第55話 戦場の勇者(脚本)
〇工事現場
2021年 イリノイ州 デュページ郡 ネイパービル 氷壁に覆われた街 建設現場構内
斎王、凪園、エル・シッドはただ真っ直ぐ紅色派の中国人達がいる方へ走った。中国人達は一斉に銃を向け、今まさに攻撃をする瞬間
エンチャント魔導法士「全員斎王達の道を作れ!誰にも邪魔させるな!」
エンチャントは出入口に配置された自動車を魔術でワームに作り替え、斎王達を襲いかかろうとする中国人達を襲いかかる
鸞「早く行け斎王!俺達がここを食い止める!」
斎王幽羅「ありがとう皆···凪園、エル・シッドさん、急ごう!」
〇川沿いの道
ネイパービル 氷壁に覆われた街 市街地前
斎王達が市街地前に到着すると、武装した作業員が大勢倒れていた。そしてそれを行ったのが誰かを斎王達は直ぐさま理解した
作業員「す、すいません親方···俺達じゃ手も足も出なくて···」
エル・シッド「気にすんなロドリゲス、立てる奴は立てない奴運んでやれ。今すぐ街の奴らを避難させろ」
作業員「は、はい!おい···立て、親方の指示に従え···!」
作業員達が続々とその場から避難する様子を敵はただジッと見つめていた。そしてその間、敵は増え続けた
斎王幽羅「あれが···アメリカのクローン喧嘩王『アナザー』···どんどん増えていくね」
凪園無頼「何人いようよ関係なくね?形が残らねーくらいぶっ壊せばいいわけじゃん?」
するとエル・シッドは照明弾を天に向かって撃つ。何事かと斎王達が聞こうとした時、エル・シッドは話始める
エル・シッド「はっきり言うぞ、アタシの力じゃアナザーは『破壊できねぇ』。マリアの能力で覚醒状態にしてもらわねぇと弾が当たらねぇんだ」
エル・シッド「救援用の照明弾を撃っといた。じきにボスが来る、それまで持ち堪えるぞ」
斎王幽羅「なら···俺達がどうにかするしかないね。行けそう?凪園」
凪園無頼「やるだけやってみるしかなくね?ダメだったらそん時考えりゃいいし」
エル・シッド「気ぃつけろよ!アナザーは『レーザービーム』を撃てる、当たったらひとまりもねぇからな!」
その言葉の通りアナザー達は全員が斎王達に指を指し、指先が眩く光り始めた
斎王は自身の体を空気と一体化させ姿を消す。まもなくレーザービームが撃たれるその時、2体のアナザーの腕がへし曲がり
大量のアナザーにレーザービームが放たれ、多くのアナザーは瞬時に2体のアナザーに指先を変え、レーザービームを連射する
凪園無頼「やべェ···斎王!風のビート『風神 大竜巻』!」
凪園は直ぐさま走り出し、大竜巻の蹴りを繰り出す。アナザーはそんな竜巻の中に居ながら平然と立っており
凪園に目線を向けると、何かを喋り始めた
アナザー「データ一致率48%、唾液によるDNA称号一致率87%、キックマスター『不帝勇歩』の近縁者発見。サンプルの回収を開始」
凪園、来てくれてありがたいけど俺空気だから攻撃通らないんだよね。だから俺の心配はしなくていいから···
俺に見せて欲しい。凪園らしい『ヤベェ技』
凪園無頼「あははっ!じゃあ心配いらねーじゃん!いいよー?俺は斎王の想いを輝かせる『星座』のような一撃見してやるよ!」
すると凪園はその場で体全身を使ってコマのように回転する。すると徐々に竜巻は収束していき
凪園の足に竜巻が纏われた瞬間、凪園は片手で体を起こしその場で制止しエル・シッドに攻撃を指示する
凪園無頼「エル・シッド!俺ごと撃て!」
エル・シッド「任せな!アナザー共全員ぶっ壊しちまいな、ベイビーフェイス!」
エル・シッドは凪園に言われた通りライトマシンガンを撃ち込む。すると凪園は両手を地面につけ
その場で開脚し、旋回しながら弾丸を足に纏った凝縮された竜巻に纏わせていった
アナザー達は近づこうとするも、エル・シッドの射撃により近づけずにいた。そんな中、凪園は旋回を止め
クラウチングスタートの構えをとり、1歩で一気に距離を詰めた。
凪園無頼「風のビート!『ケイローン・ボレアース!』」
風でできたケンタウロスが現れ弓を引く。以前と違うのは放った矢が『1本ではなかった』所だ。
凪園が一体のアナザーを蹴りつけた瞬間、凪園の足に纏われた竜巻が解き放たれ、今まで纏ってきた弾丸が拡散
アナザー達に次々被弾しながら、被弾した箇所をえぐり取る様に風の刃が切り裂いた。
エル・シッド「やるじゃねぇかベイビーフェイス!その調子でガンガンやってくれ!」
凪園無頼「あっ···がっ··· ··· ···やば、息が···」
エル・シッド「おい、何してるベイビーフェイス!逃げろ!あぁ···クソッ!」
凪園が周囲のアナザーを全て破壊したものの、アナザーは増え続けた。しかし凪園は『大技による弊害』により
呼吸困難になり、胸を抑えその場に倒れ込む。
エル・シッドさん援護を!俺は今空気だから凪園に酸素を大量に送る。けどその間は動けないからお願いします!
