花姫様と最強の冷徹騎士様

ちゅるちゅるめん

ローゼの婚約(脚本)

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〇宮殿の門
  日が沈んだ冬の夜、閉ざされた門の前に着飾った男女が門が開くのを今か今かと待っていた
蝶ケ夜胡桃「そろそろ始まるわね、社交界」
アレグラット「はい。・・・」
アレグラット(昨日は帰ってすぐ国王に報告をした)
アレグラット(だがこの事が伝われば社交界は確実に中止になるということで、俺たちと一部の腹心のみにこの事が伝わった)
アレグラット(あの気配は間違いなくミルェーツのものだった。・・・だが実は俺は隠していることがあった)
アレグラット(あの時確かに他の気配が感じられた。だがそれはあまりに人に似た気配で、どうも敵と認識がしにくい)
アレグラット(先輩に聞いたミルェーツの近くにいる従者のような男は人間ということなのだろうか)
蝶ケ夜胡桃「・・・アル?」
アレグラット「・・・あ、申し訳ありません。少し考え事をしていました」
蝶ケ夜胡桃「きっと昨日のことなんでしょう?・・・心配する気持ちもわかるわ。だってあいつはローゼを一度拐ったのだもの」
蝶ケ夜胡桃「でもそんな暗い顔してちゃダメよ?もし察しの良い生徒が見たら、何かあったって知られちゃうかもだしね・・・」
蝶ケ夜胡桃「私に出来ることがあればなんでも協力するからさ」
アレグラット「・・・では1つ質問を良いですか?」
蝶ケ夜胡桃「えぇ、なんでも聞いて」
アレグラット「昨日僕はミルェーツの気配を感じたと言いましたよね?」
蝶ケ夜胡桃「そうよ、それでアルが私のことを護衛として送り届けてくれたのよね」
アレグラット「最初はミルェーツだけの気配に集中してしまったのですが、その後に若干他の・・・人の気配が遠くの方からしました」
アレグラット「あの時間帯で残っている生徒は少ないはず。なので外部のものだと思いました。そしてもしかしたら、ミルェーツの協力者とか・・・」
アレグラット「僕はこう考えているのですが、胡桃様はどう考えますか?」
蝶ケ夜胡桃「そうね、私はあまりそういうのに詳しくはないけれど・・・あ、あれかな・・・」
アレグラット「なんでしょう?その、あれとは」
蝶ケ夜胡桃「アルもよく知ってる神話の話よ。昔女神様が悪行をした人達から心を奪ってしまったという話」
アレグラット「あぁ、よく子供の教育に使われる『ルーズベンと悪魔』ですか」
蝶ケ夜胡桃「うん。その悪魔になってしまった人達は代わりに不老不死の力と強大な魔力を手に入れた」
アレグラット「そして本能からか、人間の心・・・つまり魂を求めて人の心を奪って食らうというやつでしたね」
アレグラット「それか魂を奪われた人は己の魂を持つ悪魔に死ぬまで操られる・・・あ、そうか」
蝶ケ夜胡桃「そう。その神話が本当ならミルェーツは「悪魔」であり、ミルェーツの側にいる甲冑の男?は人間ということになるわ」
アレグラット「確かにそれなら納得できますね。でも、ミルェーツは一体どこにいるんでしょうか・・・」
蝶ケ夜胡桃「国王様にこのことを話して王室の図書館で調べさせてもらいましょう。悪魔のことについて何か書いてあるかも」
アレグラット「そうですね、ではあの2人にもこのことを話し、冬休みは4人で悪魔について調べないとですね」
蝶ケ夜胡桃「ええ。・・・良かった、暗い顔が治って」
アレグラット「え・・・」
蝶ケ夜胡桃「今のところは悩みを晴らせたってことなのかな?」
アレグラット「そうですね、さっきより少し心が軽くなりました。・・・ありがとうございます」
蝶ケ夜胡桃「気にしないで!・・・あ、じゃあそのお礼としてさ、今日はダンスとびきり頑張って欲しいな?他学年との夜会に参加したいの!」
アレグラット「了解しました。でも転ばないでくださいね?」
蝶ケ夜胡桃「あら。私、こう見えてダンスとかの運動は得意なのよ?そっちも足とか踏まないでね!」
アレグラット「了解しました」
蝶ケ夜胡桃「開いたわね、それじゃあ行きましょうか」

〇王宮の広間
生徒「ではまた後程、よい夜を」
アレグラット「ええ、よい夜を」
蝶ケ夜胡桃「よい夜を!」
アレグラット「大体の人達とは挨拶が済みましたね」
蝶ケ夜胡桃「えぇ、それにそろそろローゼ達が来る頃の筈だわ、少し入り口に近づいておきましょ」
蝶ケ夜胡桃「あ、丁度来たみたい・・・って、え?」
アレグラット「国王陛下・・・!?」

