アパルトとヘイト

山縣将棋

アパルトとヘイト(脚本)

アパルトとヘイト

山縣将棋

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アパルトとヘイト
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〇木の上
青年「これはっ──!!」
???「大きくて立派な松の木ですね!」
青年「そ、そうなんですが・・・」
???「ロープなんか何に使うんです?」
青年「あ、いや、その──」
???「なるほど 太い木と縄はいつの時代も王道ですね」
???「お金にでも困ってるんですか?」
青年「えぇ、まぁ・・・」
???「高所から飛ぶ事も手段としてありますよ?」
青年「地面に鳩が寄って来るからやめとくよ」
???「寄って来るのはカラスかもしれませんよ?」
青年「アンタみたいに奇特なヤツも寄って来るんだろうな・・・もう少し長生きしてみるよ」
???「こんな状況も笑う事が出来れば人生はより楽しくなるでしょうね」
青年「そうだな──」
???「貴方なら出来ますよ」
青年「お、おう・・・」
???「僕の言った事は絶対です! 今度会う時まで頑張って生きてて下さいね!」
青年「ん?また会う日って?」
ヘイト「あっ!僕の名前はヘイトです」
青年「うわっ!ビックリした!」
ヘイト「言い忘れてました。 貴方の命の蝋燭はまだまだ長いです」
青年「そ、そうですか・・・」
ヘイト「はいっ!心配なさらずに」
青年「はぁ・・・──」
ヘイト「それでは、今度こそ失礼しますね」
青年「彼は何なんだ?」

〇中央図書館(看板無し)

〇綺麗な図書館
???「あっ、バスの時間が!」
カーラ「あら?」
カーラ「バスに間に合わなかったのかしら?」
???「バス?」
カーラ「貴方、慌ててたから、聖書を忘れてるわよ」
???「この本って心がムズムズしません?」
カーラ「ええ、心に響く事が書かれていますもの」
???「同じ感覚を持った方がいると嬉しいです!」
カーラ「聖書を読まれるなんて、 貴方は相当に信仰深いと思うわ」
ヘイト「逆ですよ。僕は様々な人の信仰を回収していますので」
カーラ「貴方面白い方ねお名前は?」
ヘイト「ヘイトといいます」
ヘイト「随分前の話ですけど、キリストが磔にされた丘に僕は居たんですよ」
ヘイト「あと、世界大戦の時とかも」
カーラ「私より若いのに? それとも、何かのジョークだったかしら?」
ヘイト「ジョークに聞こえました?」
カーラ「貴方と会話してるとこっちも楽しくなるわ」
ヘイト「なら、もう少しだけ雑談でもしませんか?」
カーラ「もちろんいいわよ。お話を聞かせて頂戴」
カーラ「でも、変なジョークを言って私を 困らせないで下さいね」
  そこは小さな町でした。
  最初の難関は小学校への入学で──

〇校長室
トッド 校長「すみませんが、我が校への入学は難しいです。普通の子ならいいのですが・・・」
アパルト マリン「は?表情が上手く伝わらないだけでしょ? うちの子は普通よ!どうにかしなさいよ!」
トッド 校長「・・・。それと旦那様がおられないというのは収入の面で非常に不安です」
アパルト マリン「馬鹿にしないで!お金なら沢山あるわよ!」
アパルト ヘイト「僕の事が嫌いなの?」
トッド 校長「そんな事ないさ、えっと、名前は・・・」
アパルト ヘイト「ヘイト、アパルトヘイト!」
トッド 校長「えっ!?アパルト?」
アパルト マリン「息子の名前に何か問題でも?」
トッド 校長「あ、いや、ある人物を思い出しまして・・・」
アパルト ヘイト「何の事?」
アパルト マリン「もしかして、うちの旦那の・・・」
  この時はまだ何でもない名だったんだけど、時代が進むにつれ、あまり良くない名前になったんだ
アパルト マリン「校長、どうしたら入学出来ます?」
トッド 校長「一つ提案があります──」

〇島の家
エレン「あっ!ヘイト!何してんの?」
アパルト ヘイト「ママに家から追い出されちゃって、夕方まで帰って来るなって」
エレン「なんで?悪い事でもしたの?」
アパルト ヘイト「違うよ」
エレン「よく分からないね・・・」
ドレン「あら、どうしたのこんな雨の日に?」
アパルト ヘイト「ママに家から追い出されたんだ。 僕が学校に入学する為なんだって!」
ドレン「・・・──」
エレン「おばさんヘイトが追い出された理由分かる?」
ドレン「分からないわ。風邪ひくから、おばさんの家にいらっしゃい。美味しいパンケーキをご馳走するわよ!」
エレン「本当に?行く〜!」
ドレン「さぁ、こっちよ。ついて来て」

