〇明るいリビング
咲良 綾「星ちゃん、今月の教材届いたよ～」
咲良 綾「それから、じゃん！」
咲良 綾「星ちゃんのはさみ！」
咲良 綾「まだ怖い気がするけど、もう３歳だもんね」
咲良 綾「付録のチョキチョキ、上手にできるかな？」
星奈「うー？」
咲良 綾「こうやって・・・チョッキン」
星奈「ッキン！」
咲良 綾「上手！」
空　「ふえあぁあ」
咲良 綾「空ちゃん起きたの、こっちは危ないからね」
咲良 綾「はい、よしよし」
咲良 綾「ちょっとバウンサーでゆらゆらしててね」
咲良 綾「星ちゃん、全部切れt・・・」
咲良 綾「こ、これは・・・」
星奈「ッキン！」
咲良 綾「髪の毛は切っちゃダメー!!」
　　それがヘアカットチルドレンとの
　　戦いの幕開けだった────

〇明るいリビング
咲良 綾「叱っても諭してもまるで聞かねぇ・・・」
咲良 綾「そこまで魅惑なのか、ヘアカット・・・」
咲良 綾「幼児の良識に訴えてもダメだ」
咲良 綾「親がしっかりはさみを隔離するしかない！」

〇明るいリビング
咲良 綾「えっ、なんで・・・」
咲良 綾「あー！椅子持ってきて踏み台にしたかー！」
咲良 綾「もっと高く！ はさみ、もっと上へ！」

〇明るいリビング
咲良 綾「頭頂部カットして、妖怪小僧のアンテナみたいになっとる・・・」
咲良 綾「明日幼稚園の入園式なんですけどー!!」

〇明るいリビング
　　そんな戦いの日々にも、終わりは来る。
星奈「はさみ、おかたづけしたよ」
咲良 綾「さすがもうすぐ５歳！」
　　床に散らばる髪の毛は何ヶ月も見ていない。
咲良 綾「じゃあ、プレゼント開けるね」
咲良 綾「ミカちゃんだよ。大事にしてね」
星奈「かわいい！」
咲良 綾「お母さんも子どもの頃大好きだったお人形だよ」
咲良 綾「あの頃は茶色くて外巻きの髪の毛だったけど・・・って」
咲良 綾「・・・なんですぐ全裸にしちゃうのかな？」

〇部屋のベッド
咲良 綾「空ちゃん、ねんねこ・・・」
咲良 綾「寝なーい」

〇明るいリビング
咲良 綾「星ちゃん、空ちゃんも一緒に遊ん・・・」
咲良 綾「え？」
　　か、髪の毛？
　　待って　なんか　金髪もあるよ？
咲良 綾「あ・・・ああ・・・」
咲良 綾「ミカちゃーーーん!!!」
星奈「わあぁん、ごめんなさい～！」
　　そこには斬新な髪型になった
　　ミカちゃん人形がいました。
　　引退してなかった。
　　ヘアカットチルドレン、
　　バリバリ現役でした──
　　そう。親は忘れちゃいけない。
咲良 綾「子どものことは信じていても」

〇地球
「子どもの良識に頼っちゃダメーーー!!」