〇王宮の広間
生徒「あそこにいるのって陛下よね?なぜここにいらっしゃられたの?」
生徒「毎度いらっしゃられるような規定なのでしょうか・・・」
アレグラット(嫌な、予感がする)
ゼルベイク「こんばんは、皆さん。パーティーは楽しんでくれているかな?」
ゼルベイク「・・・うん、表情から伝わってくるよ。楽しんでくれているみたいだね」
ゼルベイク「突然来て驚かしてしまったね。だが、今日はとある発表があって私もここに来たんだ。・・・ということで聞いてくれ」
シャイローゼ「本日、我がシャルメーク王国が第一王女、私シャイローゼ・ノルマータイと」
ノンヴィティエス「ヘイサール王国が次期国王のこの僕、ノンヴィティエス・ハルルクの婚約をここに発表します」
ノンヴィティエス「僕達はこの婚約と共に、両国の友好条約を締結しました」
シャイローゼ「ただ、それを政略結婚とは私たちは思っていません。互いの想いがあったので、お互いに婚約を飲みました」
アレグラット「”互いの想い”・・・」
アレグラット(そうだな、2人は王家だし結婚するのもなにもおかしくない。むしろめでたいことなのだから)
アレグラット(俺が一方的に想っていただけだ。そもそも俺とシャイローゼ様では身分が違いすぎる)
アレグラット(仮に結婚したとしても何もあちら側には利益がない。俺自身、それだけの偉業も成し遂げていないのだから)
アレグラット(・・・わかっていたけれど辛い。でもそれが胸が張り裂けそうというわけでもない。かといって大粒の涙を流したりするわけでもない)
アレグラット(でも、良かった。だって、感情を”契約に差し出した”お陰でここまでシャイローゼ様といられたのだから)
アレグラット(──ルーズベンと悪魔)
アレグラット(涙さえ出ず、怒りに我を忘れることもない。感情をほとんど失って、まるで俺はその悪魔みたいだな)
ゼルベイク「・・・正式な発表は明日行う。実は既に、城下町の民には明日王宮の前に来るよう手配してある」
ゼルベイク「明日までこのことは内密にしてくれ」
ゼルベイク「では皆さん、まだまだ夜は長い。是非パーティーを楽しんでいってくれ」
ゼルベイク「よい夜を」
蝶ケ夜胡桃「──アル、大丈夫?」
アレグラット「大丈夫、とは?」
蝶ケ夜胡桃「何がとは言わないけども、それはさぞかし辛いのでしょう?」
アレグラット「・・・」
蝶ケ夜胡桃「でもそっか、アルも伝えられていなかったんだね。2人の婚約」
アレグラット「そうですね、やはり僕程度の人間をすぐに陛下が信用するとは思いませんし。納得はしています」
蝶ケ夜胡桃「その程度、なんてことはないわよ。だってアルはノルマータイ家にどれだけ尽くしていることか」
アレグラット「そう、思っていただけているのだとしたら・・・いえ、この先は話すことではありませんね」
蝶ケ夜胡桃「・・・」
蝶ケ夜胡桃「さて、私達はダンスを踊る前に陛下達に挨拶に行かなければならないのだけれど...」
蝶ケ夜胡桃「あんなに混んでいたら行けないわね・・・」
アレグラット「僕たちが踊るのは3番目です。まだ時間はあるはずですし、気長に並んで待ちましょう」

〇王宮の広間
蝶ケ夜胡桃「蝶ケ夜子爵家が次女、蝶ケ夜胡桃でございます」
アレグラット「三大騎士家が1つ、カルウェリー家長男のアレグラット・カルウェリーです」
「この度の婚約、誠におめでとうございます」
ノンヴィティエス「2人とも、ありがとう。もう楽にしてくれて構わないよ」
蝶ケ夜胡桃「ではお言葉に甘えて...」
蝶ケ夜胡桃「2人とも、なんで婚約のこと私達にも教えてくれなかったの?!驚いたのよ、本当に!」
シャイローゼ「お、落ち着いて胡桃。これはその・・・昨日決まった話と言うか・・・」
アレグラット「昨日?決まってからかなり早い発表ですね。なにか急ぐようなことでもあるのでしょうか」
ゼルベイク「一応、ローゼを守るための手段の一つとも言えるんだ、この婚約は」
ゼルベイク「やはり最近のミルェーツの動きが若干引っ掛かる。それにローゼは1度やつらに誘拐されたからね」
ノンヴィティエス「でも婚約するとなると、これまでより警備が厳しくなるだろう?だからローゼさんはより安全な場所にいられるんだ」
ノンヴィティエス「それと僕達の国が同盟を結ぶために婚約する話、僕の国で暴動が起きる前から出ていたらしいんだ。だから諸々ちょうど良いかなって」
アレグラット(諸々ちょうど良い?なんだか引っ掛かるのは気のせいだろうか・・・)
ゼルベイク「じゃあまだ挨拶が済んでいない人がいるから、この辺にしようか」
アレグラット「国王、お待ちください」
アレグラット「先程胡桃様とミルェーツについて話しているとき、ミルェーツの正体について少しわかって・・・」
ゼルベイク「・・・なるほど、ては明後日の午後に2人で話そうか。外に出るのは危険だから、胡桃さんは本家で待機していてくれ」
蝶ケ夜胡桃「了解しました」
アレグラット「ではこれで失礼します」
「よい夜を」
蝶ケ夜胡桃「ふぅ・・・やっぱり国王と話すのはまだ慣れないわ・・・なんだか疲れちゃった」
蝶ケ夜胡桃「それに・・・婚約かあ。私たちもそろそろ決めなきゃだよね、相手」
アレグラット「そうですね・・・あれ?」
シャイローゼ「・・・」
蝶ケ夜胡桃「ん、どうかしたの?」
アレグラット「いえ、なんでも──」
アレグラット(シャイローゼ様があんな顔をしたのは何故だろう、やはり婚約が・・・?いや、ヴィッツ様は結婚相手として不足ないはずだ)
アレグラット「とりあいずは婚約云々はおいておいて、今夜のダンスを乗りきりましょう」
蝶ケ夜胡桃「そうだね。学年混合の夜会までエスコートしてね?」
アレグラット「善処しますよ」

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