〇ケーキ屋
ドレン「はい、どうぞ」
エレン「いい匂い!いただきます!」
エレン「めちゃくちゃうまい〜」
アパルト ヘイト「うん。そうだね」
ドレン「あら、ヘイト君、浮かない顔ね。 ケーキお口に合わなかったかしら?」
アパルト ヘイト「エレン、僕いまどんな表情なの?」
エレン「あのね、おばさんヘイトは生まれつき・・・」
アパルト ヘイト「僕が話すよ──」

〇病院の診察室
太田 ガイカン「今月のお薬です、どうぞ」
アパルト マリン「先生、この子の症状は本当に良くなるんでしょうか?」
太田 ガイカン「心配いりません。このお薬を飲み続ければ 必ず、治ります」
アパルト マリン「このまま、無表情だったらと思うと・・・」
太田 ガイカン「大丈夫です。大人になるまでにはきっと 表情が豊かになっていますよ!」

〇ケーキ屋
ドレン「そうだったの、ごめんね知らなくて」
アパルト ヘイト「気にしないでください」
  生まれつき喜怒哀楽を表現する事が
  出来なかったんだ
エレン「あっ、雨止んだ!」
エレン「ヘイト、もう帰らなくちゃ!」
ドレン「もっとゆっくりしていけばいいのに」
アパルト ヘイト「遅くなるとママに叱られちゃうから」
ドレン「そう。また気軽に顔をみせに来てね」
アパルト ヘイト「うん」
エレン「ありがとう、おばさん! パンケーキごちそうさまでした!」
ドレン「困った事があったら、何でもおばさんに、 言いなさいね!」

〇島の家
エレン「さぁ、ヘイト途中まで一緒に帰ろう!」
アパルト ヘイト「ねぇ、エレン聞いてもいい?」
エレン「なに?」
アパルト ヘイト「エレンの将来の夢ってどんなの?」
エレン「歌手とダンサー!キラキラのライトの中で、 大きな拍手と声援が会場に響くんだ!」
エレン「ヘイトは?」
アパルト ヘイト「う〜ん、表情豊かになって、普通に暮らして行く事かな」
エレン「ハハッ、ヘイトらしい!」
アパルト ヘイト「もう一つ聞いてもいい? エレンは今日、雨の中で何してたの?」
エレン「それは・・・」
エレン「秘密!」
エレン「じゃあ、またね!ヘイト!」
  雨が降っていたのに、エレンが家にいなかった理由はずっと後に分かったんだ。

〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「ただいま!」
アパルト ヘイト「あっ、校長先生!」
トッド 校長「や、やあ、ヘイト君!」
アパルト マリン「ヘイト、学校に通えるわよ!ヘイトが安心して勉強出来るように校長先生が特別なクラスを作ったらしいわ!」
アパルト ヘイト「本当?」
トッド 校長「あ、ああ、君は来月から我が校の生徒だ」
アパルト マリン「ほらコレ、校長先生がヘイトにだって!」
アパルト ヘイト「バックと教科書だ」
トッド 校長「そ、それでは、私はこれで!」
  こうして無事、学校に入学が出来たんだ
アパルト ヘイト「ねぇママ?このお薬は何?」
アパルト マリン「中々手に入らない不思議なお薬よ・・・」
アパルト ヘイト「なんで校長先生がいたの?」
アパルト マリン「大人の事情ってヤツよ・・・」

〇可愛らしい部屋
アパルト ヘイト「んっ?」
アパルト ヘイト「誰?鍵あいてるよ」
アパルト ヘイト「エレン?」
エレン「・・・」
アパルト ヘイト「どうしたの?こんな夜に?」
エレン「・・・たくない」
アパルト ヘイト「えっ?」
エレン「家に居たくない」
エレン「パパ、大道芸人なんだけど全然笑わせてくれないんだ、そればかりか嫌な事しかしない」
アパルト ヘイト「大道芸人?どんな格好してるの?」
エレン「・・・ピエロだよ」
  暗くてよく見えてなかったんだけど、エレン
  の顔は腫れてるような気がしたんだ
アパルト ヘイト「一緒に寝る?」
エレン「うん!」
エレン「けど、まだ眠くないから外で一緒に 本を読まない?星空が綺麗なんだ」
アパルト ヘイト「どんなお話?」
エレン「えっと、主人公にそっくりな悪魔が登場して、趣味で死ぬ間際の人と会話を楽しむお話」
エレン「嫌?」
アパルト ヘイト「いいよ、その本を読もうよ」
アパルト ヘイト「ママに見つからないようにしないと──」

