第10話 『安全運転』(脚本)
〇渋滞した高速道路
車の行き交う高速道路。
白い軽自動車が、後ろからベンツのような黒い車に煽られながら走っていた。
黒い車の男「おいおい、チンタラ走ってんじゃねえよ! コラァ!」
黒い車を運転する男が苛々しながら叫ぶ。
白い車の男「う、うわぁ。 後ろの車、めっちゃ煽ってくる・・・」
白い軽自動車を運転する男は、その様子をルームミラーで確認しながら焦っていた。
黒い車の男「オラオラオラ!」
黒い車の男は、大声で叫びながら何度もクラクションを鳴らした。
白い車の男「ちょ、怖いんだけどー・・・!」
〇空
クルル「あの白い車の人、すごく困ってるね」
クララ「煽り運転ってやつよ」
クルル「あおりうんてん?」
クララ「他の車に対して、不必要に近づいたり、クラクションを鳴らしたりして、危険な運転をすることよ」
クルル「え〜、なんでそんなことするの?」
クララ「性格の問題だね。 よし、私の魔法で白い車を助けてみせる!」
クルル「そうだね! で、どんな魔法を使うの〜!?」
クララ「そんなの簡単よ! 見てなさい!」
クララ「クララクララクラクララクラ〜! 黒い車の人よ、優しくなれ〜!!」
クララが呪文を唱えると、黒い車の男が不思議な光に包まれた。
黒い車の男は怒りの表情から一転し、優しい笑みを浮かべた。
クララ「ほら! 私の魔法のおかげで表情が優しくなった!」
クララ「これで煽り運転なんかしないでしょ!」
クルル「なるほど〜! さっすがお姉ちゃん! 今回の人助け、大成功だね!」
〇渋滞した高速道路
黒い車の男「・・・ちょっとぉ。 ゆっくり走らないで、もっと速く走ってよ〜」
黒い車の男は優しい口調と表情のまま、白い車に煽り続ける。
白い車の男「なんで笑ってるんだ!? 怖いよー!」
〇空
クルル「いや、ただ表情と口調が優しくなっただけじゃん」
クララ「え〜、どうして〜!?」
クルル「魔法の加減が上手くいってないんじゃない?」
クララ「そんなはずは・・・」
クララ「じゃあ──黒い車の人よ、さらに優しくなれ〜!!」
〇渋滞した高速道路
黒い車の男「ハハハハハ! 逃げても無駄だよ〜!」
黒い車の男はとびっきりの笑顔を浮かべて白い車を追いかけた。
白い車の男「だからなんで笑ってるんだー! 怖い怖い怖い!!」
〇空
クルル「もはやホラーだね」
クララ「もぉ〜なんで!? 全然上手くいかない!」
クルル「よし! 私の出番だね!」
クララ「は!?」
クルル「ここは私に任せて!」
クララ「ちょっと待って! どんな魔法を使う気!?」
クルル「まあ、見てて!」
クルル「クルルクルルクルクルルクル〜! 黒い車と白い車、位置が逆になれ〜!!」
クルルが魔法を唱えると、黒い車と白い車が不思議な光に包まれた。
すると二つの車の位置が入れ替わり、黒い車が前方に、白い車が後方となった。
クララ「なるほど、その手があったか! 位置が逆転すれば、煽ることもない!」
クルル「そういうこと!」
クララ「うぅ・・・悔しいけど、いいアイデアだわ!」
クルル「やっぱお姉ちゃんは、私がいないとダメだね」
〇渋滞した高速道路
白い車の男「あれ!? いつの間にか、追い抜かされてる!」
黒い車の男「んん? あの白い車、どこに行った〜?」
黒い車の男は首をかしげたあと、ルームミラーで車の後方を見た。
黒い車の男「なんだ〜! 後ろにいたのかぁ!」
黒い車の男は、突然急ブレーキをかける。
白い車の男「う、うわぁ、危ないっ!」
白い車の男も慌てて急ブレーキをかけた。
白い車の男「わ・・・! お、降りてきた・・・!」
黒い車の男は車から降りると、笑顔のまま白い車に近寄ってきた。
黒い車の男「ちょっとちょっと、いつの間に後ろに行っちゃったんだよ〜!?」
白い車の男「うわー! 来るなー!!」
〇空
クルル「アチャ〜、そうなっちゃうか〜」
クララ「アチャ〜、じゃないでしょ! このままだと喧嘩になっちゃう!」
クルル「・・・あ、そっか! 私わかった!」
クララ「え!?」
クルル「きっと黒い車の人は、弱いものいじめをしたいだけなんだよ!」
クララ「何当たり前のこと言ってるのよ!」
クララ「そりゃあ自分より強い相手に、煽り運転とか喧嘩とか仕掛ける訳ないでしょ!」
クルル「でしょ、じゃあ白い車の人を強くすればいいだけじゃん!」
クララ「強くするったって、どうやって!?」
〇渋滞した高速道路
黒い車の男は、笑顔のまま白い車の窓をバンバン叩いた。
黒い車の男「ほらほらぁ! 窓開けて〜!」
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