chapter13 神々の審判(脚本)
〇おしゃれな居間
アストリッド「・・・よく聞こえなかったな」
アストリッド「もう1回 言えるものなら言ってみなよ」
マーサ・ミラー(島民)「だから、恋です!」
アストリッド「脳が機能してないの?」
アストリッド「百歩譲って、サフィについては おまえの言い分を信じてもいいけど」
アストリッド「スペルロイドに性欲はないよ」
マーサ・ミラー(島民)「ピオくん、スペルロイドなんですか?」
アストリッド「あいつがわたしを師匠と呼ぶ理由」
アストリッド「推測できれば、答えを導き出せるよね」
マーサ・ミラー(島民)「・・・魔法」
アストリッド「魔術を行使する者 すなわちスペルロイド」
アストリッド「おまえらがそう思うんなら あいつもスペルロイドだよね」
アストリッド「それで──」
アストリッド「ピオが魔術を使えると知りながら」
アストリッド「あいつの挙動不審を なぜ性欲と断言したの?」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「・・・3日後の定期船」
ピオノノ・ダイン「乗れるかどうかはボク次第・・・」
ロメオ(ならず者)「よっ、坊主」
ピオノノ・ダイン「なにか用か?」
ブノワ(ならず者)「今の風、おめえの魔法か?」
ピオノノ・ダイン「・・・そうだと言ったら?」
ロメオ(ならず者)「んな怖え顔すんなって」
ブノワ(ならず者)「しっかし、魔王様と全然ちげえよな」
ブノワ(ならず者)「スペルロイドにもいろいろあんだな」
ピオノノ・ダイン「確かに、ボクの魔術は 師匠の足元にも及ばない」
ピオノノ・ダイン「だからこうして研鑽を・・・」
ブノワ(ならず者)「あー、そうじゃねえよ」
ロメオ(ならず者)「スペルロイドのイメージは──」
ロメオ(ならず者)「理屈と理論がお得意で、血も涙もねえ お人形だけあって、人の心もわからねえ」
ブノワ(ならず者)「けど、おめえはそうじゃねえ」
ピオノノ・ダイン「ボクが感情的だって言いたいのか?」
ロメオ(ならず者)「そういう話じゃねえんだよなあ」
ブノワ(ならず者)「な、兄弟!」
ピオノノ・ダイン「・・・暇じゃないんだ 邪魔するなら去ってくれ」
ピオノノ・ダイン「もう一度・・・!」
ブノワ(ならず者)「ほんとに魔法、使えんのか?」
ロメオ(ならず者)「魔法って、恋すると使えねえんだろ?」
ピオノノ・ダイン「・・・恋?」
〇おしゃれな居間
マーサ・ミラー(島民)「なぜ・・・って」
マーサ・ミラー(島民)「見てればわかりますよ」
マーサ・ミラー(島民)「好きな人といるときって 全然違いますもん!」
アストリッド「・・・まあ 気質も似てるし、年も近いし」
アストリッド「王都ヘ一緒に行く約束するくらいだし 互いに好ましく思ってるのは確かだね」
マーサ・ミラー(島民)「そうなんですか!?」
マーサ・ミラー(島民)「それ・・・もう確定じゃ?」
アストリッド「海馬が萎縮してるの?」
アストリッド「スペルロイドに性欲はない」
アストリッド「その理由、おまえも知ってるはず」
〇ステンドグラス
アストリッド「昔は、多くの人間が魔力を持ってた」
アストリッド「魔術を行使できるほどの人間は 限られてたようだけどね」
アストリッド「それも100年前までの話だ」
アストリッド「神々への反逆を企てた悪魔バルヒール」
アストリッド「神々はバルヒールを倒すため 2人の人間に自らの力を与えた」
アストリッド「聖者エレンには暗黒神の力を」
アストリッド「剣士リリムには光明神の力を」
アストリッド「ところが──」
〇森の中
聖者エレン「リリム、なぜ・・・!」
剣士リリム「ごめんなさい、エレン」
剣士リリム「もう、あなたと一緒に戦えない」
聖者エレン「バルヒールは倒すべき敵だ!」
聖者エレン「神々に反逆し、多くの人を苦しめてる」
聖者エレン「きみのご両親も、わたしの友人も・・・」
聖者エレン「そんな男の下に降るのか!?」
剣士リリム「両親を殺されたことは まだ心の整理がつかない」
剣士リリム「でも、彼を愛してしまったの・・・」
〇魔界
悪魔バルヒール「リリム・・・すまない」
剣士リリム「ああ、バルヒール・・・」
聖者エレン「・・・終わったのか」
聖者エレン「なにもかも・・・」
〇黒背景
光明神リーグ「なんということだ 我々の世界が・・・」
暗黒神ルーネ「海は荒れ、大地はひび割れ 多くの生命が失われた」
暗黒神ルーネ「元の姿を取り戻すのに どれほどの年月が必要か」
光明神リーグ「我々が授けた叡智を このような争いに使うとは」
光明神リーグ「やはり魔術は、人間には過ぎた代物だ」
光明神リーグ「性欲で脳機能に異常をきたす愚物に 我々の叡智はふさわしくない」