〇月夜
  星が掴めそうなくらいに近い夜空の下で
  眠くなるまで本を読んだんだ・・・
「すごく輝いてるね」
「うん・・・」
「ねぇ?ヘイトの嫌いな物って何?」
「・・・・・・──」
「ヘイト?」
「う〜ん僕は、動物のジャガーかな 何か鋭い目つきにゾクっとさせられるんだ」
「ヘイトの声、何か変」
「薄着で外に出たから風邪引いちゃったのかも」
「ごめんね」
「気にしなくていいよ」
「エレンは?何が嫌いなの?」
「・・・・・・」
「エレン?」
「──・・・zzz」
「・・・おやすみエレン──」

〇おしゃれな居間
アパルト ヘイト「おはよう。ママ」
アパルト マリン「おはようヘイト! 朝食済ませたら、お薬貰いに行くわよ」
アパルト ヘイト「また?」
アパルト マリン「不満?」
アパルト ヘイト「分かったよママ」
アパルト マリン「分かればよろしい!」

〇車内
アパルト マリン「さて、向かいましょうか」

〇車内
アパルト ヘイト「ねぇ、ママ?」
アパルト マリン「どうしたの?」
アパルト ヘイト「パパってどんな人だったの?」
アパルト マリン「どうしたのよ突然?」
アパルト ヘイト「ただ何となく聞きたいだけだよ。ダメ?」
アパルト マリン「いいわよ。話してあげる!パパの名前はロウって言ってね、恋愛においては、いつも度胸のない人だったわ。いくじなしとも言うわね」
アパルト ヘイト「度胸?いくじなし?」
アパルト マリン「考えすぎて、困難に打ち勝つ事が苦手な人の事を言うのよ」
アパルト マリン「パパの場合は、好きな子がいても、白黒をつけるのが遅くてタイミングを逃していたわね」
アパルト ヘイト「そのパパの好きな人って、ママの事なの?」
アパルト マリン「フフッ、どうかしらね?」
アパルト ヘイト「いま、何処にいるの?」
アパルト マリン「ニューヨークの34丁目にある墓地で気持ちよく眠てるはずよ」
アパルト ヘイト「なんで、亡くなったの?」
アパルト マリン「──とある仕事の帰りにね・・・」
アパルト ヘイト「帰りに?」
アパルト マリン「えっと・・・帰りに──」
アパルト マリン「森から熊が出現してね・・・」
アパルト ヘイト「ふ〜ん、それで?」
アパルト マリン「えっと、その熊を追いかけて来た猟師がパパを熊と間違えて散弾銃で撃ってしまったのよ」
アパルト ヘイト「・・・パパって大きい熊みたいな人だったの?」
アパルト マリン「──違うわよ」
アパルト ヘイト「ふ〜ん、34丁目に眠るパパ(ロウ)か・・・」
アパルト マリン「──さぁ着いたわよ、ヘイト」

〇総合病院

〇病院の診察室
太田 ガイカン「調子はどうだい?アパルト君」
アパルト ヘイト「何とも無いよ」
太田 ガイカン「何とも無いか・・・」
アパルト マリン「先生、うちの子は日本の小説や本沢山読んで感受性を養っているんですよ」
太田 ガイカン「それは良い事ですね。アパルト君は最近どんな人の本をよんだの?」
アパルト ヘイト「ねぇ?先生」
太田 ガイカン「ん?」
アパルト ヘイト「先生の名前って、変わってるね。何で?」
太田 ガイカン「あ、ああ!先生はね、ハーフなんだよ」
アパルト ヘイト「ハーフ?」
太田 ガイカン「そう!父は日本人で、母がドイツ人なんだ」
アパルト ヘイト「ふーん。お父さんとお母さんの仲はいいの?」
太田 ガイカン「う〜ん、よく無いかな。父親は母を捨てて日本に戻ってしまったから」
アパルト ヘイト「何で?」
アパルト マリン「こらっ!詮索しすぎるのはダメよ!」
太田 ガイカン「父は、日本ではお偉いさんらしくてね、忙しいらしい。そんな薄情な父の帰りを母はずっと待っているみたいだけどね」
アパルト ヘイト「先生、最近読んだ小説だけど、今の話しと似たような内容だったよ」
太田 ガイカン「そ、そう・・・ お薬いつも通り出しておくからね」
アパルト マリン「失礼しました先生・・・」

