声が野太い女2

栗スナ

新たなる悩み(脚本)

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〇郊外の道路
来田査印(くるたさいん)「かれん。久しぶりだな。宝塚はどうだった」
うるわしかれん「いい感じだ。お金も稼げた。わりと楽しかった」
来田査印(くるたさいん)「そうか、よかったな」
うるわしかれん「ふう・・・」
来田査印(くるたさいん)「どうした、浮かない顔だな」
うるわしかれん「それがさ。問題があって・・・」
来田査印(くるたさいん)「問題?ツキノワグマは追い出したんだろ?仲間を呼んで集団で来るようになったのか」
うるわしかれん「そうじゃないっての!!」
うるわしかれん「デビューだよ 宝塚であたしの名前を気に入ったコが改名すると言い出してさ、あたしと同じ名前でデビューしたんだ・・・」
来田査印(くるたさいん)「なぬ」
うるわしかれん「やばいよ。今日からまた復学しようと思っていた矢先に・・・あのコが有名にでもなったら・・・ああ」
来田査印(くるたさいん)「なるほど。うるわしかれんという名前でこれから活動していく女の子がスターになり、マスコミにも取り上げられる日には」
来田査印(くるたさいん)「お前の名前のイメージの印象がさらにパワーアップしてしまう。大衆はあの宝塚の華やかなコと同じ名前なんだからきっと」
来田査印(くるたさいん)「声や性格も華やかな人間なんだろうと想像する。それが困っている理由ということか」
うるわしかれん「そうなのよ。さすが査印。よくわかってくれるね」
来田査印(くるたさいん)「声が高いコなのか」
うるわしかれん「もうばりとん高いわ」
来田査印(くるたさいん)「ふうむ」
うるわしかれん「はあ。何か目立つことして世間に認知されたいとか言ってたし・・・」
来田査印(くるたさいん)「一大事だな」
うるわしかれん「あー、明日も学校行きたくない」

〇教室
先生「おはよう、みんな。 さあ授業を始める前に・・・」
先生「宝塚で注目の新人が事件を起こしたのを知っているか」
うるわしかれん(え)
来田査印(くるたさいん)(なぬ!?)
先生「さっそくテレビを視聴してみようと思うんだ」
うるわしかれん「先生、マジですかー(いつもの裏声)」
先生「かれん、マジだ」
うるわしかれん(えええ 何でそうなるのよ)
先生「実に心配だ! 先生、実は宝塚ファンでな! さあみんなで視よう!」
先生「あーソワソワするなー」
来田査印(くるたさいん)(こんなことになるとは・・・)

〇高層ビル
  テレビ
テレビ局の記者A「あ、うるわしさんのお父さん!! 娘さんが海から利根川をさかのぼって水源までたどりつこうと泳いでいますが!!」
テレビ局の記者B「各県でクロールが目撃されています。急にこんなことをしているのはどうしてなのでしょうか!!」
お父さま「あ、いや。娘のことは知らん・・・」
テレビ局の記者A「知らない?無責任じゃないですか!」
テレビ局の記者B「親なら知って当然と思いますが?」
お父さま「日本は放置国家なんだよ。知らんに決まってる」
テレビ局の記者A「法治でしょ!!」
テレビ局の記者B「そうですよ。詭弁はやめてください。お父さん」
お父さま「それよりいい機会だ」
お父さま「わしの研究成果を見てくれないか。ワープする機械を開発したんだ」
テレビ局の記者A「え」
テレビ局の記者B「は」
お父さま「これなんだ。世間に公表したい」
テレビ局の記者A「そんなことより娘さんのことを聞きたいのですが」
お父さま「生き物なら何でも移動可能。例えば・・・ジョン!」
テレビ局の記者A「クマ?」
お父さま「うん、娘の合宿所に現れて困っていたので送ってもらったんだ」
お父さま「このアンテナを向けてボタンを押すと・・・」
テレビ局の記者A「あ、消えた!!」
お父さま「どうじゃ、すごいだろ」
テレビ局の記者A「すごいです! けど・・・どこ行ったんです?」
お父さま「ん? 粗暴だからな、礼儀や教養が身に着くところに送った。具体的な場所は設定しなかった」
テレビ局の記者B「じゃあ、わからないってこと?」
お父さま「まあそうなる」

〇教室
先生「というわけか。なるほどな」
学生A「先生!!俺の隣りにクマが!」
先生「やばくね!? みんな逃げろ!!」
ツキノワグマ「がお?」
ツキノワグマ「ぐおーーーーーーーん!!」
うるわしかれん「あーーーーーーー!!」
ツキノワグマ「がーーーーーーーーーー!!」
うるわしかれん「お前は宝塚の合宿所のときのーーーーーーー!!」
来田査印(くるたさいん)「ま、まずい!!かれん 声が、声が地声になってるぞ」
うるわしかれん「こらクマーーー!! ここで暴れるなよーーー!!」
来田査印(くるたさいん)「あ、出てった」
うるわしかれん「危なかった。みんな! 無事!?」
学生B「すごい。声だけで追い出しちゃった」
学生A「かれんさん、こんな声出せるんだ」
学生B「すげー」
うるわしかれん「え」
学生B「命の恩人だよ~ かれんは~」
学生A「確かに」
うるわしかれん「え、そんな・・・あたしなんて声が太くてかわいくないし・・・あなたみたいにスケスケの服着て登校する勇気もない」
うるわしかれん「普通のうれしはずかし女子高生よ!」
学生B「何を言ってるの、あなたの声のおかげなのよ」
学生A「かれんさんありがとう」
先生「全くだ、あとでかれんが表彰状をもらえるよう校長に頼んでおくぞ」
うるわしかれん「やだ・・・も~う」
  こうしてかれんは
  一躍学校のヒロインになった
  
  声は勇ましい中性ボイスということになり、その後自分の地声を隠さなくなった

〇郊外の道路
うるわしかれん「・・・」
来田査印(くるたさいん)「あれから一週間か・・・」
うるわしかれん「そうだな。最近は人づきあいで疲れる・・・」
来田査印(くるたさいん)「人生やってみないとわからんもんだな」
うるわしかれん「運がよかった・・・」
来田査印(くるたさいん)「なあかれん」
うるわしかれん「ん?」
来田査印(くるたさいん)「俺も少しマスクとってみようかな・・・」
うるわしかれん「・・・大丈夫なの?」
来田査印(くるたさいん)「コロナ?大丈夫。あれは信じてない」
うるわしかれん「いや、そうじゃなくて、素顔を見せずに生きて行くんじゃなかったのか?」
来田査印(くるたさいん)「うん。まあな・・・けどそんなこといつまでもしててもしょうがないし」
うるわしかれん「そうか・・・」
来田査印(くるたさいん)「けど・・・やっぱ恥ずかしいな」
うるわしかれん「・・・」
  こうしてかれんの高校生活は
  一転して華やかなものになった
  
  最近はかれんの取り巻きも華やかになり、俺と帰る時間も減った
  でもそれでいいのだ
  
  人にはペースがある
  俺はまだ自分の道を行こうと思う

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