アパルトとヘイト2(脚本)
〇養護施設の庭
エレン「ねぇヘイト、用事ってなに?」
アパルト ヘイト「僕、真剣なんだ!君に」
エレン「急に何、ど、ど言う事?」
アパルト ヘイト「だから、君の事が、す、好・・・」
クバ「何してんだ!エレン!」
エレン「ヘイトと話しをしてて──」
クバ「そんなヤツにかまうな!行くぞ!」
エレン「・・・うん」
アパルト ヘイト「ねぇ!エレン!君はどうなの?」
エレン「えっと・・・」
クバ「エレンは、お前なんか好きじゃねぇよ!」
アパルト ヘイト「僕は、エレンに聞いてるんだ!」
アパルト ヘイト「ねぇ!エレン、どうなの!」
エレン「怒ってる、ヘイト怖い」
アパルト ヘイト「待ってよ、エレン!」
クバ「お前は、引っ込んでろ!」
アパルト ヘイト「怖い?僕そんな表情してたんだ・・・」
この時に、怒りを覚えてたみたい
〇学校の校門
アパルト ヘイト「エレン、どこ行ったんだろ?」
アパルト ヘイト「あっ!エレ・・・」
クバ「エレン、さっきは高圧的な態度を見せてごめん。つい、カッとなって・・・」
エレン「・・・反省してよね」
クバ「・・・うん。君の事になると、熱くなって 申し訳ない」
エレン「いいよ、許してあげる!」
クバ「もう、声を荒げたりしないよ」
エレン「約束ね!さぁ、帰りましょう!」
晴天の霹靂だったよ
〇おしゃれな居間
でも、後日それよりショックな事が起きて
「はい、アパルトです」
「えっ!そんな・・・信じられない はい、はい、──分かりました!」
アパルト ヘイト「どうしたのママ?」
アパルト マリン「今日ね校内で大変な事が起きてね・・・ 学校は休みになったわ」
アパルト ヘイト「なんで?」
アパルト マリン「・・・テレビをつけて」
アパルト ヘイト「テレビ?」
〇学校の校門
アナウンサー「今朝、中学校で男が銃を発砲する事件が発生し、アルフド・クバ君が重症を負いました。犯人はピエロの格好をしており──」
〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「そ、そんな!クバが! しかも、発砲した人って──」
アパルト マリン「エレンの父親よ・・・」
アパルト ヘイト「そ、そんな・・・」
〇学校の校門
アナウンサー「男は、黒人が白人の娘と付き合うなんて許さないと叫んでいたらしく、犯行の動機は人種的差別的な思想が原因だったと考えられます」
〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「ママ?黒人と付き合うっていけない事なの?」
アパルト マリン「・・・──」
エレンの父親は駆けつけた
警察によって逮捕されたんだ──
〇綺麗な図書館
ヘイト「その事件が起こるまでジャガーが苦手でしたが、その事件がきっかけでピエロも大の苦手になりました」
スティーブン「ピエロ・・・ブツブツ」
スティーブン「田舎の町、ピエロ、恐怖心、子供、執着 ブツブツ」
ヘイト「あの?僕の話し聞いてます?」
スティーブン「も、もちろん聞いているよ。さぁ、続けて!」
ヘイト「事件後にエレンは町から遠く離れた親戚の元へ引き取られ、会う事はなくなりました」
スティーブン「それは、とても寂しかっただろうね」
〇川沿いの原っぱ
エレンに会えなくなった悲しさを紛らわす為に4年間ほど、川で泳ぎ続けていました。
アパルト ヘイト「そろそろ、切り上げよう──」
「おいっ!」
アパルト ヘイト「なんでしょう?」
ドニ「お前、もの凄いスピードで泳ぐじゃねぇか! 素晴らしいぞ!」
アパルト ヘイト「そうですか? あっ、僕は、アパルトと言います」
ドニ「アパルトか!どうだ? 本格的に水泳の練習をしないか?」
ドニ「俺は黒人初の水泳コーチを目指してるんだ」
アパルト ヘイト「僕、目指してる大学があるから勉強しないと」
ドニ「そんな事か! なら、その大学は水泳で推薦入学すればいい」
アパルト ヘイト「そんな事出来るの?」
ドニ「今度、開かれる水泳の大会で優勝すればな。 俺とお前なら絶対優勝できるぜ!」
アパルト ヘイト「う〜ん・・・」
ドニ「俺の名前はドニ、気が向いたらいつでも連絡をよこしな!」
ドニ「それじゃ、いい連絡をまってるぜ!」
アパルト ヘイト(どうしようかな──)
〇水泳競技場
庄司「あ、圧倒的すぎる!!」
ドニ「俺の目に狂いは無かったぜ!」
庄司「ありえない、黒人がコーチだなんて──」
水泳の全国大会で新記録を出して優勝し、
目指してる大学に推薦で入学出来たんだ
〇綺麗な図書館
