バスジャックマン

さつまいか

第十話 彼女の過去(脚本)

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〇倉庫の裏
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「お前は、『明日(tomorrow)プロジェクト』のなんなんだ?」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「事故車の運転手の真相も知っていたし、俺と会話したのも本当のことのはずだ」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「俺はお前を信じたい」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「だが__」
川西 みたな (かわにし みたな)「今は、私を信じきれない・・・?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・っ、ああ」
川西 みたな (かわにし みたな)「そう、だよね」
川西 みたな (かわにし みたな)「私、矛盾したことばっかり言ってるし」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「そんなことは__」
川西 みたな (かわにし みたな)「馬瑠」
川西 みたな (かわにし みたな)「『本当の私』を知っても、あなたは私を信頼してくれる?」
川西 みたな (かわにし みたな)「ずっとそばにいてくれる?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「ああ」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「俺は、みたなに救われたことがたくさんあるんだ」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「次は、俺がお前を救う番だ!」
川西 みたな (かわにし みたな)「馬瑠・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「ありがと」

〇狭い畳部屋
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「__で、なんで俺ん家で話す流れになってんだよ?」
川西 みたな (かわにし みたな)「きれいな家だね、馬瑠」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「はぁ、また呑気なこと言って・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「とりあえず座れよ」
川西 みたな (かわにし みたな)「うん」
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・・・・」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)(やべぇ、これ、どうやって切り出すべきなんだ?みたなから話してくれるのを待つものなのか?)
川西 みたな (かわにし みたな)「ば、馬瑠・・・」
川西 みたな (かわにし みたな)「顔硬いけど大丈夫?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・っ?おっ、おう」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)(・・・どうしたらいいんだ? こんな二人きりなんて初めてだし)
川西 みたな (かわにし みたな)「・・・もしかして、緊張してる?」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「えっ?そんなわけ__」
川西 みたな (かわにし みたな)「はぁ。自分のことにもどんくさいなんて、ばかね」
川西 みたな (かわにし みたな)「私でも分かるわよ、それくらい」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・っ」
川西 みたな (かわにし みたな)「こうしてる時間ももったいないし、もう話してもいい?」
川西 みたな (かわにし みたな)「私の本当のこと」
柿本 馬瑠 (かきもと ばる)「・・・っ!ああ」

〇黒背景
みたなの声「私はね、孤児だったの」
みたなの声「みんなと同じようにできなくて、ずっとひとりだった」
みたなの声「そんな私に声をかけてくれた人がいたの」

〇広い公園
川西みたな(かわにしみたな)「ううっ・・・。 みんな、楽しそうだな」
川西みたな(かわにしみたな)(私は誰のところにもいけないや)
「どうしたの?可愛いお嬢さん」
川西みたな(かわにしみたな)「・・・?」
お姉さん「みんなとは遊ばないの?楽しそうだけど」
川西みたな(かわにしみたな)「私が行ったら、みんな楽しくなくなっちゃうから」
お姉さん「どういうこと?」
川西みたな(かわにしみたな)「私、ずっとさけられてるの」
川西みたな(かわにしみたな)「『こじ』だからって、みんなが言うけど、私には何がちがうのかわからない」
お姉さん「そっか。何も違わないよ」
お姉さん「みんなは、あなたを避けてるんじゃなくて、どう遊んだらいいかわからないだけじゃないかな?」
川西みたな(かわにしみたな)「そう、なのかな」
お姉さん「そうだよ。 今日は、お姉さんと一緒に遊ぼう?」
川西みたな(かわにしみたな)「うん!」
みたなの声「そのお姉さんだけが私に優しくしてくれた」
みたなの声「そしてある日__」
川西みたな(かわにしみたな)「お姉さん、今日はなにしてあそぶの?」
お姉さん「そうだね、今日は__」
「きゃあっ、車がこっちに来るわー!!」
川西みたな(かわにしみたな)「きゃぁっ!!」
お姉さん「みたなちゃん!?」
みたなの声「私は車に牽かれた。 特に目立った傷はなかったけれど__」

〇田舎の病院の病室
川西みたな(かわにしみたな)「ん、うう・・・」
お姉さん「みたなちゃん・・・」
川西みたな(かわにしみたな)「・・・おねえ、ちゃん?」
お姉さん「大丈夫?みたなちゃん、車に牽かれたんだよ」
川西みたな(かわにしみたな)「・・・・・・」
川西みたな(かわにしみたな)「なんにもないよ! すっごく元気」
お姉さん「・・・本当?」
川西みたな(かわにしみたな)「うん!」
お姉さん「よかった・・・」
お姉さん「ごめんね、わたしがちゃんと守ってあげられなくて」
川西みたな(かわにしみたな)「お姉さん?」
お姉さん「みたなちゃん」
お姉さん「君は、この世界で類いまれな才能を持つ者なのかもしれない」
川西みたな(かわにしみたな)「さいのう?」
お姉さん「あはは、分かんないよねー」
お姉さん「また、事故現場に遭遇したら、気を付けた方がいいよってこと」
お姉さん「何かあるかもしれないから」
川西みたな(かわにしみたな)「・・・わかった!」
川西みたな(かわにしみたな)「お姉さんが言うことはほんとうだから!」
お姉さん「・・・そうだね」
みたなの声「私は馬瑠の妹さんの事故の前にも、二回事故現場を目撃したことがあるの」
みたなの声「そのときはこのお姉さんの言葉を信じて、現場には行かなかったけど」
みたなの声「三ヶ月前のあの事故のとき、転機は訪れた」

次のエピソード:第十一話 『彼女』を探して

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