好きの在処

夏名果純

第4話 本谷拓人(脚本)

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〇教室
  花奈に声をかけてきた、本谷拓人(もとやたくと)。
  バスケ部のエースで、女の子によくモテるタイプだ。
本谷拓人「水杉さん、先週はずっと学校休んでたけど・・・、もういいの?」
水杉花奈「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
水杉花奈「もともと、ケガもたいしたことなくて、ちょっと検査で入院が長引いちゃったんだけどね」
本谷拓人「そうなんだ、よかった! 水杉さんがいないと、やっぱり寂しいよ」
  拓斗は満面の笑みを浮かべるが、花奈は首をかしげることしかできない。
水杉花奈「そう?」
水杉花奈(本谷くんとは本当にクラスメイトってだけで、そんなに話してもなかったと思うんだけど・・・)
本谷拓人「もちろん!」
本谷拓人「授業でわからないところとかあったら言ってね」
本谷拓人「ノートなら、いつでも貸すから」
水杉花奈「ありがとう。本谷くん、優しいね」
本谷拓人「・・・ねえ、1こ思ったんだけど」
  不思議そうな顔をして、拓斗が切り出す。
水杉花奈「何?」
本谷拓人「どうして、『本谷くん』なの?」
水杉花奈「えっと、どうしてって・・・?」
本谷拓人「だって、ボクのこと、下の名前で呼んでくれてたよね?」
水杉花奈「えっ? あ、そうだったっけ?」
本谷拓人「うん」
水杉花奈(どうしよう?  私、また覚えてない・・・?)
  その時、後ろから誰かが花奈の肩をたたいた。
松木明日香「おっはよう、花奈! 本谷くんも」
水杉花奈「明日香・・・おはよう」
本谷拓人「おはよう、松木さん。 じゃあまあ、またね」
水杉花奈「う、うん・・・」
  拓斗は特別気にする様子もなく、笑顔で去っていった。
松木明日香「朝からモテモテだね、花奈」
水杉花奈「・・・・・・」
  明日香ににやっと笑われて、花奈は困惑した。
松木明日香「花奈・・・? どうかした? もしかして、気分悪い?」
水杉花奈「ううん。そうじゃなくて・・・」
水杉花奈「ねえ、私って本谷くんと仲良かったっけ?」
松木明日香「うーん、仲がいいというか、一方的に言い寄られてたというか・・・」
水杉花奈「そうなの!?」
水杉花奈「私、本谷くんのこと、拓斗くんとかって呼んでた?」
松木明日香「うん、呼んでたけど」
水杉花奈「ウソでしょ、もう!」
  花奈は再び頭を抱え込んだ。
松木明日香「・・・花奈、なんか怒ってる?」
水杉花奈「怒ってはないけど、混乱してる」
松木明日香「どうし──」
  明日香が聞こうとした時、チャイムが鳴って担任の先生が教室に入ってきた。
担任教師「はーい、席着けよー!」
松木明日香「詳しくは休み時間に聞くから」
水杉花奈「うん・・・」
  明日香に背中をたたかれて、花奈はうなずいた。

〇教室
  そして、迎えた休み時間。
  花奈は明日香と改めて顔を突き合わせた。
松木明日香「お見舞いに行けなくてごめんね。 それは最初に謝っとこうと思ったんだけど」
水杉花奈「いいよいいよ。 たったの二泊だし、気にしないで」
松木明日香「そう言ってもらえると助かる」
松木明日香「それで・・・やっぱり、幼馴染みたちから告白されたことは覚えてないんだ?」
水杉花奈「うん。そのことだけでもすごくショックだったのに、まだ忘れてたことがあったなんて」
松木明日香「花奈、本谷くんのことはそんなに意識してなかった感じだけどなあ」
松木明日香「どうでもいいから忘れたとか?」
水杉花奈「そんな・・・、私、ヒドくない?」
松木明日香「うーん、まあ・・・」
松木明日香「じゃあ、幼馴染みたちと同じように少しは大事な存在だと思ってたからこそ忘れた・・・?」
松木明日香「そんな心当たりは?」
水杉花奈「・・・まるでない」
  花奈は控えめに、首を左右に振った。
松木明日香「じゃあ、やっぱり本谷くんのことはあんまり気にしなくてよし!」
松木明日香「それより、幼馴染みのことなんじゃないの?」
水杉花奈「うん・・・」
松木明日香「まあ、こればっかりはね、焦っても仕方ないだろうしね」
松木明日香「徐々に記憶が戻るのを待つしか・・・」
水杉花奈「そうなんだけど・・・というか、明日香!」
  花奈は突然、明日香の両肩を強く握りしめた。
松木明日香「な、何よ、いきなり!」
水杉花奈「私がどっちの告白を受けようとしてたか知らない!?」
松木明日香「えっ?」
水杉花奈「何かわからないかなあと思って、メッセを見返したんだけど、あの階段から落ちた前日──」
松木明日香「ちょっと待って。私も見てみるから」
  明日香は自分のスマホを取り出すと、メッセの画面を開いて花奈に見せた。

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