ロベルト「今月をもって仕事の契約が終わる」
アパルト ヘイト「えっ!」
ロベルト「元々、夏限定での契約じゃったからのぉ〜 仕方ないわい」
アパルト ヘイト「・・・分かりました」
ロベルト「お、落ち込むなアパルト! 仕事なんてまた直ぐに見つかるわ!」
アパルト ヘイト「ですね──」

〇海水浴場
アパルト ヘイト(この仕事も今月で終わりか・・・)
アパルト ヘイト(終わりって突然来るんだな)
バラク「お兄ちゃん、助けて!ケンが溺れてるんだ!」
アパルト ヘイト「案内して!」

〇海岸の岩場
バラク「お兄ちゃんはやく!」
バラク「ほら!あそこに!」
アパルト ヘイト「僕が来たからもう大丈夫!」
バラク「どうしたの?お兄ちゃん?」
アパルト ヘイト「あれって・・・」
バラク「ペットのケンだよ!」
アパルト ヘイト「・・・」
バラク「はやく助けてケンが死んじゃうよ!」
アパルト ヘイト「もがくから苦しいんだよ、目を閉じて受け入れてしまえば楽なのに・・・」
アパルト ヘイト「南無阿弥陀(なむあみだぶつ)」
バラク「お兄ちゃん何言ってんの?」
アパルト ヘイト「死ぬって事は突然来るんだろうね・・・」
バラク「ねぇ!はやく助けてよ!」
バラク「それとも、僕が黒人だから、ケンを助けてくれないの?」
アパルト ヘイト「今、助けるよ!」
バラク「ありがとうお兄ちゃん!」
バラク「ケンもお礼を言ってるみたい!」
アパルト ヘイト「ハハッ。どういたしまして!」
記者「う〜ん、イマイチ・・・もう一枚」
記者「今度は良く撮れたアル!」

〇西洋の住宅街

〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「ただいま、ママ」
アパルト マリン「ヘイト!今日は大変な事が起きたのよ!」
アパルト ヘイト「大変な事?」
アパルト マリン「泥棒が家に侵入したの」
アパルト マリン「この野球ボールで窓を割られてね」
アパルト ヘイト「へぇ〜」
アパルト ヘイト「泥棒と鉢合わせなくて良かったねママ」
アパルト マリン「ま、まぁ、そうね」
アパルト マリン「大事な物は盗られなかったけど 家の中がメチャクチャよ」
アパルト ヘイト「後で僕も片付けるの手伝ってあげるよ」
アパルト ヘイト「ちょっと、着替えて来るね」
アパルト マリン「えっ?ちょっと、ヘイト!」
アパルト マリン「反応それだけ?」
アパルト マリン「うっ──」
アパルト マリン「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ──」
アパルト マリン「血!?──」
ヘイト「どうしたの?」
アパルト マリン「・・・」
ヘイト「大丈夫じゃなさそうだね」

〇病院の診察室
アパルト マリン「肺に腫瘍?嘘でしょ?先生!」
ケビン「・・・正直、ここまで進行していると 手術を施しても完治するか分かりません」
アパルト マリン「そ、そんな──」
ケビン「どうします?手術します?」
アパルト マリン「・・・考えさせて下さい」

〇おしゃれな居間
アパルト マリン「困ったわね・・・」
ヘイト「ぼ、僕が悪いのかな?」
アパルト マリン「違うわ、ヘイトが悪い訳しゃないのよ」

〇おしゃれな居間
  2日後、ある事が新聞の記事になったんだ
アパルト マリン「これって!」
  とある青年がビーチで溺れた猫を救う!
アパルト ヘイト「おはようママ!」
アパルト マリン「ヘイト、猫を救った事が記事になってるわよ!」
アパルト ヘイト「本当だ!」
アパルト マリン「写真まで撮られてるわ!」
アパルト ヘイト「電話!?」
アパルト マリン「ママが出るわ!」
「もしもしアパルトです──」
「えっ、ヘイトがですか?──」
「──分かりました伝えておきます」
アパルト ヘイト「何の電話?」
アパルト マリン「ヘイトが猫を救出した記事が評価されて、来月にニューヨークでボランティア団体が開催する表彰式に招待されたの」
アパルト ヘイト「猫を助けただけなのに?」
アパルト マリン「命を助けるのに猫も人も関係ないわよ!」
アパルト マリン「表彰式は出席でいいわよね?」
アパルト ヘイト「うん。ママも来るの?」
アパルト マリン「もちろん!」
アパルト マリン「来月っていったらヘイトの誕生日じゃない?」
アパルト ヘイト「そうだね」
アパルト マリン「いい誕生日になるわね!」
アパルト ヘイト「・・・うん」

