いつかの渋谷

ぐらっぱ

いつかの渋谷(脚本)

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〇平屋の一戸建て
  事の始まりは
  ひいじいちゃんの一言。

〇古い畳部屋
ひいじいちゃん「最期にワシの願いを叶えてくれんか?」
ひいじいちゃんの息子「最期なんて言うなよ、親父ぃ」
ひいじいちゃんの孫1「そうだよ、じいちゃん まだ98歳だろ もっともっと生きろよぉ」
ひいじいちゃんの孫2「じいちゃん・・・」
ひいじいちゃんの曾孫1「ひいじいちゃーん!!」
ひいじいちゃんの玄孫1「じぃじー!」
ひいじいちゃんの玄孫2「ばぶぅ?」
ひいじいちゃん「最期に・・・」
ひいじいちゃん「渋谷へ行きたいのぅ・・・」

〇平屋の一戸建て
  ──10年前

〇古い畳部屋
ひいじいちゃん「渋谷へ行きたいのぉ」
  それはひいじいちゃんの口癖だった。
曾孫の莞次郎「シブヤってどんなとこ?」
曾孫の唯都夏「どんなとこー?」
ひいじいちゃん「うむ」

〇ハチ公前
ひいじいちゃん「有名なのはハチ公かの 主人を待ち続けた犬の像があってなぁ」

〇モヤイ像
ひいじいちゃん「他にはモヤイ像 どちらも待ち合わせスポットでの」

〇渋谷のスクランブル交差点
ひいじいちゃん「後はスクランブル交差点じゃのぅ 沢山の人々が行き来して 外国の観光客が珍しがって撮影しておった」
ひいじいちゃん「ハロウィンの時にでも行けば 仮装した若者達を見られたんじゃがの」
  ハッピーハロウィン!!
ひいじいちゃん「ギャルを見たかった・・・」

〇SHIBUYA109
ひいじいちゃん「実は渋谷に行った目的は ギャルの群れを見たくての」
ひいじいちゃん「ギャル・・・ いいのぅ・・・」
ひいじいちゃん「しかしワシが行った頃には ギャルが絶滅危惧種になっていたんじゃ」
ひいじいちゃん「まぁ、当時の推しキャラグッズは 無事に購入できたし 悔しくはない、うむ・・・」
ひいじいちゃん「・・・」

〇高架下
ひいじいちゃん「渋谷は坂が多い街 疲れはしたが」
ひいじいちゃん「それを上回る程 楽しい事が多い街じゃった!!」

〇古い畳部屋
ひいじいちゃん「渋谷へ行きたいのぅ・・・」

〇古い畳部屋
唯都夏「──って昔ひいじいちゃん言ってたわよね」
莞次郎「唐突になんだよ姉貴」
唯都夏「ひいじいちゃんをシブヤに連れて行く」
莞次郎「は? どうやって? すっげえ遠いのに」
唯都夏「ここにないなら作ればいい 開拓者精神(フロンティアスピリット)を 見せる時だよ!!」
莞次郎「作る・・・?」
唯都夏「そう、今からここをシブヤにする!!」
莞次郎「はぁ!?」

〇平屋の一戸建て

〇平屋の一戸建て

〇平屋の一戸建て
  それから一夜が明け
  朝が来た
  コケー!!
  (朝だぜ)

〇華やかな広場
  わんわん!
唯都夏「ポチは暫くの間ハチ公に改名ね」
ハチ公(元ポチ)「わふっ!?」
唯都夏「これでハチ公像は完成っと」
莞次郎「像じゃなくて生物だけど!?」
ハチ公(元ポチ)「わんわんお」
唯都夏「細かい事は気にしないの ハチ公はお利口だから ずっとお座りしたままでも平気よね」
ハチ公(元ポチ)「わふぅ・・・」
莞次郎「無理しなくてもいいんだぞ ポチ・・・」
唯都夏「準備できたし ひいじいちゃんを連れてきて」
莞次郎「問題ない・・・のかなあ? とりあえず車椅子に乗せて連れてくるよ」
  5分経過
唯都夏「あっ! ひいじいちゃん! こっちこっちー」
ひいじいちゃん「なんじゃ一体?」
唯都夏「ハチ公前で待ち合わせだよ」
ひいじいちゃん「・・・!! おおぅ これは渋谷のハチ公ではないか」
ハチ公(元ポチ)「くーん・・・」
ひいじいちゃん「懐かしいのぅ」
唯都夏「渋谷でデートだよ こっち来てー」
莞次郎「ヨイショっと」