ヘイト「大学でも出場した全ての大会で新記録を更新し、その成績が認められ、日本で行われるオリンピックに出場する事になったんだ」
ヘイト「・・・・・・」
ミック「・・・話を聞いてやれって頼まれてな 少しだけ付き合ってやるよ!」
ヘイト「・・・やぁ、僕の名前はヘイト」
ミック「俺は、ミック。ロックミュージシャンだ! いつか、最大で最強のロックバンドになる!」
ヘイト「最恐?僕はピエロとジャガーが苦手だな」
ミック「最恐違いだが、ジャガーは最高だぜヘイト! さぁ、続きを話せよ!」
〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「僕ね、水泳のオリンピック代表に選ばれたよ」
アパルト マリン「ヘイトが!?信じられない!」
アパルト マリン「確か、次は日本で行なわれるのよね?」
アパルト ヘイト「うん。日本の小説や文化に興味があったからとても嬉しいよ」
アパルト マリン「ママも応援しに行くわ!」
アパルト ヘイト「ところでね、ママ。今日僕のインタビューが 12時30分からテレビで放送されるんだ」
アパルト マリン「もうすぐじゃない!早くテレビ付けて!」
〇オープンカー
K大統領「皆と一緒に歴史を、アメリカを変えていく!」
K大統領「実は演説で公表しようと思ってる事があるんだ」
S州知事「・・・──」
K大統領「宇宙の彼方に神がいてそれがいずれ地球に やってくる!ってね」
大統領夫人「応援するわ貴方!」
S州知事「・・・歴史は作れるものですよ、大統領」
K大統領「んっ?」
〇巨大ドーム
フロティ「ネルソン、貴様は逮捕だ!」
ネルソン「なっ!」
ネルソン「ここで捕まろうとも、私には、私には──」
フロティ「黙れ!」
ネルソン「私には夢がある!」
〇おしゃれな居間
アパルト マリン「ごめん。ママ、チャンネル間違えてるみたい」
アパルト マリン「正しく切り替えないと──」
アパルト ヘイト「焦らなくていんだよ、ママ」
〇路面電車
アナウンサー「今年開催されるオリンピックにより東京の 街並みが変わっています。その一方で──」
〇銀座
アナウンサー「みゆき通りには「みゆき族」という若者が、大きな紙袋を手に待ち目的もなく町をうろついています」
青年 1「おれのファッションが最先端だぜ」
青年 2「君のファッションは違うと思うよ── それ「VAN」の紙袋じゃないし」
青年 2「僕こそ本物さ!」
青年 1「あん?「米袋」じゃねぇかそれ」
青年 2「本に書いてあった服装は僕の方が近いから! それに袋は米袋でも良いらしいよ」
青年 1「嘘つくんじゃねぇ、ほら吹き野郎が!」
青年 2「なんだと!誰が決めたか分からないルールを 信用するなんて、アンタよほど頭が悪いんだろうな!」
青年 1「それは、テメェだろ!」
青年 2「は?上等だよ」
「やってやるよ!」
アナウンサー「街が発展していく明るい話題と共に、安逸をむさぼる若者の増加による治安の低下という新たな問題も生まれているようです」
アナウンサー「中継は以上です──」
???「What are you doing?(何してんの?)」
アナウンサー「え?えっと、英語は、その、あの〜」
〇おしゃれな居間
ヘイト「今の声って、エレン!?」
アパルト マリン「暫く会ってないのよ?声なんて分かる?」
ヘイト「エレンだよ!目元のホクロも薄くなってたけど絶対にそうだ!」
ヘイト「ママ!僕今から日本に行ってくるよ!」
アパルト マリン「ちょ、ヘイト!」
〇空港の出入口
ヘイト「ハァハァ── (エレン!エレン!)」
〇駅前広場
青年 2「昨日の天気が嘘みたいだ」
青年 1「空にいる神様が大泣きしてるんだろうよ」
青年 2「そんな訳ないだろ」
ヘイト「エレン!」
「うわっ!」
ヘイト「エレン!どこにいるの!エレン!」
青年 2「外人?」
ヘイト「Hey do you know Ellen? (なぁ!エレンを知らないか?)」
青年 2「え、英語!?」
青年 2「えっと、アイアム、ノット、スピーク・・・」
ヘイト「That's enough! (もういい!)」
青年 2「外国人って自己中心的なイメージだけど、 その通りだったな」
青年 1「あまり関わりたくないぜ」
青年 2「英語もまともに喋れなかった・・・ 俺たちなんかカッコ悪くないか?」
青年 1「大丈夫。カッコ悪くないぜ!」
青年 2「・・・中身がだよ」
〇繁華な通り
アパルト ヘイト「エレン!」
アパルト ヘイト「見つけた!」
アパルト ヘイト「待ってエレン!」
〇道玄坂
アパルト ヘイト「エレン!」
〇歌舞伎町
アパルト ヘイト「エレン!」
アパルト ヘイト「エレン!」