〇空港のエントランス
アパルト マリン「ゴホッ──」
アパルト ヘイト「大丈夫、ママ?」
アパルト マリン「平気よ」
アパルト ヘイト「ねぇ、ママ、ニューヨークってどんな場所? 怖くない?」
アパルト マリン「そうね、表向きは輝いている場所よ」
アパルト ヘイト「表向き?」
アパルト マリン「そして、地下鉄に本当の姿が表されている場所でもあるわ」
アパルト ヘイト「へっ?」
アパルト マリン「行けばわかるわよ」
アパルト マリン「パパが眠る場所に行けるなんて最高よ!」
アパルト ヘイト「パパか・・・」
アパルト マリン「難しい顔しないでヘイト。ママはね久しぶりにパパに会えるから嬉しいのよ」
アパルト マリン「合わせてくれて、ありがとうねヘイト」

〇飛行機の座席
  この飛行機は、ただいまから、およそ20分で
  ジョンFケネディ空港に到着する予定です──
アパルト ヘイト「もう少しでニューヨークに着くよママ!」
アパルト ヘイト「ママ?」
アパルト マリン「・・・──」
アパルト ヘイト「・・・──」
アパルト ヘイト「ママ疲れちゃったんだよね」
アパルト ヘイト「おやすみママ」
  そのまま目を覚まさなかったけれど
  寝顔はいつも以上に綺麗だったんだ──

〇墓地
アパルト ヘイト「ニューヨークに来てそうそう葬式なんてありえないよ人の死って本当にあっさり来るんだね」
アパルト ヘイト「ママがやる事には驚かされてばかりだったけど、今回が一番だったよ」
アパルト ヘイト「しかも、ママを見送るの僕1人だけなんだよ こんな雨の中でさ・・・」
アパルト ヘイト「せっかく選んでもらったスーツもびしょ濡れ 買い直さないと──」
アパルト ヘイト「・・・──色々な思いでがあったよねママ」
アパルト ヘイト「突然の別れだったけど、ママの死を受け入れて希望に繋げないといけないよね」
アパルト ヘイト「実はさママがパパと一緒に非合法な薬を高値で売ってたのは知ってたんだ」
アパルト ヘイト「ママはパパが仕事の帰りに熊を追いかけてきた猟師に撃たれたなんて言ってたけど、あれ本当は警官に撃たれたんでしょ?」
アパルト ヘイト「僕を悲しませないようにしてくれたんだよね」
アパルト ヘイト「ママがそれ以来パパと離れ離れだった事も」
アパルト ヘイト「ニューヨークに来れなかった理由も全て 知ってたんだ──」
アパルト ヘイト「今度はパパが居るから淋しくないよね。 また会おうねママ」

〇ニューヨーク・タイムズスクエア
アパルト ヘイト「・・・」
ヒッピー「既存の社会体制は不自由。 脱社会で個人の自由を求める時代を作るのよ」
サイケデリック「インスピレーションを求めた生き方は魂を 解放させる!」
ヒッピー「そして、戦争は断固反対!」
サイケデリック「同じく!」
「反政府、反ベトナム戦争!」
サイケデリック「自国の国旗なんて燃やしてしまえ!」
「アハハッ」
アパルト ヘイト「・・・──」
アパルト ヘイト「わっ!」
ロイ「おっと、すまねぇ目が悪くてな許してくれ」
アパルト ヘイト「あっ!」
ロイ「んっ?」
アパルト ヘイト「お久しぶりです!」
ロイ「誰だ?聞き慣れねぇ声だが・・・」
アパルト ヘイト「アパルトです、エレンの友達の──」
ロイ「おお、その声はあの時の金髪野郎か!」
アパルト ヘイト「そうです!」
ロイ「雨の中、立ち話じゃ風邪引いちまう 俺の家に来い、ここから数分の所にあるんだ そこで話そうや」
アパルト ヘイト「はい!」
  歩いて数分って言ったけど20分はかかったのを覚えてるよ

〇組織のアジト
ロイ「まぁ、適当に座ってくれや」
アパルト ヘイト「まさか、ロイさんとNYで会うなんて偶然すぎますね」
ロイ「そうだな、えっと名前は確か・・・」
アパルト ヘイト「アパルトです」
ロイ「おお、そうだったな! アパルトよお前は何故NYに居るんだ?」
アパルト ヘイト「すいません、雨に濡れたからかな」
ロイ「俺の服を貸してやるよ」