〇平屋の一戸建て
???「・・・」
莞次郎「うお!? 家の前に変な物体が!」
唯都夏「モヤイ像よ」
莞次郎「モヤイ・・・?」
モヤイ?「ヤア! ボク、モヤイダヨ」
唯都夏「ひいじいちゃん 見てー」
ひいじいちゃん「おおぅ!! 懐かしい、懐かしいのぅ」
ひいじいちゃん「ああ、ここはまさに渋谷」
唯都夏「次はこっちだよ」
唯都夏「後は私がひいじいちゃん連れてくわ」
莞次郎「分かった っていうかこれ 着ぐるみじゃね?」
唯都夏「中身は父ちゃんだよ」
莞次郎「はっ!?」
唯都夏「次はスクランブル交差点行ってくるね」
莞次郎「・・・」
莞次郎「っていうか父ちゃん 何やってんだよ!」
モヤイ?「ふっ・・・ 愛する娘と祖父の為なら なんでもやってやるさ」
莞次郎「父ちゃん・・・」
モヤイ?「何も聞くな、息子よ」
莞次郎「・・・姉貴1人で大丈夫かな? 俺もついて行くか」
モヤイ?「モッヤーイ!!」
モヤイ?「モヤーイ・・・」

〇草原の道
唯都夏「ここが、スクランブル交差点!」
莞次郎「ただの一本道だよ!!」
唯都夏「あ、そこ立ってたら危ないかも」
莞次郎「え?」
  ドドドドドドドドドドトドドド
  俺の、俺たちの
  スクランブルがスクランブルするぜ!!
莞次郎「なんか勢いよく交差して走って行ったけど あれは・・・?」
唯都夏「交差するスクランブル」
莞次郎「・・・」
唯都夏「親戚のみんなに協力してもらって ハロウィンの仮装も再現したんだよ あとは・・・」

〇ハート

〇草原の道
唯都夏「ギャルも ・・・いるよ」
莞次郎「姉貴、何故目を逸らすんだ・・・?」
ひいじいちゃん「おおお まさしくここはスクランブル交差点!! ギャルがおるぞおおおおお!!」
「・・・」
唯都夏「喜んでるから問題無し!」
莞次郎「いいの!?」

〇武術の訓練場
唯都夏「この村も坂道多いけど・・・」
唯都夏「楽しい事が沢山あるよ」
唯都夏「色々売ってるし」
莞次郎「この先も俺たちが もっともっと楽しい事を作っていくぜ」
ひいじいちゃん「おぅ・・・ まさにここは いつかの渋谷じゃあ!!」
ひいじいちゃん「ワシの最期の我儘を聞いてくれて ありがとうな・・・」
ひいじいちゃん「あの日の思い出が蘇ってくるわい」
莞次郎「ひいじいちゃん喜んでるな」
唯都夏「良かった」
莞次郎「・・・今更だけど VRでもよかったんじゃねーの?」
唯都夏「分かってないなぁ ひいじいちゃんは映像だけなら もう見てたよ」
唯都夏「だから実際に見て触って シブヤを感じて欲しかったんだよ」
莞次郎「そっか いい思い出になるといいな」

〇空

〇墓石
  それから暫くして
  ひいじいちゃんは
  空へ旅立った
唯都夏「寂しくなるねぇ」
莞次郎「そうだなあ」
唯都夏「・・・」
莞次郎「まぁ、あのシブヤがあったから ひいじいちゃんが元気を取り戻したんだよ」
唯都夏「そうね 最期といいながら あれから6年かぁ」
莞次郎「ひいじいちゃん ギャルに会えるかなあ」
唯都夏「会えるさ、きっと」
ハチ公(元ポチ)「ワンッ」
莞次郎「ハチ公 お前はすっかりその名前で定着しちゃったな」
ハチ公(元ポチ)「ワンワン!」
唯都夏「さて、ご先祖様に報告したから帰ろ」

〇近未来の通路
莞次郎「俺も宇宙船の免許取って 地球に行こうかな」
唯都夏「ひいじいちゃんだって 104歳で免許取ったんだから すぐ取れるさ」
莞次郎「よーし、取るか」
莞次郎「地球ちょっと遠いんだよなぁ この星から」
唯都夏「今頃ひいじいちゃん 地球に着いたかな」
莞次郎「シブヤのお土産楽しみだ」
唯都夏「早く帰って来ないかな」

〇地球
  西暦21××年
  人類は新たな地を開拓すべく
  宇宙へと旅立って行った
  彼らは遠く離れた故郷に帰る日を夢見た
  いつか・・・

〇SHIBUYA SKY
  い つ か の 渋 谷
  ──完──

コメント

  • ひいおじいちゃんの願いを叶えようと家族が渋谷作りを試行錯誤している様子に心が温まります。
    最後のオチは予想外でした!
    まさか他の星が舞台だったとは……!
    そしてマルキュウ(ゴリラ)の微笑みに全て持ってかれました(笑)
    面白かったです!

  • おじいさんとその家族のキャラクターが魅力的で、最後までノリノリで読ませていただきました!面白かったです!

  • いい話や…と思ってたら最後のどんでん返しにやられました(笑)
    シュールで勢いのあるノリが楽しかったです😆

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