第十一話 『彼女』を探して(脚本)
〇道玄坂
川西 みたな (かわにし みたな)(えっ?何、今の音・・・?)
川西 みたな (かわにし みたな)(こっ、交通事故!)
みたなの声「三ヶ月前のあのとき、私は事故の音とは知らずに現場に駆けつけてしまった」
警察「事故の状況は__?」
部下「はい。車に乗った男性と自転車に乗っていた女子中学生がぶつかったと思われます」
部下「男性に詳しい事情を聞いています。 まだ、女の子は意識が__」
みたなの声「その場から去ろうとしたときに、そんな声が聞こえてきて、私は堪えきれず、女の子のもとに行った」
馬瑠の声「・・・!俺の妹か」
みたなの声「ええ。そのあとの電話を切るまでの私の行動は、馬瑠が知っている通りよ」
みたなの声「でも、電話を切ってから、粉を発見するまでに、私は声をかけられた」
川西 みたな (かわにし みたな)(ふぅ。これでみんな助かるかな)
???「__みたなちゃん?」
お姉さん「みたなちゃん、だよね? わたし、小さい頃一緒に遊んだお姉さんだ、覚えてる?」
川西 みたな (かわにし みたな)「あっ、あの時の!」
川西 みたな (かわにし みたな)「はい!覚えてます! まさかこんなところで会えるなんて・・・」
お姉さん「・・・・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「お姉さん?」
お姉さん「__あれは、魔柰川大智・・・。 なぜ奴がここに・・・?」
川西 みたな (かわにし みたな)「あの、一体何を言って・・・」
お姉さん「ごめん。君には関係のないことだったね」
お姉さん「しかし__」
お姉さん「彼女がこのタイミングで動き出したとは・・・。 みたなちゃんが事故現場に居合わせたのと何か関係があるのかな」
川西 みたな (かわにし みたな)(・・・?本当に何を言ってるの・・・?)
お姉さん「みたなちゃん、あの車の運転手は魔柰川大智。今回の事故の加害者だね」
川西 みたな (かわにし みたな)「ええと、はい・・・」
お姉さん「あいつは、二種類の薬を運んでいる途中で事故を起こしたみたいだ」
お姉さん「ほら、あそこ。 車の後部座席の奥に、大事に保管された、破れた二つの袋があるだろう?」
川西 みたな (かわにし みたな)(すごい観察力・・・。 車は目に入ってたのに、全然気づけなかった)
お姉さん「それから、彼のあの不服そうな表情。 何か嫌な予感がするね」
川西 みたな (かわにし みたな)「嫌な予感?」
お姉さん「例えば__」
お姉さん「魔柰川はあの破れた薬を警察の事情聴衆によって探すことができなかった」
お姉さん「その間に、気づいた無関係者が薬を混ぜでもして、新たな脅威を持つ薬ができたら?」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・!」
川西 みたな (かわにし みたな)「魔柰川は、運んでいたのは自分だ、とか言って薬の権利を自分のものにしようとする・・・?」
お姉さん「まあまあ当たりかな」
お姉さん「その薬が生まれたことによって、もし新たな組織ができたら、功績を自分のものにしようと潰しにくるだろうね」
お姉さん「ま、これは全部勘だし、彼や周りの人が気づく前に警察が回収するかもだけど」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「もしかして・・・ その『無関係者』を私にやれ、と・・・?」
お姉さん「もうそこまで分かるんだ!」
お姉さん「その通りだよ。 わたし、前に『事故現場には近づくな』って言ったよね?」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・はい」
お姉さん「みたなちゃんは、事故現場にいる、という証拠があるだけで、事故現場の二次事件の容疑者にされかねない」
お姉さん「そういう才能を持ってしまっているからね」
お姉さん「なら、ここに来てしまったからには、自分の身を守るために自ら事を起こしてほしいの」
お姉さん「そしてもし、わたしが言ったような展開になったら、首謀者は自分だと言い張って組織に入って」
お姉さん「あなたには、組織という大きな後ろ盾もできるし、動きやすくなるはず」
お姉さん「そして、わたしが朧気に掴んでいる、この悪を炙り出してほしい」
川西 みたな (かわにし みたな)「悪・・・?」
お姉さん「詳細は分からない。 でも、幼いみたなちゃんを事故に遭わせ、この場に誘き寄せ、魔柰川に薬を運ばせた黒幕がいる」
お姉さん「わたしはもう長くないの」
お姉さん「だから、わたしの意志を知っている、受け継いでくれるみたなちゃんに、今このことを託してる」
お姉さん「嫌なら別にやらなくてもいい」
お姉さん「でも、わたしは最後までみたなちゃんを信じるから」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・っ、待って!!」
お姉さんの声「みたなちゃん、これは自分で決めてね。 わたしがどうこうできるものでもないから」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・っ、どうすれば__」
みたなの声「そのあと、私は決心して薬を混ぜに行った。 私にとっても、薬を口に含んだのは誤算だったけど__」
みたなの声「そのおかげで、私は『明日(tomorrow)プロジェクト』の影の首謀者として扱ってもらえていた」
〇狭い畳部屋
