好きの在処

夏名果純

第5話 三人の帰り道(脚本)

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〇教室
水杉花奈「どうして、2人そろって・・・?」
  放課後、花奈のクラスにやって来た謙弥と修司に、花奈は目を丸くする。
川崎謙弥「お前なあ。朝、一緒に行くって言ってただろ」
吉岡修司「花奈ってば、さっさと1人で登校しちゃうんだから」
  謙弥と修司の表情は少し険しかった。
水杉花奈「ごめん。でも、2人とも心配しすぎだよ。 身体はもう本当に大丈夫だから・・・」
川崎謙弥「油断するなっての!」
川崎謙弥「そうは言っても、まだ本調子じゃねぇんだから、用心するに越したことはないだろ」
水杉花奈「謙弥・・・」
水杉花奈(ちょっと過保護すぎるんじゃ・・・なんて言える空気じゃないしなあ)
川崎謙弥「とにかく、帰りは一緒に帰るぞ!」
水杉花奈「そんな、強引な・・・」
川崎謙弥「強引じゃねぇ」
川崎謙弥「別に、俺1人でもいいんだけどよ・・・こいつも一緒についてきた」
  謙弥がちらりと視線を寄越すと、それまで黙っていた修司が口を開く。
吉岡修司「僕が行こうとした時に、そっちがふらっと出てきたんだよね」
川崎謙弥「・・・なんだと!」
水杉花奈(見えないはずの火花が見えるみたい・・・)
吉岡修司「花奈、1人で無理しないで」
吉岡修司「・・・ね、こんな時くらい、幼馴染みに頼ってよ」
水杉花奈「修司・・・、ありがとう」
川崎謙弥「おい! なんで俺には文句言って、修司にはお礼なんだよ」
川崎謙弥「おかしいだろ!」
水杉花奈「だって、会話の流れがそんな感じだから・・・」
川崎謙弥「なんだ、それ!」
吉岡修司「謙弥はさっきから怒りすぎなんだよ」
水杉花奈「本当、そうだよねー」
  ヒートアップしている謙弥に、修司が淡々と返すものだから、花奈も思わずうなずいた。
川崎謙弥「うるさい!」
水杉花奈(ほら、やっぱり怒ってる・・・)
  そんな3人の様子を、教室内で見ている生徒がいた。

〇教室
本谷拓人「・・・ねえ、松木さん。 水杉さんって、あの2人と仲がいいんだね」
松木明日香「ああ、うん。まあ、幼馴染みだからね」
本谷拓人「へえ、幼馴染みなんだ・・・」

〇通学路
  それから、花奈は謙弥や修司と肩を並べて帰ることになった。
川崎謙弥「3人でこうやって帰るの、小学生ぶりか?」
水杉花奈「本当、久しぶりだよね」
水杉花奈(中学生になった頃から、なんだかんだとやっぱり少しは距離ができていったし・・・)
水杉花奈「小学生の時は、3人で一緒に帰ったら家に着くまでがあっという間だった気がするなあ」
川崎謙弥「実際、小学校までも近かったしな」
水杉花奈「それももちろんあったと思うけど」
吉岡修司「あれくらいの時は僕たち、何を話してたんだろうね」
吉岡修司「もう思い出せないなあ・・・」
水杉花奈「本当だね。今と一緒で学校のこととかも話してただろうけど・・・」
  まだ背丈も小さかった自分たちのことに、花奈が思いをはせていると・・・。
川崎謙弥「なあ、腹減らねぇ?」
  唐突に、謙弥が言った。
  見ると謙弥が指を差しているのは、ちょうど通りかかったハンバーガーショップだ。
水杉花奈「えっ、もう?  さっき、お昼ご飯食べたとこでしょ」
川崎謙弥「えー、昼休みなんてもうはるか前だろ?  よし、おやつの時間だ。入るぞ」
水杉花奈「おやつ・・・修司はお腹空いてる?」
  先頭を切って店に入っていく謙弥を追いながら、花奈が修司に聞く。
吉岡修司「お腹に入らないこともないけど、お茶するくらいならって感じだね」
水杉花奈「そうだよねー」

〇ファストフード店の席
  3人は注文を済ませると、程よく混んでいる店内に空席を見つけて座った。
  花奈はシェイクだけ、修司はドリンクとアップルパイを頼んだのに対して
  謙弥のトレーにはドリンクにポテト、それにハンバーガーが2つのっている。
水杉花奈「謙弥、ちょっと頼みすぎじゃないのー?」
川崎謙弥「そうか? これくらい、ぺろっといくけど。 修司こそ、なんか女子みたいな頼み方だな」
吉岡修司「バーガーもちょっと考えたけど、さすがに夕食が入るか気になるからね」
水杉花奈「・・・ふふっ。 本当に、2人って正反対だよね」
川崎謙弥「そうか?」
吉岡修司「そう?」
  謙弥と修司が同時に首をかしげる。
水杉花奈「うん、そうだよ!」
  花奈が笑いながらシェイクに口をつけると、同じように2人も食べ始めた。
水杉花奈(こうして、3人で一緒に過ごす放課後もすごく楽しいけど・・・)
  花奈は謙弥と修司の顔を交互に見つめながら思う。

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