殺意は動いていく ただ静かに君の背後へと

刀神凛太郎

エピソード1(脚本)

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〇電車の中
  いつものことだけど、夕方の渋谷行きは超満員
  全然、身動きできない
瑞洲咲桜(「遅れそう」って美紀に連絡したいけど、スマホも出せない・・)
厨川静香「だよね。その美紀って娘も、テレパシー使えたら良かったのに」
瑞洲咲桜「静香さん! 同じ電車だったんですね」
  彼女は厨川静香。私と同じ”超能力者”だ!
  私は最近、超能力技能試験に合格したばかりの初心者だけど、彼女はベテラン!
  大勢の中から私を見つけだして、テレパシーで話しかけてきたのだ
  まだ会ったことはない。
  一度、渋谷で会おうとしたけど・・
都筑完「こんな偶然もあるんだなあ。 俺も同じ電車」
栂野沙友理「・・あたしもよ。ったく、笑っちゃうわね」
瑞洲咲桜「都筑さん、栂野さんまで!」
  都筑さんも栂野さんも超能力者だ。・・同じ電車に4人も乗り合わせるなんて、そんな偶然起こる?
都筑完「起こるさ。超能力者の数が増えてくればね」
栂野沙友理「政府はいつまで超能力者の存在を秘密にしておくつもりなのかしら」
都筑完「事実が明るみにでたら大騒ぎになる。 だから、ぎりぎりまで伏せておきたい」
栂野沙友理「と言って野放しにするのも怖い」
厨川静香「だから、超能力技能試験なんて作って免許制にしたのよ。 ルールの枠組みに押し込んで管理しようって」
瑞洲咲桜「確かに超能力で他人の心をやたら覗き見したら、プライバシー侵害になりますものね」
都筑完「とは言っても丸見えだけどね」
栂野沙友理「でも、みんなの心を同時には見られない。覗けるのは一度にひとりだけ」
都筑完「それも意識の表面に浮かんだ考えのみ」
栂野沙友理「心の奥底までは見えない」
厨川静香「ちょっと待って! ・・いる! いるわ、あいつが!」
都筑完「あいつ?」
厨川静香「あいつ、センター街キラー!」

〇雨の歓楽街
  先日、センター街で事件があった
  神崎卓という人が殺されたのだ!
  さらに第二、第三、第四と犠牲者が続き・・
  犯人はセンター街キラーとして恐れられていた!
  事件はいつも雑踏の中、凶器は鋭く分厚い刃物だった

〇電車の中
  見つかってない凶器なのに、なぜか鮮明な映像が浮かぶ・・
瑞洲咲桜「いるんですか、本当に?」
厨川静香「いる! そして少しずつ近づいてる」
都筑完「どうしてわかる?」
厨川静香「心を覗いたから! 事件を起こした夜に、同じ場所に居合わせたから」
厨川静香「あいつの意識が間近にあれば、わかるのよ」
栂野沙友理「どこなの? 何号車か、わかる?」
都筑完「俺は6号車だ。見つけたら捕まえてやる!」
栂野沙友理「あたしは5号車。協力するわ」
  私は4号車・・でも
厨川静香「いるわ、あいつは! 私と同じ7号車に」

〇電車の中
  刺された! 背中を
  誰かの心の叫びを感じた
瑞洲咲桜(え、誰? まさか?)
  と、静香さんの意識が消えた・・
都筑完「7号車で誰か刺されたらしい! 大勢が6号車に流れ込んできてる」
栂野沙友理「いるの? その人たちの中に? センター街キラーが?」
都筑完「確かにいる! 強い殺意が近づいてくる」
都筑完「けど、それらしい奴は見えない。 どこだ? 近くのはずなのに・・」
都筑完「ぐわっ!」
瑞洲咲桜「都筑さん! どうしたんですか?」
栂野沙友理「やられたのよ! アイツはもう5号車まで来てる」

〇電車の座席
  渋谷に着いた!
瑞洲咲桜「出口に殺到する人波に流されて、意思とは無関係に運ばれていっちゃう」
栂野沙友理「流れに任せて、そのまま逃げて!」
瑞洲咲桜「栂野さん!」

〇雨の歓楽街
  あの日、私は静香さんとの待ち合わせのため渋谷にいた
瑞洲咲桜「なにこの映像? ナイフ?」
  すぐそばで面識のない神崎卓が刺され、最初の事件が起こった
  そのまま大混乱となり、私たちは会わずに引き上げたのだ

〇広い改札
  流されて私は改札へ向かっていた
瑞洲咲桜(来てる・・ 強い殺意の持ち主が追ってきてる)
瑞洲咲桜(美紀からの着信!)
白石美紀「大丈夫なの、咲桜?」
  美紀は学生時代の友達で、事件を調べてる刑事。私は証言をするために会おうとしていた
瑞洲咲桜「大丈夫よ。 改札口で待ってて、引き渡すから犯人を」
栂野沙友理「わかってたの、咲桜ちゃん?」
栂野沙友理「危ない!」
瑞洲咲桜「もうやめてください、静香さん!」

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コメント

  • ただ恐怖だけが人々の間をパスされて近づいてくる、という状況の恐ろしさに戦慄しました。最後の静香さんの姿に哀しいものを感じます。分かって嬉しいこともあれば、心に取り込んだせいで苦しむものもあるのですね。悪意の連鎖の方だけを断ち切ることはできるのか…凡人の私も少し考えさせられます。お友達が刑事さんだと提示された時の、スリルと現実の東京が突然真っ向勝負する感覚が面白いです。

  • 主人公の4号車まで順番に迫ってくる緊迫感が凄かったです。カウントダウンされているようでした。超能力者が暴走して同胞まで傷付けてしまうのも定番で、大好きなツボでした。

  • テレパシー✕満員電車という状況で迫る殺人鬼にハラハラしました。いい設定ですね…!
    超能力があっても衝動にあらがえない人間の弱さというか…設定にマッチしたテーマが描かれていると感じました

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