暗黒神ルーネ「だが、人間はこれまで魔術とともにあった」
暗黒神ルーネ「戦火に焼かれた今、魔術を奪えば 今度こそ滅びるだろう」
光明神リーグ「では、こうしよう──」
〇崩壊した噴水広場
「エレン様・・・」
「魔術を使えなくなった今 我々はどうすれば・・・」
聖者エレン「神々は最後の慈悲をくださった」
聖者エレン「恋愛感情を持たない人間に限り 魔術の行使を許す・・・と」
聖者エレン「・・・恋は人を狂わせますから」
「しかし、そんな人間は どこにもいないのでは」
聖者エレン「ここにいます」
聖者エレン「魔術を使える数少ない・・・」
聖者エレン「もしかしたら最後の人間として」
聖者エレン「各地を巡り、みんなを助けます」
〇荒廃した街
〇森の中
〇噴水広場
聖者エレン「やっと落ち着いたか」
聖者エレン(そうだ 街角にできた店へ行ってみようかな)
聖者エレン(久々に甘いものでも食べて・・・)
町民の子ども「エレン様、大変だ!」
町民のおばさん「隣の村で魔物が出たそうよ」
聖者エレン「・・・そうですか すぐに向かいます」
「さすがエレン様!」
「エレン様がいらっしゃれば なんの心配もいらねえや」
「どうか、わたしどもをお導きください!」
〇山中の滝
聖者エレン「・・・はあ」
聖者エレン「世界が平穏を取り戻すこと わたしの力でみんなを助けること」
聖者エレン「あれほど望んでたのに、なぜ・・・」
聖者エレン「これはわたしが望んだことだ」
聖者エレン「頑張ろう」
聖者エレン「今日も、明日も、明後日も・・・」
聖者エレン「・・・いつまで?」
聖者エレン「しまっ・・・」
〇黒背景
「エレン様が死んだ!?」
「そうと決まったわけじゃない」
「けど、隣村へ向かって以来 お姿を見かけない」
「では、ほんとに・・・?」
「これからどうすれば・・・」
「魔法を使える人間を探して──」
「そんな人間いるわけ──」
「なら造ればいいんだ──」
「魔法を使える人型の生命を──」
〇おしゃれな居間
アストリッド「魚が空を飛べないように 鳥が海を泳げないように」
アストリッド「人形は恋をしない」
アストリッド「・・・人間がそういうふうに造った」
マーサ・ミラー(島民)「で、でも、魔王様・・・!」
アストリッド「紅茶でいいよね」
マーサ・ミラー(島民)「はっ、はい」
マーサ・ミラー(島民)「・・・・・・」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「・・・なんのことだ?」
ロメオ(ならず者)「すっとぼけるなよ!」
ブノワ(ならず者)「この前、おめえとあのガキ──」
〇海辺
ブノワ(ならず者)「なんかイイ雰囲気で しゃべってたじゃねーか」
ロメオ(ならず者)「そうそう 2人で海なんか見ちゃってよ」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「みっ、見てたのか!?」
ブノワ(ならず者)「魔王様がこえー顔で走り回ってたから とうとうぶっ殺しに来たかと思ってよ」
ロメオ(ならず者)「どっかに隠れるかって言ってたら 偶然、おまえらを見かけたんだよ」
ロメオ(ならず者)「坊主、おまえには悪いことしちまったな」
ブノワ(ならず者)「俺たちゃ、愛し合う奴らに 割って入る趣味はねえ」
ロメオ(ならず者)「犬に蹴られたくねーもんな」
ブノワ(ならず者)「それを言うなら狼だろぉ?」
ピオノノ・ダイン「・・・馬だ」
ブノワ(ならず者)「にしてもよ、いい加減 かわいい子と遊びてえよな」
ロメオ(ならず者)「3日後に定期船が来るだろ?」
ロメオ(ならず者)「いい感じの子が乗ってれば──」
ピオノノ・ダイン「まっ、待て!」
ピオノノ・ダイン「まさか、愛し合う奴らっていうのは」
ピオノノ・ダイン「ボクとサフィのこと ・・・なのか?」
〇クルーザーのデッキ
船乗り(なんとか乗船できたか)
船乗り(・・・これからどうなるんだろう)
「フローレス」
Dr.インタリオ「No.13が島のどこにいるか、わかるのか」
Dr.インタリオ「・・・サントエレン島には 恐ろしい魔王がいるらしい」
Dr.インタリオ「強大な魔力を持つ、冷酷な魔術師」
Dr.インタリオ「ベルクライン軍の一個中隊を 一瞬で壊滅させたという噂もある」
船乗り「魔王・・・」
船乗り(そういえば、お坊ちゃんは 魔王を探すって・・・)
フローレス・リング「魔術師など恐るるに足らず」
Dr.インタリオ「スペルアブソーブ・・・」
フローレス・リング「サフィリーンを生成したときの副産物だ」
「あの・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「お話し中、すみません」
シーラ・オブ・ワーズワース「貴方はお医者様ですか?」
