好きの在処

夏名果純

第6話 ふたりで過ごす時間(脚本)

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〇ファンシーな部屋
  花奈が返信してから、すぐに謙弥は花奈の家にやって来た。
川崎謙弥「よう! これ・・・」
  そう言って謙弥が差し出したのは、コンビニの袋だった。
水杉花奈「何?」
  花奈が中をのぞくと、花奈が好きでいつも食べているチョコと、新発売のチョコが入っている。
水杉花奈「あっ、これ気になってたヤツ!  ・・・って、またチョコ?」
川崎謙弥「けど、これが一番お前の喜ぶヤツだろ?」
  得意そうに笑う謙弥に、花奈もおずおずとうなずく。
水杉花奈「確かに・・・ありがとう」
川崎謙弥「おう。さてと」
  謙弥はクッションを背に適当に寝転ぶと、持ってきた漫画雑誌を広げて、読み始めた。
水杉花奈「・・・えっと?」
川崎謙弥「なんだよ?  お前もなんか好きなことしてろよ」
水杉花奈「う、うん・・・」
  まだコンビニの袋を手に下げたまま固まっていた花奈はとりあえずそれを机の上に置き、やっぱり謙弥に声をかける。
水杉花奈「ねえ、チョコを渡しに来てくれたの?」
川崎謙弥「まあな。別に、いてもいいだろ?」
水杉花奈「うん、今日は出かける予定もないけど・・・」
水杉花奈(・・・まあ、いっか)
  とことんマイペースな謙弥を目の当たりにして、花奈はもうそれ以上謙弥を気にしないことに決めた。
水杉花奈(私も買ったばかりの雑誌、まだ読んでないんだよね)
水杉花奈(・・・あっ、その前に明日香からきてたメッセ、まだ返してなかった)
  花奈は明日香に他愛もない雑談を返すと、漫画を読み続けている謙弥のそばで、同じようにファッション誌を広げて読み始めた。
水杉花奈「ねえ、早速チョコもらっていい?」
川崎謙弥「ああ。もうお前のなんだから好きにしろよ」
水杉花奈「そんなこと言いながら、今一気に食べたら──」
川崎謙弥「太るぞ・・・って、忠告はするけどな」
  ニヤッと笑う謙弥に、花奈はふくれっ面になる。
水杉花奈「もう、やっぱりそう言う」
水杉花奈「・・・いいや、食べちゃお」
川崎謙弥「おっ、開き直ったな」
水杉花奈「なんとでも言って!」
川崎謙弥「ハハッ!」
水杉花奈「・・・うん、美味しい! 謙弥もいる?」
川崎謙弥「おう。じゃあ、くれ」

〇ファンシーな部屋
  それからしばらくの間、同じ部屋にいながら話すどころか目も合わさず、花奈と謙弥はそれぞれ自分の好きなように過ごした。
水杉花奈(そういえば、この感じ・・・懐かしいなあ)
水杉花奈(謙弥がゲームしているそばで、私は絵を描いたり本を読んだりしてたっけ)
水杉花奈(あれはたぶん、小学生くらいの時だったかな)
川崎謙弥「・・・・・・」
  謙弥の横顔を見つめながら、花奈は思う。
水杉花奈(私も謙弥もすっかり大きくなっちゃったけど、このまったりした雰囲気は変わらないなあ)

〇ファンシーな部屋
  日が傾いてきた頃、漫画を読み終えたらしい謙弥が顔を上げた。
川崎謙弥「じゃあ、そろそろ帰るわ」
  ひとつ伸びをして、謙弥が立ち上がる。
水杉花奈「・・・そう?」
  座ったままの花奈が謙弥を見上げると、謙弥はじっと花奈の顔を見つめ返して口を開く。
川崎謙弥「なんだよ、寂しそうだな」
水杉花奈「べ、別に、そんなことっ!」
  思いがけない言葉が返ってきて、花奈はとっさに顔をそらした。
川崎謙弥「まっ、チョコ食って元気出せよ」
水杉花奈「えっ?」
川崎謙弥「じゃあな」
  さっさと部屋を出ていく謙弥の後を、花奈は慌てて追う。
水杉花奈(もしかして、私のことを心配して来てくれたの?)

〇飾りの多い玄関
  玄関でスニーカーを履いている謙弥に、花奈は控えめに声をかける。
水杉花奈「謙弥、ありがとう・・・」
  謙弥は花奈の顔を見ずに答える。
川崎謙弥「別にいいって」
川崎謙弥「花奈って1人で自由に過ごしたいくせに、本当に1人だったら寂しがるだろ」
水杉花奈「・・・確かに、そういうところがある、かな?」
川崎謙弥「・・・俺もお前とこんな風に過ごすの、嫌いじゃねぇしな」
水杉花奈(謙弥・・・)
川崎謙弥「じゃあ、またな」
  最後は花奈に笑みを向けて、謙弥は帰っていった。
水杉花奈(私のこと、よくわかってる・・・)

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