好きの在処

夏名果純

第7話 大事な約束 (脚本)

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夏名果純

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〇ファンシーな部屋
  えっ、花奈の家に行ったの?
  ・・・ 抜けがけされた
  修司の声には驚きと悔しさが入り混じっているように聞こえた。
水杉花奈「そんな、電話くれただけですごくうれしいよ」
  でも、電話じゃチョコは渡せないよ
水杉花奈「えっ?」
  ほら、この間、新発売したばかりのチョコ、花奈が好きそうだなと思ってチェックしてたのに
水杉花奈「そ、そうなんだ・・・」
水杉花奈(修司も私がチョコ好きなこと、よく知ってるよね・・・)
水杉花奈(謙弥にチョコもらったの、ちょっと言いにくいな)
  ・・・ねえ、花奈
水杉花奈「何?」
  改まった修司の声に、花奈は電話越しに耳をすませる。
  まだ記憶が戻ってないのに、こんなことを言うのは急かすことになるかもしれないけど
  僕は告白の返事を待ってるから
水杉花奈「修司・・・」
  プレッシャーになると思って避けてきたけど、もしいいのならもう一度告白させてほしい
  電話じゃなくて、ちゃんと直接、好きだって
水杉花奈「・・・・・・」
  じゃあね、今日はもう切るよ。
  おやすみ
水杉花奈「お、おやすみなさい・・・」
  特に花奈からの言葉を待つことはなく、修司は優しい声で挨拶を口にすると電話を切った。
水杉花奈(修司も・・・きっと謙弥も、2人は私の告白の返事を待ってる)
水杉花奈(もしこの先、記憶を取り戻せなかったとしても、ちゃんと2人に返事をしないと・・・)

〇教室
  7月1日(月)
  ──放課後。
水杉花奈「今日も終わったー!」
松木明日香「お疲れ。花奈、一緒に帰──」
  明日香が花奈に声をかけようとした時、教室のドアが開いた。
吉岡修司「花奈」
水杉花奈「あれ、修司、どうしたの?」
吉岡修司「よかったら、一緒に帰らない?」
吉岡修司「ちょっと、花奈と一緒に寄りたいところがあって──」
  再び教室のドアが開く。
川崎謙弥「花奈、一緒に帰ろうぜ!」
水杉花奈「謙弥・・・」
川崎謙弥「・・・あれ、修司。いたのか」
  修司と謙弥はお互いをにらむように見つめ合う。
吉岡修司「謙弥も花奈と一緒に帰ろうとしてたの?  奇遇だね」
川崎謙弥「・・・そうだな」
松木明日香「謙弥くんと修司くんの間に、火花が見える・・・」
水杉花奈「わ、私にも見えるよ・・・」
  こそっと耳打ちしてきた明日香に、花奈も小さくうなずいた。
松木明日香「ほら、ここは花奈がフォローしないと!」
水杉花奈「えっ、私!?  そんなこと言われても、どうしよう・・・?」
  明日香に背中を押されて、うろたえながらも花奈は2人の前に歩み出た。
水杉花奈「ま、まあまあ! 2人とも・・・そうだ!  もうすぐ夏休みだよね」
川崎謙弥「なんだよ、いきなり」
吉岡修司「唐突だね」
水杉花奈「唐突なんだけど、今思い出したの!  今年も花火大会、3人で一緒に行こうね!」
  中学生になった頃から少しずつ距離ができ始めた花奈たちだったけれど
  それでも、花火大会だけはなぜか必ず3人で一緒に行っていた。
  だから、花奈は当たり前のように笑顔で言ったのだけど──。
吉岡修司「花奈・・・」
川崎謙弥「・・・・・・」
  修司と謙弥は花奈の顔を見つめて、なぜか言葉を失ってしまった。
水杉花奈「あれ、2人ともどうしたの?」
水杉花奈(なんだか、急に浮かない顔に・・・)
吉岡修司「やっぱり覚えてないか」
水杉花奈「何を・・・って私、まだ何か忘れてるの・・・?」
  花奈が不安そうに、2人の顔を交互に見つめる。
川崎謙弥「いや、しょうがない。気にするな!」
吉岡修司「うん、そうだよね」
  2人はまるで自分に言い聞かせるかのようにそう言った。
水杉花奈「・・・ねえ、どういうことなの? 教えて」
吉岡修司「とりあえず、ここじゃちょっと・・・」
川崎謙弥「ああ。場所を変えようぜ。 っつうか、今日は3人で帰るか」
吉岡修司「そうしようか」
  2人の提案にうなずいて、花奈はカバンを手に持つ。
水杉花奈「明日香、ごめんだけど・・・」
  顔の前で両手を合わせる花奈に、明日香は笑顔でうなずく。
松木明日香「いいっていいって。 私のことは気にしないで」
松木明日香「じゃあ、また明日ね!」
水杉花奈「うん、またね」
  申し訳なく思いながらも明日香に手を振ると、花奈は謙弥・修司と教室を後にしたのだった。

〇通学路

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