エル・シッド「おい忘れたか?アタシの弾丸は当たらねえんだよ、援護したくても···」
エル・シッドさん『当てなくてもいい』。アナザー達を近づかせないようにしてくれればいい
それに今までマリ姉の能力で覚醒状態にしないと弾が当たらないっていうけど、それはあくまで『補助』
エル・シッドさんが『当てる』って気持ちで撃てば、必ず当たる。俺は···そう信じてる。だからお願いだ···
『アナザー達を食い止めてくれ、エル・シッド!』
エル・シッド「ちっ···!わかったよ、やってやるよ!でも期待すんじゃねぇぞ!?」
エル・シッドは近づいてくるアナザー達に向け射撃をするが、アナザー達は弾丸を避け一切被弾することはなかった
エル・シッド「クッソ···!ざけんな、アタシは···アタシは···『役たたず』じゃねぇんだ!」
〇古い洋館
2005年 神奈川県 変化武器専用集合住宅 炉郷荘 中庭
エル・シッド「クソが···!弾丸を切断してんじゃねぇよランスロット!」
ランスロット「悔しかったら私が切断できないような弾丸を撃ってみろエル・シッド、さぁ···チェックメイトだ」
エル・シッドの弾丸を全て切断し、一気に近づいたランスロットの剣はエル・シッドの首を切り落とす1歩手前だった
エル・シッドは最初から勝てない相手とわかっていた為、半ばヤケクソで射撃をしていたが、ランスロットは気づいていた
エル・シッド「ちっ···なんだよ、突然手合わせしたいとか言って一方的にいたぶって終わりかよ···」
ランスロット「あぁ、だがこれでわかった。なぜお父様が『お前を心配しているか』を」
エル・シッド「あ?親父がアタシの心配?何心配してるってんだよ」
ランスロット「お前は『感情によって戦闘能力が大幅に変化する』という特徴がある。相手が弱いと気持ちが昂り、必要以上に威力が上がるが」
ランスロット「逆に相手が強すぎると『勝てない』と思い、気持ちが萎えていつもより『威力が下がる』んだ」
エル・シッド「いや、だってよ···勝てない相手に何したって無駄だろ?じゃあ逃げちまえばいいじゃねぇか」
ランスロットはその発言を聞き、深くため息を着いた後一言言い放つ
ランスロット「『役たたずが』。しばらくお父様に会うな」
エル・シッド「てめぇ···今なんつった!もういっぺん言ってみろ!」
掴みかかるエル・シッドをその場で投げ、ランスロットはエル・シッドの首を絞める
ランスロット「お前のその気持ちが変わらん限り何も変わらん。『逃げ腰の武器なぞ、何の役にも立たん』」
ランスロット「お父様が欲しているには『勇者』だ、お前のような役たたずじゃない。そのまま寝てろ」
エル・シッド「あ···がっ···ランス··· ···ロット···」
あぁ···懐かしいな。ランスロットのクソバカに手も足も出なかった記憶か
親父の『愛剣』名乗るだけあるよな、今思えばこいつの忠告ちゃんと聞いとくべきだったな···
そうすれば今頃アタシはルーキー、いや···『斎王達』をちゃんと守れたのかもな
声が聞こえる。どこか遠くからエル・シッドを呼ぶ声、その声に彼女は耳を傾ける
声は彼女を支えた。暖かでどこか『安心感』のある声、そして声は言葉を放つ
まだだ···!まだいけるよ、エル・シッド!そのまま撃ち続けろ!
当たらなくてもいい、そこに居続けるだけで皆が勇気を貰う!貴女の放つ破壊の轟音は
俺と凪園にとっての『希望』だ!
エル・シッド「斎王··· ··· ···へっ···!らしくねえなアタシもよ!」
エル・シッド「いいぜ、やってやる···最後の瞬間までアタシは···!」
エル・シッド「『戦場の勇者』エル・シッドだ!」
今、夢が醒める
To Be Continued··· ··· ···