〇綺麗な図書館
アーノルド「表彰式が決まったり、ママが機内で突然亡くなったり、浮き沈みが激しすぎる人生だな」
ブルース「どんな事も受け入れて、解決する。抗わない 俺とは真逆な生き方に興味が沸くよ」
アーノルド「・・・誰だよ?お前?」
ブルース「驚かせてすまん!」
ブルース「俺の名はブルース、朝からダクトの掃除をしていたら、皆んな俺を置いて帰ってしまってな」
アーノルド「逆だな」
ブルース「へっ?」
アーノルド「皆んな、お前が先に帰ったと思ってるぜ!」
ブルース「まさか!取り残されたのは俺の方か!」
アーノルド「もう、夜だしな・・・」
ヘイト「僕はヘイトよろしく!」

〇組織のアジト
ロイ「猫を助けて表彰式に呼ばれた?」
ロイ「お偉いさん方は、自国の兵士の命より、猫の命の方が重いとな。俺達も舐められたもんだ」
アパルト ヘイト「すいませんロイさん・・・」
ロイ「お前が謝ることじゃねぇよ」
ロイ「ベトナム戦争を終戦させようとしていた期待の大統領も暗殺されちまって、戦争は泥沼だ」
ロイ「タイムズスクエアでのデモをみたろ?」
アパルト ヘイト「はい。星条旗を燃やしていましたね」
アパルト ヘイト「もしかしてロイさん、デモを止めに行ったんですか?」
ロイ「違うよ、逆だ。参加して来たんだ」
アパルト ヘイト「えっ?」
ロイ「まぁ、数年前の俺なら怒り狂っただろうが、 今ならアイツらの主張が正しいと思うんだ」
ロイ「おかげで、友人や家族には冷たい目でみられ、気が付きゃ共産主義者扱いさ。 裏切り者だってよ!」
アパルト ヘイト「そんな、命をかけて戦ったのに」
ロイ「そうだな、視力もほとんど奪われた 今は、微かな光が見えるだけさ」
アパルト ヘイト「何て言葉をかけたらいいか・・・」
ロイ「同情なんていらないぜ、視力が無くなった事には感謝してるし、清々しい気持ちなんだ」
アパルト ヘイト「感謝!?」
ロイ「目が見えない方が、物事がよく見えるんだ」
アパルト ヘイト「どういう事です?」
ロイ「簡単に言うなら、些細な事にも感謝して生活出来るんだ。水を飲む、空気を吸う、音を感じ受けとめる、それと一番大事なのは──」
ロイ「おう、開いてるぞ、エイミー!」
エイミー「やっほ〜ロイちゃん!寂しかった?」
エイミー「てか、この人は誰?」
アパルト ヘイト「アパルトです。よろしく」
ロイ「俺の親友だ」
エイミー「え〜ロイちゃん、友達いたの?」
アパルト ヘイト「あの?2人の関係は?」
エイミー「ウフッ、恋人同志♡」
ロイ「こんな俺を、ずっと支えてくれてんだ 俺にとっては最高の女神様だぜ」
エイミー「ロイちゃん♡」
ロイ「ヘイト、エミリーは女神に見えるか?」
アパルト ヘイト「えっ、えっと・・・」
ロイ「こう聞くと、皆んな返答に困るんだ。 俺にはエミリーの容姿なんか関係ねぇ」
エイミー「いま私、失礼な事を言われてない?」
ロイ「ヘイト、一番大事なのは人間らしさだ。 俺はエミリーの人間らしさに惹かれてる」
エイミー「ロイちゃん♡」
アパルト ヘイト「例えると、どんな事なんですか?」
ロイ「気に食わないとすぐ怒る所、ゴミも片付けねぇ、もちろん家事も出来ない・・・」
エイミー「ちょ、ちょとロイちゃん言い過ぎよ!」
ロイ「だかよヘイト、それが人間らしいだろ? 変な気を使わずにホッとするんだ」
アパルト ヘイト「見えなくても、溢れ出る人間らしさを感じられるなんて、最高ですね!」
ロイ「だろ!」
エイミー「そ、そう?照れる!」