〇美しい草原
  その日、突然に奇跡が2つ起こったんだ
アパルト マリン「そろそろね・・・」
アパルト ヘイト「僕、みんなに嫌われないかな?」
アパルト マリン「大丈夫、心配いらないわ」
アパルト マリン「ほら、お迎えのバスか来たわよ」
アパルト マリン「いってらっしゃい、ヘイト」
アパルト ヘイト「うん。僕、がんばるよ」

〇バスの中
ニーナ「おはよう!新入生よね?」
アパルト ヘイト「はじめまして、ヘイトです」
ニーナ「運転手のニーナよ、男の子は青、女の子は赤いシートに座るのよ」
アパルト ヘイト「・・・ねぇ?お仕事楽しい?」
ニーナ「ええ、楽しいわよ。私はね、貴方達の未来を繋ぐ架け橋みたいな存在だと思っているわ!」
ニーナ「さぁ、発車するから席に着いて」
アパルト ヘイト「分かりました、ニーナさん」
アパルト ヘイト「ねぇ、この席空いてる?」
クバ「空いてねぇよ、どっかいけ!」
アパルト ヘイト「空いてるじゃないか」
クバ「俺の荷物があるだろ!見えねぇのか!」
???「ヘイト!こっち!」
???「こっち空いてるよ!」
クバ「ふんっ!女の席にでも座ってろ!」
アパルト ヘイト「ありがとう。 えっと、君は何で僕の名前を知ってるの?」
???「えっ!ヘイト!まさか忘れたの!」
アパルト ヘイト「ご、ごめん、思いだせない」
???「エレンだよ!」
アパルト ヘイト「エレン・・・?」
エレン「そう!一緒に本読んだの忘れた?」
アパルト ヘイト「君!女の子だったの!」
エレン「あっ!ヘイト!」
アパルト ヘイト「どうしたの?」
エレン「表情が驚いてた!」
アパルト ヘイト「本当!?」
エレン「うん!」
  生まれて初めて見せた表情は「驚き」だったんだ。これが一つ目の奇跡。

〇川沿いの原っぱ
エレン「以外と楽しかったわね、学校」
アパルト ヘイト「・・・僕とエレン同じクラスじゃなかったね」
エレン「えっと、ヘイト、それは・・・」
クバ「おっ!表情足らずのアパルトじゃねぇか!」
エレン「そんな事を言わないで!」
アパルト ヘイト「どういう事?」
クバ「特別なクラスって事だ!」
エレン「気にしないでね、ヘイト」
アパルト ヘイト「君より凄いって事?」
クバ「違う!逆だバカ!」
アパルト ヘイト「あわわっ!」
エレン「ヘイト!危ない!」

〇水中
アパルト ヘイト「あれ?僕、水中にいるのかな?」
アパルト ヘイト「なんか、静かで落ち着くな・・・」

〇川沿いの原っぱ
エレン「ヘイト!ヘイト!」
エレン「アンタ!何とかしなさいよ!」
クバ「お、俺、泳げない」
クバ「おい、あれ、見てみろ!」
エレン「凄いスピードで泳いでる!」
クバ「アイツ、泳げるんだ・・・」
エレン「アンタよりヘイトの方が凄いじゃない!」
クバ「く、くそ!覚えてろ!」
エレン「逃げるの?かっこ悪いわよ!」
  この日もう一つの奇跡は特技を見つける事が出来た事。
エレン「こっちよヘイト! そのまま、真っ直ぐ泳いで!」

〇綺麗な図書館
ヘイト「そんなこんなで、中学生になって・・・」
スティーブン「・・・やぁ」
ヘイト「あれっ?」
スティーブン「先程の女性は帰ったよ。何かを悟ったような青ざめた表情だったね。 彼女の代わりに僕が話しを聞こうか?」
ヘイト「お願いします! 僕の名前はヘイトです」
スティーブン「私の名前はスティーブン! いつか小説家の王様になるのが夢さ!」
ヘイト「キング?王様?」
スティーブン「はっ!いいペンネームが浮かんだぞ!」
スティーブン「さぁ、話しを続けて!」
ヘイト「はい。中学時代は悲しい事の連続で──」

次のエピソード:アパルトとヘイト2

コメント

  • まだ掴めていないのですが、
    何か凄く新しいことにチャレンジしてる気がします!!
    上手く言えませんが、ジョン・アービングの『ガープの世界』とか
    映画『フォレスト・ガンプ』を観た時の衝撃に近いです。
    ずらし続ける会話を、どうやって書けるのか解らないのですが、
    色々と秘密や寓話やメタファーがあって凄いですね🫢

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