第3話 川崎謙弥(脚本)
〇病室(椅子無し)
修司と入れ替わりに、今度は謙弥が花奈の病室を訪ねてきた。
川崎謙弥「お前の好きなもんと思って、いろいろ買ってきた」
謙弥がぶっきらぼうにコンビニの袋を差し出す。
水杉花奈「何?」
花奈が袋をのぞき込むと、中にはチョコケーキ・チョコシュークリーム・チョコプリン・板チョコなど
チョコレートのお菓子ばかりが山ほど入っていた。
水杉花奈「うわー、すごい量!」
川崎謙弥「お前、チョコレート中毒だからな」
そう言って、謙弥が笑う。
水杉花奈「確かにチョコ大好きだし、うれしいけど・・・お金大丈夫だったの?」
川崎謙弥「GWにバイトした分が全部なくなった」
水杉花奈「ご、ごめん・・・」
川崎謙弥「謝んなよ。俺も修司と同じ気持ちだ」
水杉花奈「えっ?」
花奈が顔を上げると、謙弥はまっすぐに花奈を見つめている。
川崎謙弥「やっぱり、泣いてるよりは笑顔のお前が見たい」
川崎謙弥「けど、無理はするなってこと」
水杉花奈「・・・っ!」
川崎謙弥「泣きたくなったら、アイツじゃなくて俺んとこに来いよ・・・」
水杉花奈(やっぱり見られてたんだ・・・! 恥ずかしい・・・)
川崎謙弥「やっぱ、今のは妬けた。 あー、修司に先越された!」
謙弥が悔しそうに叫んだ。
水杉花奈「・・・・・・」
川崎謙弥「あっ、ヤベ! お前、覚えてないんだっけ?」
川崎謙弥「でもさっき、修司となんか話してたような・・・」
水杉花奈「うん。その、明日香に聞いたから・・・」
花奈が言いにくそうにうなずくと、謙弥も少し照れくさそうに顔をそらす。
川崎謙弥「そっか。なら、いいのか。 でも花奈、本当に覚えてねぇのか?」
水杉花奈「うん、さっぱり・・・」
川崎謙弥「そうか、打ちどころが悪かったのかもなあ」
川崎謙弥「まあ、そのうち思い出すだろ」
川崎謙弥「とにかく、ケガがたいしたことなくてよかったじゃん!」
水杉花奈「本当に、そう思わないといけないよね・・・」
視線を落とす花奈の肩を謙弥が軽くたたく。
川崎謙弥「おう、あんま気にすんなよ」
川崎謙弥「思い出せないなら・・・もう一回、ちゃんと言うから」
見ると、謙弥はいつの間にか真剣な表情になって花奈を見つめていた。
川崎謙弥「・・・って、やっぱりさっきの修司と同じことしか言ってねぇし、俺!」
水杉花奈(さっきの、どこから聞かれてたんだろ・・・)
川崎謙弥「とりあえず、だ。 それ食って元気出せ! ・・・なっ?」
水杉花奈「・・・謙弥、ありがとうね」
花奈はコンビニの袋を持ち上げるようにして言った。
川崎謙弥「おう、いいってことよ!」
水杉花奈(謙弥も修司に負けじと、根はすごく優しいんだよね・・・)
いつものように快活に笑う謙弥を見て、花奈も笑顔になったその時。
コンコン・・・と、病室のドアがノックされた。
看護師「水杉さん・・・って、また今朝のあなた!?」
現れた看護師の顔を見るなり、飛び上がる謙弥と焦る花奈。
川崎謙弥「ゲッ、すんません!」
川崎謙弥「じゃあな、花奈!」
水杉花奈「か、帰り、気をつけて!」
川崎謙弥「おう!」
謙弥はペコペコと何度も看護師に頭を下げてから、病室を飛び出していった。
看護師「水杉さん、あなたも注意してくれないと困ります」
水杉花奈「す、すみません・・・」
水杉花奈(面会時間のこと、完全に頭から抜けちゃってた・・・)
〇病室(椅子無し)
6月21日(金)
検査結果は異常なしで、花奈は予定どおり退院することになった。
記憶については経過観察していくしかないとのこと。
水杉花奈(修司も謙弥も、昨日はうれしかったな)
水杉花奈(2人に心配をかけるって思ったら、いつまでもメソメソしていられないよね!)
水杉花奈「よし、元気出そっ!」
水杉花奈(今すぐ思い出せないのならしょうがない!)
水杉花奈(パスワードさえわかれば日記アプリもあるし、少し時間が経てば自然と思い出せるようになるかもしれないし・・・)
花奈は窓の外を見つめて思う。
水杉花奈「・・・でも、私はどう思ってたんだろ?」
水杉花奈(謙弥と修司のこと。 私の好きはどこにあるの? )
水杉花奈(知りたい・・・)
〇ファンシーな部屋
帰宅後、謙弥と修司が一緒に花奈の家まで様子を見にやって来た。
水杉花奈「2人とも、入院中もお見舞いに来てくれてありがとうね!」
吉岡修司「もう身体は平気なの?」
水杉花奈「うん。いつもどおりだよ」
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