初めての渋谷

まる

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〇ハチ公前
  高2の春、俺は田舎を1人飛び出して東京を訪れていた。
  ずっと憧れていた街を一度自分の目で見てみたかった。
啓太「ここが渋谷か・・・」
啓太「おっ、ハチ公像があるぞ!!すげぇ!!」
啓太「うわっ!!あっちはスクランブル交差点だ!!」
??「おい!」
  急に後ろから声がかかった。
  俺じゃありませんように・・・
??「お前に言ってるんだよ!」
  ぐいっと肩を掴まれて恐る恐る振り向くと、そこにはイカつい顔の男がいた。
??「お前、渋谷は初めてか?」
啓太「えっ・・・あの、そうですけど・・・」
??「悪いことは言わない。今日は帰れ」
  え・・・?
??「いいから早く!」
啓太「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! 俺まだ来たばっかりなんですよ!?」
啓太「いくら何でも勝手すぎるんじゃ・・・」
  その時、甲高い鳴き声のような音が響き渡った。
??「危ない!!」
  男は俺に飛びかかってきた。
  その勢いのまま、地面に倒れる。
  体は・・・どこも痛くない。
啓太「ちょっと!!何なんですか!?」
??「ほら、見てみろよ」
  男が示した場所に目を向ける。
  俺が元いた場所は・・・地面に裂け目が入っていた。
  この人が助けてくれなかったら、と思うと悪寒が走った。
??「もう嗅ぎつけてきやがったか・・・」
??「とりあえず隠れるぞ!!俺に付いてこい!!」
  言われるまま、俺は男の後を追った。

〇ビルの裏通り
啓太「はぁっ・・・はぁっ・・・」
??「お前、全然体力ねぇなぁ」
啓太「はぁっ・・・いい加減、ちゃんと説明してくださいよ!!これは一体どういう事なんですか!?」
??「そうだったな。んじゃ、説明すると・・・」
??「あら、タイガ君。こんなところにコソコソ隠れてどうしたのかしら」
  突然、俺らの側にスーツ姿の美女が現れた。
  話しぶりからして、2人は知り合いか・・・?
タイガ「ああ!?」
  美女は僕の方に歩いてくる。
??「あらあら、息が上がってるじゃない。 ごめんなさいね、こいつ人相は人一倍悪いのに役に立たなくて」
サヤカ「私はサヤカ。君は?」
啓太「啓太です」
サヤカ「啓太。うん、いい名前ね。 せっかくだけどあまり時間がないの。手短に状況を説明するわね」
サヤカ「私達は渋谷地区治安維持組織『shivi』のメンバーなの」
タイガ「そんで、さっきお前を襲ったのが、俺達の制圧対象である『ドレンダリン』だ」
啓太「さっきから意味わかんないですよ・・・ 治安維持?ドレンダリン?そんなの聞いたことも・・・」
タイガ「それは当たり前だ。渋谷を出ればここでの記憶は消えてしまうからな」
啓太「はぁ!?」
サヤカ「ドレンダリンが妨害電波を出しているの。渋谷に人が来なくなったら、奴も困るからね」
  何なんだよ・・・
  俺は夢でも見ているのか・・・
サヤカ「そして啓太。君は渋谷に初めて来たね?」
啓太「そ、そうですけど・・・」
サヤカ「やっぱり。見れば分かるわ。 啓太みたいな通称『beginner shibuyer』は奴の大好物なのよ」
啓太「なんっ・・・だよ、それ・・・」
  その時、再びあの甲高い声が近くで聞こえた。
タイガ「ちっ・・・気づかれたな」
タイガ「啓太!!お前、俺らの側を離れるんじゃねぇぞ!!」
  そう言って走り出す2人の背中を、僕は必死に追いかけた。

〇渋谷のスクランブル交差点
  目の前に現れたのは、真っ黒いもやがかかった、見たこともない巨大生物だった。
  これが、ドレンダリン・・・
タイガ「ははっ。 こりゃあ、よっぽど腹が減ってるみたいだな」
啓太「は、腹が減ってるって・・・ 僕達のこと食べるんですか!?」
サヤカ「正確には私達の個性をね」
啓太「個性・・・」
  その時、ドレンダリンが腕のようなものを伸ばし、こっちに襲いかかってきた。
サヤカ「タイガ君!!」
タイガ「分かってるって!!」
  タイガさんは向かってくる腕を拳で弾き返した。
タイガ「次はこっちから行くぞ!!」
  タイガさんはすごい速さでドレンダリンの足元まで走り寄り、回し蹴りを入れた。
  ドレンダリンはバランスを崩して倒れる。
啓太「や、やった!!倒した!!」
サヤカ「まだよ」
啓太「え・・・」
  サヤカさんはスーツの内側から拳銃を取り出した。
サヤカ「これを脳天に打ち込むまでは、ね・・・っ!!」
  放った弾丸は、倒れたドレンダリンの脳天に直撃した。
  ドレンダリンの黒いもやが段々と薄くなり、やがて姿が見えなくなった。
啓太「すごい・・・」
  タイガさんがこっちへ戻ってきた。
タイガ「悪かったな、怖い思いをさせちまって」
啓太「いえ・・・」
  初めは確かに怖かった。
  でも2人の戦う姿を見て、カッコいいって思ったんだ。
タイガ「今日はこの後どうするんだ?」
啓太「実家に帰ります。 さすがにもう、キャパオーバーです」
タイガ「はっはっは。 そうか、それもそうだよな」
タイガ「ドレンダリンは個性を糧にする生物。 渋谷ってのは個性が集まる街だろ?」
サヤカ「今、渋谷に住んでいる人の中にはドレンダリンに襲われないように個性を押し殺して生活している人もいるけど、」
サヤカ「私はみんなに個性を取り戻したい」
  サヤカさんはさっき使った拳銃を見せた。
サヤカ「この銃は特別製なの。 中には鉛の塊じゃなくて、渋谷に個性を取り戻したい人達の想いが込められている」
タイガ「渋谷を出たら今日の記憶は無くなっちまう。でも、人の想いまではきっと消せないと思うんだ」
タイガ「もし今日のことが怖いだけの出来事じゃなかったなら、その想いがお前をまた渋谷に連れてきてくれるだろうよ」
タイガ「そん時まで俺たちは渋谷を守り続ける。 だから・・・」
タイガ「渋谷で待ってるぜ!!」
  俺は2人と別れた。
  記憶が無くなったとしても、今日の気持ちは忘れない。
  そんな気がした。

コメント

  • 人の個性を食べるって、なんだか渋谷怖い街になってるような。
    でも、たしかに個性を隠した人は多いですよね。
    初めて渋谷に来た人は、それを知らないからカモになりやすいのかな?
    なんかおもしろかったです!

  • 啓太は突然の出来事が連続して発生したからびっくりするでしょう。人間の個性は人それぞれですね。その個性を食べる怪物の正体は果たしてなんだろう?

  • 確かにはじめての渋谷、ビキナーシブヤーは永遠と後を経ちませんものね…。
    何かしら自分の街でも誰かが守ってくれているのかもしれませんね…。

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