エレン「ヘイト?」
アパルト ヘイト「エレン!」
エレン「ど、どうしてここに?」
アパルト ヘイト「エレン、ようやく追いついた!テレビに映ってたから周辺を探してたんだ!」
エレン「テレビ!?──あの時の!」
アパルト ヘイト「また君に会えたなんて、奇跡だよ!」
エレン「それよりもヘイト、笑えるようになったんだ」
アパルト ヘイト「えっ?僕、今笑ってる?」
無意識だったけど嬉しい表情をしていたんだ
エレン「おもいっきり笑ってる!」
アパルト ヘイト「僕ね、水泳の東京オリンピックの代表に選ばれたんだ!エレンの夢は叶った?」
エレン「思い描いた歌手とダンサーには程遠いけどね」
アパルト ヘイト「すごいや!エレン!」
ロイ「おい?エレン、何してんだ?」
エレン「あっ、ロイさん、えっと・・・」
ロイ「何だコイツ?」
エレン「む、昔の友人よ」
エレン「ごめんねヘイト、彼は軍人でね、少し気が荒いのよ」
ロイ「ふんっ。休暇は終わりだ!日本を発ってベトナムに行くぞ」
エレン「ベトナムか・・・了解」
アパルト ヘイト「僕はヘイト。貴方はエレンとどんな関係なんですか?」
ロイ「うるせぇ!どうだっていいだろが!」
アパルト ヘイト「ねぇエレン。仕事って具体的に何してるの?ベトナムって今、戦争中じゃない?」
エレン「えっと、それは・・・」
エレン「一応、アメリカの海軍所属で、その・・・」
アパルト ヘイト「一応?所属?ベトナムに行く必要があるの?」
ロイ「いちいち、うるせぇ奴だな!」
ロイ「ベトナムは今、自国の兵士達が感染症と豪雨の中、血と泥にまみれ、必死に戦ってんだよ!」
アパルト ヘイト「そこまでして、戦う理由は何なの?」
ロイ「赤旗に銃弾を浴びせなければ国が共産主義に取り込まれる」
アパルト ヘイト「でたらめだよ、そんな事!」
ロイ「でたらめなもんか!共産主義化を食い止める為に銃を撃つ。それだけだ」
エレン「ヘイト今の私の仕事は慰問団っていってね、あらゆる戦地へ赴いて兵士たちの混乱を癒す事なの。例えそこが危険な場所でも」
エレン「兵士の中には民間人を間違って殺し、理性を失った兵士もいる。そんな彼等にとって私達、慰問団は唯一の心の救いなのよ」
アパルト ヘイト「兵士の心を救う?自分たちで銃弾を浴びせておきながら?矛盾してるよ!」
ロイ「もういっぺん言ってみろ!俺達、慰問団が兵士の士気を上げ続けなければアメリカは共産主義に飲み込まれる」
アパルト ヘイト「デマを信じて戦う兵士達が、勝てる訳ない 横暴だ!」
ロイ「知ったような口を利きやがって!オラァ!」
エレン「やめて!」
エレン「痛っ!」
アパルト ヘイト「エレン!」
アパルト ヘイト「エレンに手をあげるなんて許さない!」
ロイ「かかってこいよ、クソ金髪野郎が!」
エレン「2人ともやめて!」
警官「お前ら!何やってる!」
ロイ「チッ、めんどくせぇな!行くぞエレン!」
アパルト ヘイト「エレン行っちゃダメだ!アイツと一緒にいても幸せになれない!僕と帰ろう!」
エレン「心配してくれてありがとうヘイト。でも、私に仕事を与えてくれたのも彼なのよ。少し乱暴な所もあるけど」
エレン「だからね、今は彼と一緒に仕事してたいの ごめんねヘイト」
ヘイト「・・・」
そう言ってエレンは軍人の男と一緒にベトナムに行ってしまったんだ
〇綺麗な図書館
ヘイト「どう日本から帰国したか記憶にないけど家についたら全身びしょ濡れで外は嵐だったのを覚えてるよ」
ミック「なぁヘイト、去年ロンドンは強力な嵐に見舞われてな、俺は小さな子供や老人、が吹き飛ばされ、右往左往する姿を見たんだ」
ヘイト「シェルターに避難が必要だね」
ミック「だな。しかし、その光景は俺達が考えていたよりも、はるかに世の中が悪くなっていくかの様だった。例えるなら地獄さ!」
ヘイト「地獄?」
ミック「そう。嵐は俺達を確実に地獄に導いていた」
ヘイト「なんか、ピンと来ないな」
ミック「ヘイトよ、嵐が去った後の町で、どんな奴の姿が印象的だったか分かるか?」
ヘイト「飛ばされて来た大量のゴミを片付ける人?」
ミック「残念!ハズレだ」
ヘイト「えっ?」
ミック「印象に残ったいたのは──」
ミック「声のデカいヤツが笑っている姿さ」
ヘイト「その人は、家でも飛ばされてしまって 頭が混乱していたのかな?」
ミック「さぁな。でも、ギラッとした何かを感じたぜ」
ミック「ほれ、続きを話せよ」
ヘイト「えっ?あ、うん」
ヘイト「その後、再度東京に行ってオリンピックに出場したけど、結果は準決勝敗退に終わったんだ」
ミック「なんだよ、メダルなしか」
ヘイト「簡単にメダルが取れるほど甘くないみたい」