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・これが、全てよ」
川西 みたな (かわにし みたな)「私が本当の首謀者、ってわけじゃなくて、本当は表立って動いていた彼女が首謀者だったってこと」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「彼女?」
川西 みたな (かわにし みたな)「ええ。世間が『明日(tomorrow)プロジェクト』の『創設者』『首謀者』と思っていた女よ」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「ってことは、表の情報がまるごと真実だった、ってわけか!?」
川西 みたな (かわにし みたな)「そうね」
川西 みたな (かわにし みたな)「あえて、嘘の首謀者である私は裏で動いている、と世間に誤認させることで、魔柰川を炙り出すことができたの」
川西 みたな (かわにし みたな)「そして、タキシードが魔柰川だ、とはかなり前から気づいていた」
川西 みたな (かわにし みたな)「馬瑠がバスジャックするバスに私が乗っていたのも、魔柰川の言いなりになっていたあなたを監視するためだったの」
川西 みたな (かわにし みたな)「でも、途中で思い出した」
川西 みたな (かわにし みたな)「あなたが、三ヶ月前のあの事故のときに話していた馬瑠だ、って」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)(通りでおかしかったわけだ。 俺は教えてもいねぇのに、みたなは俺の名前を呼んでいたからな)
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「よく分かった。 話してくれてありがとな、みたな」
川西 みたな (かわにし みたな)「こちらこそ。 最後まで聞いてくれてありがとう」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「それで質問なんだが、『明日(tomorrow)プロジェクト』の表の首謀者だっていう奴が誰なのかは知っているのか?」
川西 みたな (かわにし みたな)「それが、分からないの」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「だって、世間に知れ渡ってる奴なんだろう?」
川西 みたな (かわにし みたな)「そうなんだけど・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「それは名前だけで、いくら調べても、彼女の正体を見つけることはできなかった」
川西 みたな (かわにし みたな)「それに、『明日(tomorrow)プロジェクト』が動き始めてから、あのお姉さんに連絡しようとしたんだけど__」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「連絡はつかなかった、か」
川西 みたな (かわにし みたな)「うん」
川西 みたな (かわにし みたな)「もともと、体は弱かったらしいし、今生きているかも・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「『わたしはもう長くない』とは言ってたけど、どれくらいかなんて分からないし・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「そうだな・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「なあ、みたな」
川西 みたな (かわにし みたな)「何、馬瑠?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「その『お姉さん』がお前の言う『彼女』って可能性はないのか?」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・それはないかな」
川西 みたな (かわにし みたな)「お姉さん自身、『彼女が動き出した』って言ってたから」
川西 みたな (かわにし みたな)「自分のことを、演技だったとしても、『彼女』なんて言うと思う?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・それは、そう、だな」
川西 みたな (かわにし みたな)「まあ結局、私はお姉さんを探して、『彼女』についてを聞きたい」
川西 みたな (かわにし みたな)「って思ってる」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「ああ。俺も、タキシード__魔柰川の言うことをきいていた身だ」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「無関係ってわけでもねえし、協力するぞ!」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・っ、馬瑠__」
川西 みたな (かわにし みたな)「ありがとう」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「おう!」
新たな登場人物も増えて、事件が大がかりになってきたようですね。謎解きが楽しみです‼😃