〇組織のアジト
ロイ「寝ちまったな・・・」
エイミー「・・・ロイちゃん」
ロイ「・・・──」
アパルト ヘイト「あの・・・」
ロイ「分かってる。エレンの事を聞きたいんだろ?」
アパルト ヘイト「はい!」
ロイ「実はな、俺たち慰門団は出張先のベトナムに着いてすぐに、撤退を余儀なくされたんだ」
アパルト ヘイト「そ、そんな!」
ロイ「途中までエレンと一緒に逃げたんだが、 エレンがいる場所に手榴弾を投げ込まれてな」
ロイ「エレンを庇った俺は強い衝撃をまともに両目に受け視力を失った。それと同時にエレンの姿は俺の視界から消えた」
ロイ「気がつくと病院のベッドの上だった──」
ロイ「正直、エレンがとうなったか分からねぇんだ」
アパルト ヘイト「そんな・・・」
ロイ「以前日本で会った時に、一緒にエレンを連れて帰ってもらえば良かった。あの時は、悪い事をした──」
アパルト ヘイト「・・・──」
ロイ「俺を恨んでくれても構わん──」
アパルト ヘイト「いえ、エレンを庇ってくれてありがとうございます」
ロイ「俺は何も出来なかった──エレンの安否すら分からない・・・情けねぇぜ」
アパルト ヘイト「エレンはきっと生きてます!」
ロイ「そうだな!」
ロイ「明日の表彰式は何時からだ? 会場まで送ってやるよ」
アパルト ヘイト「えっ!どうやって運転するんですか?」
ロイ「運転手は俺じゃないぞ!」
エイミー「・・・ロイちゃんも食べなって──」
アパルト ヘイト「そっちか!お願いしますね、エイミーさん」
エイミー「フフッ、まかせてよ──」
ロイ「でけぇ寝言だ」

〇綺麗な図書館
ブルース「なんか、憧れるなぁ〜」
アーノルド「何がだよ?」
ブルース「人を庇いながら逃げるなんて── だいぶハードなアクションを想像しちゃって」
アーノルド「お前、大丈夫か?」
ブルース「ロイさん素敵だなぁ〜」
アーノルド「まぁ、男らしいとは思うけど──」
ヘイト「勇敢だったよ」
「見てたのかよ?」
ヘイト「うん。バッチリとね!」
ブルース「嘘つけ!」

〇ホール
  そして表彰の日──
ジョンソン「ヘイト──アパルト?」
ジョンソン「名前のスペルミスか?」
アパルト ヘイト「いいえ、そのスペルであってます」
ジョンソン「独特な名前だな(何故アロハシャツ?)」
アパルト ヘイト「すいません、スーツが昨日の雨で濡れてしまって・・・替えが準備出来なくて」
ジョンソン「そ、そうか──(心の声が漏れたか?)」
ジョンソン「まぁいい、表彰を始めよう!」
アパルト ヘイト「あの、大統領」
ジョンソン「何かね?」
アパルト ヘイト「何故、猫を助けただけで表彰されるのです?」
ジョンソン「簡単な事ではないんだよ──」
アパルト ヘイト「簡単でしたけど?」
ジョンソン「世の中の答え的にという事さ──」
アパルト ヘイト「どういう事です? 僕の理解力が足りなくて、申し訳ありません」
ジョンソン「・・・分かりやすく言うと、君は、黒人の猫を命がけで助けた白人という事だよ」
ジョンソン「普通の白人なら、黒人に手は貸さないからね」
ジョンソン「世の中は国民のYESの数によって型取られていくものだ──自分の腑に落ちなくてもな」
ジョンソン「それをふまえた上で、君の取った行動は、YESの数に反した、異常な行動だったのさ」
アパルト ヘイト「異常?正常だと思いますけど・・・」
ジョンソン「ふんっ!」
ジョンソン「この話しは終わりにしよう、表彰式を始める」
  あっという間の表彰式だったよ

〇研究施設の玄関前
ロイ「おう、終わったか?」
アパルト ヘイト「はい、何か複雑な感じでした」
ロイ「俺にはどんな感じの表彰式だったのか分からねぇがよ。まぁ、とりあえず帰ろうぜ!」
アパルト ヘイト「そうですね」

次のエピソード:アパルトとヘイト5

コメント

  • どんな災厄も抗わず受け入れる。
    一見主体性のなさそうな主人公と、常に争い変容していく国の姿。
    この2つを並行して描くのが特徴的ですね。
    突然の母の死など、色々と達観した境地!
    その中で大統領やロイの発言に示唆的な台詞が散りばめられ、
    特に「ーそれと同時にエレンの姿は俺の視界から消えた」が文学的でした。
    ブルースは将来薄毛に悩むのでしょうか?🫢

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