Dr.インタリオ「・・・ええ」
シーラ・オブ・ワーズワース「よかった!」
シーラ・オブ・ワーズワース「連れの体調が悪くなってしまって」
フローレス・リング「この男が看たところで 助けられるとは思えんがな」
Dr.インタリオ「フローレス・・・!」
フローレス・リング「心当たりがないとでも?」
シーラ・オブ・ワーズワース「あ、あの・・・」
Dr.インタリオ「ああ、すまない」
Dr.インタリオ「連れて行ってくれ 微力ながら尽力しよう」
シーラ・オブ・ワーズワース「はっ、はい」
フローレス・リング「・・・ふん」
〇豪華なクルーザー
〇クルーザーのデッキ
Dr.インタリオ「船酔いだ」
Dr.インタリオ「鎧を外し、安静にさせたほうがいい」
シーラ・オブ・ワーズワース「だいじょうぶ?」
侍女ディアナ「申し訳ありません・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「いいから、室内で休みましょう」
Dr.インタリオ「では、わたしはこれで」
シーラ・オブ・ワーズワース「ありがとうございました」
シーラ・オブ・ワーズワース「奥様と仲直りできるよう、お祈りします」
Dr.インタリオ「いや、あいつは・・・」
シーラ・オブ・ワーズワース「ディアナ、行きましょう!」
Dr.インタリオ「・・・・・・」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「おまえたちの勘違いだ」
ピオノノ・ダイン「ボクは魔術師」
ピオノノ・ダイン「・・・いや」
ピオノノ・ダイン「おまえたちからすればスペルロイドだ」
ピオノノ・ダイン「人形は恋をしない」
ロメオ(ならず者)「そりゃ、魔王様がお得意な 理屈と理論の話だろ?」
ロメオ(ならず者)「理論と現実が違うなんて、よくあるぜ?」
ブノワ(ならず者)「まあ待て、兄弟」
ブノワ(ならず者)「おめえ、あのガキに惚れてねえって?」
ピオノノ・ダイン「そうだと言ってる」
ブノワ(ならず者)「なら、俺たちのどっちかが あのガキといい関係になっても──」
ピオノノ・ダイン「やめろッ!」
ピオノノ・ダイン「・・・あっ」
ピオノノ・ダイン「お、おまえたちのような 放辟邪侈な奴らに・・・」
ピオノノ・ダイン「大事な友人を任せられるはずないだろ」
ロメオ(ならず者)「んなムキになるなよ」
ブノワ(ならず者)「魔王様には内緒にしてやるからよぉ」
ピオノノ・ダイン「・・・っ」
〇黒
「殿下に横恋慕とは恐れ多い」
「ダイン家の長男とはいえ 卑しい庶子の分際で」
「思い上がりも甚だしい」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「・・・人形は! 恋なんかしない!」
ピオノノ・ダイン「それを証明するために!」
ピオノノ・ダイン「ボクは・・・ずっと・・・!」
〇島の家
アストリッド「バカどもの安い挑発に乗っちゃったね?」
アストリッド「乗るなら乗るでいいけど 冷静さは保たないとね」
〇海辺
ピオノノ・ダイン「・・・ボクが」
ピオノノ・ダイン「サフィを大事に思ってるのは事実だ」
ピオノノ・ダイン「初めてできた友だちで」
ピオノノ・ダイン「初めてボクを・・・」
ピオノノ・ダイン「初めて・・・」
ロメオ(ならず者)「おい、坊主?」
ピオノノ・ダイン「・・・言葉で説明するよりも」
ピオノノ・ダイン「行動で示したほうが早い」
ピオノノ・ダイン「証明してみせる・・・!」
ピオノノ・ダイン「ボクは欠陥品じゃない!」
ピオノノ・ダイン「――風よ! ボクの声に応えろ!」
ならず者たちがなんだかイイ奴に見えてきました。笑
恋と魔法が表裏一体になった理由、スペルロイドができた理由…何とも切ないです。
色んなキャラが島に終結し、物語が一気に動き出す予感。ピオが闇落ちしそうなのが心配ですが、彼がこの先、恋と魔法をどう選びとっていくのか、楽しみにしています^^
ならず者と島民ちゃんに頼る🤣🤣🤣
いえ、脇役の上手い使い方です!(主人公級の奴ら、大体常識知らないものですし!)
「俺らがあのコと付き合っても文句ねぇよなぁ!byならず者」は確かに、で。
……え、ピオ君が急にサフィちゃんに冷たくしちゃってきたらどうしましょう……サフィちゃんめっちゃ可愛く泣いてしまう……(?)。
島民の少女さん、そしてならず者さんたちに遂にお名前がっ💦 今回の活躍っぷりでは当然ですかね✨ ネームドになってもならず者さんたちの下衆さは変わらなかったみたいですが😂
「3日後の定期船」と時間を明確に区切っていることで、そこまでの間に何が起こるのか、事態は好転するのか、などと緊張感を持ってしまいますね😊 3日間ではこの低すぎる恋愛察知能力は改善されるとは思えませんが…😇