好きの在処

夏名果純

第9話 気持ちを確かめるために(脚本)

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〇教室
本谷拓人「夏休みに入ったら、花火大会があるよね。 よかったら、一緒に行かない?」
水杉花奈「えっ!」
本谷拓人「水杉さんと一緒に花火見れたらいいなって思うんだ」
水杉花奈「・・・・・・」
  思いがけないお誘いに、花奈はすぐに言葉を返せなかった。
本谷拓人「いきなりで驚くよね、ごめんね」
  拓人は照れたように笑って続ける。
本谷拓人「まだ時間はあるし、返事はすぐでなくていいから」
本谷拓人「それじゃあ行くね──」
  ちょっと待って
水杉花奈(・・・えっ?)
  拓人が教室から出ていこうとした時、廊下に修司が立っているのが見えた。
水杉花奈「えっ、修司!?」
本谷拓人「キミは・・・水杉さんの幼馴染みだっけ?」
  修司と拓人は静かに対峙する。
吉岡修司「うん、そうだよ」
吉岡修司「偶然、話が聞こえてきたんだけど、花奈には僕が先に誘ったんだ」
水杉花奈(修司・・・)
本谷拓人「でも、まだ返事はもらってないんだよね?」
吉岡修司「返事はまだだけど、僕は花奈と一緒に花火大会に行きたいと思ってる」
本谷拓人「それはボクも一緒だよ」
水杉花奈「・・・・・・」
  花奈は2人の会話に、少しも割り込めないでいた。
本谷拓人「じゃあさ、わかった。こういうのはどう?」
吉岡修司「何?」
本谷拓人「花火大会の前に1人ずつとデートして、水杉さんに花火大会に行く相手を決めてもらうんだ」
吉岡修司「うん、いいと思う」
水杉花奈「えっ!?」
  驚く花奈のそばで、少し言いよどんでから拓人が尋ねる。
本谷拓人「その前に・・・」
本谷拓人「あまり聞きたくないこと、一応聞いとくけど、花火大会に誘ったのってキミだけ?」
吉岡修司「いや、謙弥もだよ」
本谷拓人「もう1人の幼馴染みもだよね。 やっぱり・・・」
  拓人は小さなため息をついた。
吉岡修司「2人同時に誘う形になったけど、花奈からはまだ返事をもらってない」
吉岡修司「だから、謙弥にもこういうことになったって話すよ」
吉岡修司「それでいい?」
本谷拓人「うん、わかった。フェアに行こう」
水杉花奈「あ、あの、フェアって・・・」
水杉花奈(私の意見は・・・?)
  花奈が言葉を発すると、ようやく2人は花奈の方を見た。
吉岡修司「花奈はちょっと大変かもしれないけど、しっかりと考えて選んでほしいんだ」
  花奈が修司の真剣な声音に戸惑っていると、拓人も同じように花奈をまっすぐに見つめる。
本谷拓人「うん」
本谷拓人「こういうのって先着順ってわけでもないし、水杉さんの気持ちをちゃんと教えてほしい」
水杉花奈「・・・わかった」
  2人からの真摯な眼差しを受け止めて、花奈はもううなずくしかなかった。

〇通学路
  拓人と別れた花奈と修司は、その足で謙弥の家に向かっていた。
吉岡修司「花奈、勝手に決めちゃってごめんね」
水杉花奈「・・・ううん」
吉岡修司「あまり気が進まない?」
  浮かない表情の花奈に、修司が控えめに尋ねる。
水杉花奈「いや、なんか大事になっちゃったなあって思って」
水杉花奈(私が自分の気持ちを見失わなければ、こんなことにならなかったかもしれない)
水杉花奈「・・・でも」
吉岡修司「うん?」

〇教室
松木明日香「今! 花奈があの2人のことをどう思ってるのか、自分の気持ちとじっくり向き合う」
水杉花奈「今の、私の気持ち・・・」
松木明日香「結局は、それが一番大切でしょ?」

〇通学路
水杉花奈(これって、自分の気持ちを確かめるいい機会だよね!)
水杉花奈「こうなったら、2人の気持ちに・・・自分の気持ちに、ちゃんと向き合おうと思うよ」
吉岡修司「花奈、ありがとう」
水杉花奈(こちらこそ・・・私と向き合ってくれてありがとね、修司)
  花奈は心の中で、ひっそりと修司にお礼を言った。

〇学生の一人部屋
  修司が謙弥に話をすると、謙弥はあからさまに顔をしかめた。
川崎謙弥「はあ? なんだよ、それ。 そいつは関係ねぇじゃん!」
吉岡修司「でも、本谷くんも花奈を誘ったから」
川崎謙弥「そんなもん、今さら出てこられてももうアウトだろ」
川崎謙弥「なあ、花奈?」

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