読切 信じる心が奇跡を起こす(脚本)
〇ハチ公前
20xx年8月15日
ハチ公前広場
星七 出「ふぅ。着いた着いた」
星七 出「今年で7年目。ここに来るのも7回目になるのか。今年こそは来てくれるかな・・・」
〇黒
それは7年前の8月15日の事
〇渋谷駅前
星七 出「ここが有名なスクランブル交差点か」
星七 出「はぁ凄いな。どこを見ても人、人、人。テレビで見るよりずっと多いな」
星七 出「さてと、どこから見て回ろうかな」
〇渋谷駅前
信号が青へと変わり
スクランブル交差点へ足を踏み入れた僕は
四方八方から迫る人を避けながら前へ進む
そして、交差点の真ん中にさしかかった時だった
周りに気を取られていた僕は
前から歩いてきた1人の
女子高生とぶつかってしまった
〇渋谷駅前
???「キャ!」
???「痛ったいわね! どこ見てんのよ!」
星七 出「わっ! す、すみません!」
???「まったく。気をつけなさいよね」
星七 出「あ!これ、落としましたよ!」
僕は、彼女が落としたであろう
猫のぬいぐるみのキーホルダーを
拾いあげると彼女の後を追った
???「え!?何?何?ちょっと、ついて来ないでよ!」
星七 出「ちょっと待ってよ!これ、君のだろ?」
???「ついて来ないで!」
星七 出「何もいきなり怒鳴らなくても。あ!待って!」
〇東急ハンズ渋谷店
星七 出「まいったな。見失っちまった」
逃げるように人混みに紛れていった彼女の姿は
あっという間に見えなくなってしまった
探すことを諦めた僕は、また1人渋谷の街を歩き始めた
〇高架下
すると、それは高架橋にさしかかった時だった
???「い、痛い!離してよ!警察呼ぶわよ!」
???「うるせぇ! さっさと車に乗れ!」
男は、近くに停めてあった車に彼女を
無理やり連れ込もうと、その手を引っ張った
???「痛い!痛いってば!離して!離してよ! 誰か!助けて!誰かーー!!」
恐怖のあまり電柱の影に隠れ
その一部始終を覗いていた僕だったが
彼女の泣き叫ぶ姿に、居ても立っても居られず
気がついた時には、男にタックルをくらわせていた
星七 出「早く逃げて!」
???「で、でも」
星七 出「いいから早く!逃げて!」
???「てめぇ離せ!!」
とそこへ、運良く警察官が通りかかった
警察官「そこのキミたち!何をやってる!」
???「ヤベぇ!警察かよ。オラ離せ!」
男は僕を跳ね除けると
車を置き捨て、その場を走り去っていった
警察官「コラ!待ちなさい!」
星七 出「・・・助かった」
〇ハチ公前
僕たちは、ハチ公前広場に場所を移した
???「助けてくれてありがとう」
星七 出「お礼なんて、良いって。にしても警察がタイミング良く来てくれてほんと良かったよ」
???「ほんと、そうね」
星七 出「そうだ、コレ。落としたやつ。君のだろ?」
???「うん。そう。せっかく拾ってくれたのにごめんね。急に追っかけられたから怖くなっちゃって思わず逃げちゃった」
星七 出「だ、だよね。ごめん」
???「あ!私、そろそろ行かなきゃ」
星七 出「あ、うん。ごめん。引き止めちゃって」
星七 出「そうだ!名前、聞いてもいい?僕は、星七 出(ほしな いずる)それと、また会えるかな?」
???「良い名前ね。私は、アマノ コトノ。それじゃこのキーホルダーは出に預けとくね」
星七 出「え?何で?」
アマノ コトノ「私ね、訳あってしばらくここには来れないの。次に来られるのは・・・1年後の今日、ううん。もっと先になるかも」
アマノ コトノ「だからそれまであなたが持ってて。再会の証」
星七 出「再会の証か。わかった。そうだ、それなら僕はコレを君に渡しておくよ」
僕はコトノに自分の名前の入った
交通系カード、ウリカを渡した
アマノ コトノ「え!?こんなの預かれないよ」
星七 出「わかってる!けど僕のだって証明出来るものが他にないからさ。お願い!この通り!」
アマノ コトノ「もう。わかったわ。それじゃこれは私が預かる」
アマノ コトノ「それじゃ!バイバイ!」
星七 出「うん。来年、必ず来るよ。バイバイ」
〇黒
あれ以来僕は、毎年欠かさず
8月15日になるとここに来ている
コトノの言葉を信じて
〇ハチ公前
星七 出「やっぱり今年も来ない、か」
???「お兄さんも待ち合わせかい?」
星七 出「え?はい。そうですけど。おばあさんも?」
???「ええ。大切な人とね」
僕はふと視界に入ったおばあさんの
カバンにぶら下がったモノを見て思わず目を疑った
それは紛れもなく、あの時コトノに渡したものだった
星七 出「おばあさん、そのウリカはどこで?」
???「これかい?これは昔、大切な人にもらったんだよ」
星七 出「もしかしておばあさん、アマノ コトノって名前じゃないですか?」
???「驚いたね。そうだよ。私の名前は天野 琴乃」
やっぱり!てことは、もしかして・・・タイムリープ!?
星七 出「僕のこと、覚えてない?」
天野 琴乃「はて?」
???「おばあちゃ〜ん!お待たせ〜!」
え!?この面影は!
星七 出「あ、あのコトノさん、ですよね?」
???「コトノはおばあちゃんですけど・・・」
星七 出「そうだ!コレ!」
僕は、あの時預かった猫のキーホルダーを見せた
???「コレって!?それじゃあなたは」
星七 出「はい!出です!星七 出!」
天野 琴乃「おや。琴音の知り合いかい?」
星七 出「コトネ?」
天野 琴乃「ええ。孫娘の琴音」
星七 出「孫娘!?それじゃタイムリープじゃないの?」
天野 琴音「タイムリープ?フフ。何それ。それはそうと出くん、もしかして毎年ここに来てくれてたの?」
星七 出「うん。毎年欠かさずね」
天野 琴音「嘘!?アレ冗談のつもりだったんだけど本当に信じてたの!?」
星七 出「冗談!?」
天野 琴音「そうよ。だって、いくら助けてもらったからってその日会ったばかりの人に本当の事なんて教えられないもの」
星七 出「そ、そうだよね」
天野 琴音「うん。でも、ごめんね。お詫びに一緒にごはん食べない?いいよね?おばあちゃん」
天野 琴乃「構わないよ」
天野 琴音「そういうことだから、ね?」
星七 出「うん!」
〇黒
それから僕と琴音は度々会うようになった
もちろん友達として、だ
でも、いつかは・・・
F i n
彼の一途さには脱帽です!こんなに思われてたと思うと、琴音ちゃんが彼のことを好きになるのも時間の問題?ですかね。恋が叶いますように。
7年目にやっと出会いましたか。長いですね。でもその長い年数が彼の愛情の深さを感じます。彼女は軽い気持ちだったかもしれないけれど。頑張れ!
助けてくれた恩人に軽はずみに来年の今日あいましょうなんていう高校生がいれば、それを謙虚に受け止め7年越しにその日を待つ男性。二人は以外と惹かれ合う恋愛対象かもしれませんね。